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新任担当者のための労働法セミナー [2014.09.22]

第29回 年次有給休暇(5)時間単位付与(労働基準法39条4項)、その他


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 年次有給休暇を時間単位で取得したいという申し出がありました。時間単位で取得されると、管理が煩雑になります。申し出を認めなければいけませんか?


A1 認めなくても構いません


 年次有給休暇の時間単位付与は、労使協定を締結した場合に導入できるものです。そのため、労働者、会社の双方が合意した場合でなければ導入することはできません。義務づけられているわけではありませんから、導入しないという選択も考えられます。

【解説】

■時間単位付与は労使協定が必要

 年次有給休暇は、本来、労働者の心身の疲労を回復させることや、ゆとりある生活のために付与することを目的としています。時間単位での取得は、年次有給休暇を取得しやすくするという主旨で平成22年に法改正され、導入できるようになりました。
 日数は、繰り越し分も含めて5日以内の、労使協定で定めた範囲内が限度です。
 労使協定は、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、ないときは過半数を代表する者と締結します。

この協定書は、労働基準監督署への届け出は不要です。

≪労使協定で定める内容≫
①対象労働者の範囲
 一部を対象外とすることもできる。「育児を行う労働者に限る」など取得目的による制限はできない。
 〔例〕工場のラインで働く労働者を対象外とする
②時間単位年次有給休暇の日数
 繰り越し分も含めて5日以内
③時間単位年次有給休暇1日の時間数
 1日分の年次有給休暇に対応する時間数を所定労働時間数を基に定める。1時間未満は1時間に切り上げて計算する。
 日によって所定労働時間数が異なる場合は、1年間の1日平均所定労働時間数を基に定める。
 〔例〕時間単位年次有給休暇1日を8時間とする(1日の所定労働時間8時間の場合)
④取得する単位時間数
 1時間単位だけでなく、2時間単位、3時間単位などとすることができる。

 

■年次有給休暇付与に関するその他の法的取り扱いについて

【取得目的によって制限することはできない】
 年次有給休暇を労働者がどのように利用するのかは、本人の自由です。原則として会社は、その目的によって取得を拒否することはできません(昭48.3.6 基発110)。
 ただし、年次有給休暇の本来の目的は、休息を与えることです。労働者が一斉に休暇を取得して職場を放棄したり、ストライキしたりするなど、争議行為に利用する目的で請求した場合まで認める必要はありません(昭27.7.25 基収3821)。

【年休を取得したことを理由に不利益な取り扱いをすることはできない(労働基準法附則136条)】
 年次有給休暇を取得したことで、不利益な取り扱いをすることはできません。例えば、年次有給休暇を取得したことを理由にして精皆勤手当を支給しないことや、賞与の算定で欠勤したものとして扱うことなどがこれに当たります。そのほかにも、年次有給休暇を取得しにくくなる制度はこれに含まれます。

【半日単位で付与する場合は、労使協定は不要】
 年次有給休暇は、1日単位で与えることを原則としています(昭24.7.7 基収1428、昭63.3.14 基発150)。本人が半日単位で取得することを希望した場合で、会社がこれを認めるのであれば、半日単位で付与しても構いません。
 半日単位での取得は、時間単位付与とは異なり、労使協定は必要ありません。


《復習&応用問題》

Q2 受け入れている派遣労働者から「年次有給休暇を取得したい」という申し出がありましたが、その日に休まれると業務に支障があります。別の日にしてもらおうと考えていますが、問題あるでしょうか?


A2 派遣労働者の年次有給休暇は派遣元が付与します。派遣先が指定された日を変更することはできません

 派遣労働者は、派遣元と雇用関係にあるので、年次有給休暇を与える義務は、派遣元にあります。そのため、派遣労働者は、派遣元に対して取得日の指定をすることになります。その日に休まれると業務に支障があるかどうかの判断や、代わりの労働者の手配については派遣元が行うことになります。
 派遣労働者の時季変更権は派遣元にあるので、派遣先の会社の正常な運営を妨げる場合であっても、派遣先が指定された日を変更することはできません(昭61.6.6 基発333)。

Q3 管理監督者等(労働基準法41条該当者)にも年次有給休暇の権利はありますか?


A3 管理監督者等であっても、年次有給休暇を取得する権利があります

 管理監督者等(労働基準法41条該当者)は、労働時間、休憩、休日の規定は適用除外とされています。しかし、年次有給休暇は除外されておらず、他の労働者と同じように取得する権利があります(昭22.11.26 基発389)。

Q4 当社では、法律の定めのほかにも、採用後3カ月で年次有給休暇を付与しています。この年次有給休暇については、病気やけがの場合だけ認めていますが、法違反になりますか?


A4 法定を上回る年次有給休暇については、取得目的を制限しても構いません

 法定外の年次有給休暇については、法律の制限を受けません。そのため、労使の取り決めによって利用目的を制限することや、取得日を指定することも問題ありません(昭23.3.31 基発513、昭23.10.15 基収3650)。

 
※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2013年8月にご紹介したものです。


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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


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