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人事担当者のための法律読みこなし術 [2013.11.18]

第19回 「又は・若しくは」「及び・並びに」

 


吉田利宏  よしだとしひろ 元衆議院法制局参事


■法令用語が必要なわけ

 今号から趣を変えて法令用語のお話を致しましょう。

男「つ、付き合ってください」
女「け、けっこうです」

 こんな会話をきっかけに付き合い始め、結婚したカップルがいます。奥さまいわく「本当は断ったつもりだったのだけれど…なんだかかわいそうになってね」。横でニコニコする旦那さん。今では仲のよいカップルです。
 「結構です」の勘違いが生んだ幸せといえるのですが、これが法律の場合だと勘違いはたいがい不幸な結果しか招きません。法律において、言葉は厳密に使われなければなりません。いわば一種の決められた記号のように、誰にとっても同じ内容を伝えるものでなければならないのです。法律言葉ではなく、法律用語と表現されるのもそうした理由があります。そんな法律用語、少しずつ取り上げていきましょう。

■又は・若しくは

 最初に紹介するのは「又は・若しくは」です。
 「又は」も「若しくは」も選択肢を示す用語です。英語でいえば、どちらも「OR」に当たります。単純に選択肢を示す場合には、「A、B又はC」というようになります。
 次の労働基準法がその例です。

○労働基準法
(均等待遇)
第3条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

■もしも、弁護士から転身したすし屋の大将がいたら…

 昔、ドリフターズのTV番組で「もしもシリーズ」といわれるコントがありました。もしも、弁護士から転身したすし屋の大将がいたら、こんなふうにカウンター越しに呼び掛けるかもしれません。
大将:「エビ、イカ、又はトロ 何に致しやしょう!」

 ところが、寿司ネタに「玉子」が加わると大将の言い方は少し違ってくるはずです。
大将:「エビ、イカ若しくはトロ又は玉子 何に致しやしょう!」


 大将が玉子の前に「又は」を使ったのには理由があります。同じ寿司ネタでも魚とは同じグループにはできないと考えたからです。このように「又は」はいくつかグループがあるときに、一番大きなグループをつなぐときに使われます。ですから、私たちが「又は・若しくは」を含んだ条文を見たとき、まずしなければならないのは「又は」を見つけることです。「又は」の前後で大きなグループ分けがあるのですから。
 実際の条文で確かめてみましょう。「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」2条では、「又は」の前後で、大きく「解体作業など」と「解体作業などの準備作業」とにグループ分けができているといえるでしょう。

○建設労働者の雇用の改善等に関する法律
第2条 この法律において「建設業務」とは、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務をいう。
2~11 略

■「及び・並びに」

 次は「及び・並びに」です。どちらも英語でいえば「AND」を示す用語です。単純に、「AもBもCも」という場合には、「A、B及びC」と表現します。
 また、先ほどのすし屋の大将の登場です。自慢のちらし寿司をこんなふうにカウンター越しに薦めています。
大将:「エビ、イカ及びトロの入ったちらしなんていかがでしょう」


 ところが、このちらし寿司に玉子を入れたときには、また大将の言い方が変わります。
大将:「エビ、イカ及びトロ並びに玉子の入ったちらしなんていかがでしょう」


 「及び」と「並びに」が使われている条文を前にしてすることは、まず「及び」を探すことです。「及び」は一番小さなグループ分け(大きいグループ分けではありません)を示す用語として使います。
 このように、「又は」や「及び」をマークしながら読み進めていくと条文構造の理解が早まるというものです。

 

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2012年6月にご紹介したものです。

吉田利宏 よしだとしひろ
元衆議院法制局参事
1963年神戸市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、 衆議院法制局に入局。15年にわたり、法律案や修正案の作成に携わる。法律に関する書籍の執筆・監修、 講演活動を展開。
著書に『法律を読む技術・学ぶ技術』(ダイヤモンド社)、『政策立案者のための条例づくり入門』(学陽書房)、『国民投票法論点解説集』(日本評論社)、『ビジネスマンのための法令体質改善ブック』(第一法規)、『判例を学ぶ 新版 判例学習入門』(法学書院、井口 茂著、吉田利宏補訂)、『法令読解心得帖 法律・政省令の基礎知識とあるき方・しらべ方』(日本評論社、共著)、『つかむ つかえる 行政法』(法律文化社)など多数。近著に『実務家のための労働法令読みこなし術』(労務行政、2013年8月発刊)がある。


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