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新任担当者のための労働法セミナー [2014.10.21]

第30回 公民権行使の保障(労働基準法7条)


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 労働者から「裁判所から証人としての呼び出しがあったので、会社を休ませてほしい」という申し出がありました。忙しい時期でもあり、拒否したいと考えていますが、可能でしょうか?


A1 申し出を拒否することはできません。ただし、公の職務を妨げない範囲で日時を変更することはできます

 

【解説】

■請求されれば与えなければならない

 労働基準法(7条)では、労働者が労働時間中に公民権を行使することや、公の職務をすることを保障しています。裁判所から証人としての呼び出しがあった場合も公の職務に当たるため、労働者からその時間を請求されれば、会社は拒否することはできません。
 このほか、[図表]のとおり、自分自身の選挙運動や地方議会議員などに就任することも公民権に含まれ、労働者から休暇を請求されれば拒否することはできません。
 ただし、公民権の行使や公の職務を妨げない範囲で、日時を変更することはできます。
 なお、正社員に限らず、パートタイマーや契約社員なども同様です。

[図表]公民としての権利と公の職務

 該当するもの該当しないもの










①法令に根拠のある公職の選挙権および被
 選挙権(自らの法定期間中の選挙運動を
 含む)

②憲法の定める最高裁判所裁判官の国民審査
③特別法の住民投票
④憲法改正の国民投票
⑤地方自治法による住民の直接請求
⑥選挙人名簿の登録の申し出 など
①訴権の行使(個人的な損害賠償の訴え
 など)

②他の立候補者のための選挙運動 など





①衆議院議員その他の議員、労働委員会の
 委員、陪審員、検察審査員、労働審判員、
 裁判員、法令に基づいて設置される審議
 会の委員等

②民事訴訟法上の証人・労働委員会の証人
③公職選挙法の選挙立会人 など
①予備自衛官が防衛招集または訓練招集に
 応ずること

②非常勤の消防団員 など
※単純な労務の提供を主たる目的とする職務は
 該当しない

 

■有給でも無給でも構わない

 公民権の行使の時間は、労働時間中でも請求されれば与えなければなりません。ただし、有給扱いとする必要はないので、無給扱いとしても構いません。
 なお、現在有給扱いとなっているのであれば、無給扱いに変更することは、会社が一方的にできるものではありません。

■裁判員制度も公の職務に当たる

 裁判員制度は、国民が裁判員として刑事裁判に参加し、被告人が有罪かどうかなどを裁判官と一緒に決める公の職務です。裁判員に選ばれた場合は、単に「仕事が忙しい」といった理由で辞退することはできないとされています。
 裁判員も公の職務に当たるため、労働者からその時間を請求されれば、会社は拒むことはできません。

■裁判員制度には不利益取り扱いの禁止の定めがある

 裁判員に選任されると、数日間にわたって仕事ができないこともあり、業務に支障を来すことも考えられます。しかし、裁判員については、裁判員法で次のように定められており、不利益な取り扱いはできません。「労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員もしくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」(裁判員法100条)


《復習&応用問題》

Q2 このたび、当社の従業員が地方議員に当選しました。仕事中も議員の仕事で休むことが多くなり、これまでどおりの仕事ができなくなっています。このままでは業務に支障があるので、解雇することも検討していますが、可能でしょうか?


A2 状況によっては、解雇することも可能です

 労働基準法では、「公民としての権利を行使し、または公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合に拒むこと」を禁止しています。そのため、労働者から必要な時間を請求されたときに、拒んだだけで法違反となります。
 しかし、公の職務に就いた結果として労働関係が維持できなくなったことを理由として解雇することまで禁止するものではありません。「地方議会議員への就任ということだけを理由として解雇することはできないが、その結果として業務に支障を来したことを理由とする解雇は正当」とした裁判例があり(森下製薬事件 大津地裁 昭55.10.17決定)、状況によっては解雇も可能と考えられています。
 ただし、裁判員については、本文でご説明したとおり、不利益取り扱いの禁止が裁判員法で定められていますので、解雇することはできません。

 
※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2013年9月にご紹介したものです。


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

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●労働時間、解雇、賃金など、問題となりがちな項目について、労働基準法の定め・取り扱い等を図解入りで解説

 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


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