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Point of view [2014.04.25]

第17回 河下太志


産業医という人材は、どうすれば活用できるのか?
~これが産業医から人事に伝えたいこと~


河下 太志  かわした ふとし
リクルートグループ 統括産業医
2001年 産業医科大学卒業。産業衛生学会専門医、労働衛生コンサルタント。 2005~2007年 ㈱アドバンテスト 健康管理室長。2007年から現在まで、リクルートグループの統括産業医。2006年からは経済産業省の健康管理医を兼任。
著書に「メンタルヘルス対策の実務と法律知識」(日本実業出版社)、「産業医ストラテジー」(バイオコミュニケーションズ)など

 

産業医とは?

 人事ご担当の皆さんは、産業医という職業をどうとらえられているだろうか。産業医自身にも、説明するのはなかなか難しいものである。
 私は、いくつかの会社で産業医を務めているが、いつも、企業の方に以下のように説明している。
――「産業医は、企業のチームドクターです。プロスポーツチームには、チームドクターがいますね。チームドクターの仕事は、選手の怪我そのものを治すことではありません。実は、怪我をした選手に対しては、チームドクターとは別の主治医が手術をするのです。では、チームドクターは何をするのか。治療の後に 、チームドクターは、その選手が1軍に合流できるのか?とか試合でどの程度の役割や時間出場できるのか?とか……つまり、“チーム”に対して医療的アドバイスをして、監督が選手の起用を決める手助けをするのです。当然、チームドクターは、アドバイスをするに当たり、スポーツの動きを理解していないといけないし、チーム事情を理解していないといけません。これをそのまま企業に当てはめたのが、産業医なのです」――

産業医の特殊性

 このように、産業医は企業という“チーム”に、医療的なアドバイスをするのがその役割である。簡潔にまとめると、以下のようになろう。

  • 産業医は、「病気」だけではなく、「健康」も対象にしています
  • 産業医は、「個人」だけではなく、「組織」も対象にしています
  • 産業医は、「ケース対応」だけではなく、「組織のシステム化・ルール化」を目標にしています
  • 産業医は、「治療」ではなく、「安定就業や生産性」を視野に入れています
  • 産業医は、「医療的視点」だけではなく、「労務視点や現場マネジメント視点」から対応を考えます


 つまり、産業医の活動の主戦場は、職場であり、働くということであるので、基本的に診察や治療といった臨床医の活動の場とは異なる。産業医が「チーム人材」としてより活躍できるよう、人事担当者の方には、産業医のこういった背景事情を知っておいていただきたい。

産業医へのオーダー方法
――企業を知り、方針を固める

 産業医としての立場で言うと、はじめに企業の側から提供していただけるとありがたいことが、二つある。それは、①組織全体のリスクを見積もるのに必要な情報②自社の安全衛生の基本方針だ。

“産業医に、組織全体のリスクの見積もりと、ハイリスクケースを想定してもらおう”
 産業医の仕事の第一歩は、その会社を知ることに始まる。人事担当者が、産業医にどんなことから伝えていいか分からない場合、「この会社は、どんな仕事をしていて、何人くらいの従業員がいて、男女比がどれくらいで……」という情報から始めよう。そして、今困っていること(ケース)も伝えてほしい。また、可能であれば産業医自身の目で確認してもらうよう依頼してもよいだろう。
 例えば、従業員が200人で、男性が圧倒的に多く、平均年齢は40代半ば。最近では、脳こうそくで倒れた人がいる――といった情報を伝えればよい。産業医は、こういった情報から、高血圧をもとにした脳心臓疾患への懸念や、過労死などの労務リスクなどを思い浮かべることだろう。逆を言えば、自社の状況をよく知る人事担当者からの情報提供がなければ、産業医も手探りでしか役割が果たせない。自社の情報を共有することで、産業医も“チームメイト”として活躍することが可能になるのだ。

”基本方針を確認しよう”
 自社の基本情報を共有した後は、産業医に、会社の安全衛生の基本方針案を確認してもらおう。方針なき活動は、中身が薄くなり、衰退する。ここで基本方針を確認しておくことは非常に重要である。なお、現在の活動を例に挙げていただくと、産業医にも分かりやすい。
 例えば、健康診断の事後措置を例にしよう。事後措置と言っても活動範囲は広く、「超ハイリスク者への徹底した受診勧奨」から、「生活指導・栄養指導」まである。つまり、健康・労務リスクに対するリスクヘッジから、予防的意味合いを強くした活動までさまざまということだ。すべての活動を実行するのは困難なので、幅広い活動の中で、基本方針に合致するものを産業医と人事担当者で検討しよう(方針がなくとも関係者間でブレストすると、特に安全衛生の方針のない会社でも、基本方針の骨組みが見えてくる)。
 仮に、ここで「リスクの最小化」が方針であれば、超ハイリスク者への対応を従来以上に徹底するということでいいだろう。しかし、「プロフェッショナルとしての健康意識を根付かせる」という方針であれば、(超ハイリスク者への対応は当然として)若年層に対してもビジネスのプロとしての生活指導・栄養指導し、意識を根付かせるということも活動の一部となるだろう。
 安全衛生活動は、単に良いことだからやっているわけではない。会社にとって意味のある活動だから行うのである。会社としての目的を定め、産業医に効率的に動いてもらえる土壌作りが肝心だ。

実際に、産業医に動いてもらう

 以上のようなプロセスを経ると、産業医は、チーム(企業)を理解し、最も適した医療的アドバイスをくれるようになるだろう。以下、実際に活動を進めていく際の留意点をまとめた。

“メインとなる活動を決め、その会社の安全衛生活動の絵を描こう”
 基本方針に沿った活動がいくつか想定されると考えられるが、次にすることは、それらの活動の優先順位を人事担当者と産業医とで相談することだ。優先順位を考える基準は、リスクが高いもの、法的な必要性の高いものなどが良いだろう。メンタルヘルス対策なのか、健康診断の事後措置なのか、海外進出対策なのか……限られた時間で、活動するためには優先順位を考え、かつ、活動全体の絵を常に意識しながら活動することが必要である。
 基本方針に沿った効果が出るか否か、コストや工数から実現可能性までを総合的に考え、最終的な優先順位を見極める。そこで、実行される活動の全体が見えると良いであろう。その活動の中での産業医の役割がさらに具体的に見えるようになるとなお、良い。

”情報の交通整理をする”
 安全衛生活動が活発化するためには、活動の対象となる事象を発見しなければならない。それは、健診結果から分かることもあるし、職場巡視中に発見することもある。しかし実際は、従業員からの情報によるところが大きい。
 従業員から、広く情報を収集するために、「かくかくしかじかのような情報を○○までお寄せください」という趣旨のメッセージを広報することと、情報のハブとなる部署や担当者を決定する必要がある。
 例えば、メンタル不調者を早期発見したいと考えた時には、「体調不良が原因の業務上の支障が生じている従業員」や「診断書が提出されたという事実」を「人事担当者」に管理職は遅滞なく情報共有するというルールにするなどである。

”システム化する”
 管理部門の活動は多くがシステム化されている。安全衛生活動も同様、システム化したほうが効率がよい。健診事後措置、復職、安全衛生教育、事故時の情報の流れなど、できる限りシンプルに、言語化し、誰もが分かる形でルール化するとよい。
 ここまで準備すると、産業医はそのシステムの中で、大きく会社の方針から外れることなく、役割を全うするだけである。

 産業医は、企業に来ている“お客様”ではない。人事担当者と産業医が“チーム”として機能してこそ、企業の健康対策は始まるのである。

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