jin-jour(ジンジュール) |人材育成、リーダーシップ、モチベーション、メンタルヘルス対策など 人事の視点から、働く人と会社の関係を元気にする情報を発信

ログイン
MENU

メニュー

×

新任担当者のための労働法セミナー [2014.12.19]

第32回 女性①


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 女性労働者から、「妊娠した」という報告がありました。出産に際していつからいつまで休ませればいいのかを教えてください。


A1 産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)から産後8週間までの休業が定められています(労働基準法65条1項、2項)


 労働基準法では、産前6週間以内(多胎妊娠の場合は14週間)および産後8週間を経過しない女性を働かせてはならないと定められています。
 産前については、本人の申し出がない場合は働かせても構いませんが、産後は本人が働きたいと言っても働かせることはできません。ただし、産後6週間を経過した女性からの申し出があったとき、医師が支障ないと認めた業務に就かせることは構いません。
 「産前6週間」は出産予定日から計算し、「産後8週間」は現実の出産日の翌日から計算します[図表1]。また、出産当日は、産前に含めます。そのため、出産が予定より遅くなれば休業期間は長くなり、早くなれば休業期間は短くなります。
 なお、産後休業期間が終了した後は、育児・介護休業法により子が1歳まで(保育所に空きがないなど一定の場合は1歳6カ月に達するまで)の育児休業を取得することができます。

【解説】

[図表1]産前産後休業の考え方

■さまざまな法律に則(のっと)って対応する

 妊娠・出産とその後の対応については、労働基準法だけでなく、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法でさまざまな決まりがあります。
 本稿では、これらの法律を整理しましたので、正しく理解し、法違反のないように対処してください。

■出産とは妊娠4カ月以上の分娩(ぶんべん)をいう

 労基法など法律上の「出産」とは、妊娠4カ月以上の分娩をいいます。1カ月は28日として計算するので、妊娠85日(28×3+1=85)以上の分娩が「出産」になりますが、胎児の状態などから医師が総合的に判断するものとされています。
 また、出産には死産、早産、流産、中絶も含めます。そのため、妊娠4カ月以上で流産した場合は、産前休業はありませんが、産後休業は取得させなければなりません。

■妊娠中は、危険有害な業務をさせてはいけない(労働基準法64条の3)

 妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性を「妊産婦」といいます。
 会社は、妊産婦に[図表2]に掲げた以上の重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所での業務など[図表3]に掲げる危険有害業務をさせることはできません。
 ただし、産後1年以内の労働者については、申し出があった場合に限り、これらの業務に就かせることが禁止されています(重量物取り扱い業務は申し出がなくても禁止)。
 また、妊産婦に限らず、女性に一定以上の重量物を取り扱う業務に就かせることは禁止されています。

[図表2]重量物を扱う業務

年   齢断続作業の場合継続作業の場合
 満16歳未満
 満16歳以上満18歳未満
 満18歳以上
   12㎏
25
30
    8㎏
15
20

[図表3]妊産婦等の危険有害業務の就業制限

区分 妊娠中 産後1年以内 それ以外の女性
(1)重量物の取り扱いの業務 × × ×
  ※重量制限あり(詳細は[図表2]参照)
(2)ボイラー(小型ボイラー除く) の取り扱いの業務 × ×
(申し出による)
(3)ボイラーの溶接の業務 × ×
(申し出による)
(4)つり上げ荷重が5トン以上のクレーン、 デリック、 制限荷重が5トン以上の揚貨装置の運転の業務 × ×
(申し出による)
(5)運転中の原動機等の掃除、 給油、 検査、 修理、 ベルトの掛け換えの業務 × ×
(申し出による)
(6)クレーン、 デリック、 揚貨装置の玉掛けの業務(補助作業を除く) × ×
(申し出による)
(7)動力により駆動される土木建築用機械、 船舶荷扱用機械運転の業務 × ×
(申し出による)
(8)直径25㎝以上の丸のこ盤、 のこ車の直径75㎝以上の帯のこ盤に木材を送給する業務 × ×
(申し出による)
(9)操車場構内における軌道車両の入れ替え、 連結、 解放の業務 × ×
(申し出による)
(10)蒸気または圧縮空気により駆動されるプレス機械または鋳造機械を用いて行う金属加工の業務 × ×
(申し出による)
(11)動力プレス機械、 シャー等を用いて行う厚さ8㎜以上の鋼板加工の業務 × ×
(申し出による)
(12)岩石、 鉱物の破砕機、 粉砕機に材料を供給する業務 × ×
(申し出による)
(13)土砂崩壊のおそれのある場所、 深さ5m以上の地穴における業務 ×
(14)高さ5m以上の墜落のおそれのある場所における業務 ×
(15)足場の組み立て、 解体、 変更の業務(地上、 床上における補助作業を除く) × ×
(申し出による)
(16)胸高直径が35㎝以上の立木の伐採の業務 × ×
(申し出による)
(17)機械集材装置、 運材索道等を用いて行う木材の搬出の業務 × ×
(申し出による)
(18)鉛、 水銀、 クロム、 ひ素、 黄りん、 フッ素、 塩素、 シアン化水素、 アニリンその他これらに準ずる有毒物のガス、 蒸気、 粉じんを発散する場所における業務 × × ×
(19)多量の高熱物体を取り扱う業務 × ×
(申し出による)
(20)著しく暑熱な場所における業務多量の低温物体を取り扱う業務 × ×
(申し出による)
(21)多量の低温物体を取り扱う業務体を取り扱う業務 × ×
(申し出による)
(22)著しく寒冷な場所における業務 × ×
(申し出による)
(23)異常気圧下における業務 × ×
(申し出による)
(24)さく岩機、 鋲打機等身体に著しい振動を与える機械器具を用いて行う業務 × ×

■申し出があれば軽易な業務に転換させなければならない(労働基準法65条3項)

 妊娠中の女性から「他の軽易な業務に変えてほしい」という申し出があれば、軽易な業務に転換させなければなりません。これは、原則として女性が請求した業務に転換させる趣旨ですが、軽易な業務がない場合に、新たに軽易な業務を作り出して与える義務まではありません。

■申し出があれば残業・休日出勤をさせてはいけない(労働基準法66条)

 妊産婦から申し出があれば、時間外労働、休日労働、深夜業をさせることはできません。変形労働時間制によって働かせている場合でも、1日8時間、1週40時間を超えて働かせることはできません。災害その他避けることのできない事由により臨時の必要がある場合でも同様です。
 ただし、変形労働時間制のうち、フレックスタイム制だけは認められています。体調に合わせて自分で始業・終業の時刻を決定できる制度は、むしろ妊産婦にとって歓迎すべきものでしょう。
 上記の措置は、本人から申し出があったことだけ対応すれば足ります。例えば、「深夜労働をしたくない」という申し出であれば深夜労働をさせることはできませんが、時間外労働や休日労働をさせることは問題ありません。
 妊産婦に対する労働基準法の措置をまとめましたので、参考にしてください[図表4]

[図表4]労働基準法で定められた妊産婦に対する母性保護措置

区分 妊娠中 産後1年以内
申し出の有無にかかわらず禁止   ○産後8週間は働かせてはいけない(6週間を超えた場合で、本人が希望し医師が支障ないと認めた業務を除く)(65条)
○重量物や有害ガスが発生する業務などの就業制限(64条の3)→[図表2~3]参照
労働者の申し出があれば対応が必要

○産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)は働かせてはいけない(65条)

○他の軽易な業務に変更(65条の3)

○1日2回、それぞれ30分以上の育児時間を与える(67条)

○時間外労働、 休日労働、 深夜業の禁止、 変形労働時間制(フレックスタイム制を除く)下での法定労働時間を超える労働の禁止(66条)


《復習&応用問題》

Q2 労働者が妊娠し、深夜業について相談を受けました。この労働者は、いわゆる「管理監督者(労働基準法41条2号)」として労働時間や休日の規制の対象外となる者です。妊娠した場合にはどのように対応すべきか、その他の制度も併せて教えてください。
※「管理監督者」については、第10回「労働時間に関する適用除外」参照。


A2 労働者から請求があれば深夜業は制限されます。その他の制度は適用されるものとされないものがあります

 簡単にいうと、「管理監督者(労働基準法41条2号)」であれば、労働時間に関する法律は妊産婦でも適用されません。深夜業や休暇、休業、母性保護に関する法律は適用され、一般の労働者と同様に保護されます。
 具体的には、次のとおりです[図表5]
 
[図表5]管理職に関する主な法律の適用(妊産婦であっても管理職であれば除外されるものと、一般の労働者と同様に保護されるもの)

区  分項  目法  律
妊産婦であっても管理職であれば除外されるもの 労働時間 労働基準法32条
 休憩 労働基準法34条
 休日 労働基準法35条
 時間外・休日労働(割増賃金含む) 労働基準法36条、37条
 妊産婦の労働時間・休日 労働基準法66条
 育児時間 労働基準法67条
 育児短時間勤務措置 育児・介護休業法23条
 所定外労働の免除 育児・介護休業法16条の8
 時間外労働の上限規制 育児・介護休業法17条
一般の労働者と同様に保護されるものの例 危険有害業務の就業制限 労働基準法64条の3
 軽易業務への転換 労働基準法65条3項
 年次有給休暇 労働基準法39条
 深夜業の制限 育児・介護休業法19条
 産前産後休業 労働基準法65条1項、2項
 育児休業 育児・介護休業法5条1項
 健康管理措置 男女雇用機会均等法12条、13条

[注]主なもののみを示した。

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2013年11月にご紹介したもの
 です。


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

●人事・総務担当者なら知っておきたい、よくあるケース・実務のポイントを123問のQ&A形式で解説!

●労働時間、解雇、賃金など、問題となりがちな項目について、労働基準法の定め・取り扱い等を図解入りで解説

 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

書籍の詳細、内容見本の閲覧、ご注文はこちらをクリックしてください

下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


労務管理、人事評価、ハラスメント対応など充実のコース!

労務行政eラーニング 詳しくはこちら

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

ログイン

×

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品