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新任担当者のための労働法セミナー [2014.07.22]

第27回 年次有給休暇(3)時季指定権と時季変更権(労働基準法39条5項)


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 当社では、仕事の性質上、急に年次有給休暇取得の申し出をされても困ります。何日前からの申し出なら拒んでも構いませんか?


A1 法律では、何日前までと定められていません


 年次有給休暇は、労働者が取得する日を決め、請求することができます(時季指定権)。会社は、基本的に労働者が希望する日に付与しなければなりません。
 いつまでに請求しなければならないのかについては、法律に定められていませんが、勤務予定直前の申し出では代行者の配置が困難な職場で、申し出を前々日までとする就業規則の定めについて、合理的で有効とされた裁判例があります(此花電報電話局事件 最高裁一小 昭57.3.18判決)。

【解説】

■業務に支障が出る場合は、請求された日を変更することができる

 労働者の請求に対して、その日に休まれると「事業の正常な運営を妨げる場合」は、会社は別の日に変更することができます(時季変更権)。ただし、どのような場合に時季変更権が使えるのかについては、それぞれの状況により異なります[図表1~2]
 具体的には、事業の規模、内容、労働者が担当する仕事の内容、性質、繁閑、代替勤務者の配置の難易、同じ時季に請求した者の人数などによって判断されることになります(東亜紡織事件 大阪地裁 昭33.4.10判決)。例えば、恒常的な人手不足の会社が、「人手不足のため」に時季変更権を使うことはできません。
 また、長期の取得が事業の正常な運営を妨げるのであれば、認めないことも考えられます。22労働日の連続取得を認めなかった使用者の時季変更権を適法と判断した判例があります(時事通信社事件 最高裁三小 平4.6.23判決)。


《復習&応用問題》

Q2 当社のパートタイマーは、勤務シフト表で出勤日を決めて通知しています。あるパートタイマーから、出勤日となっていない日を指定して年次有給休暇取得の申し出がありました。認めなければいけませんか?


A2 出勤日ではない日に取得することはできません

 年次有給休暇は、働く義務がある日に請求できるものです。初めから休日となっている日など、出勤日でない日に取得することはできません。
 同様に、働く義務が免除されている休職期間中や育児休業期間中の日を指定して、年次有給休暇を取得することは、原則としてできません(昭24.12.28 基発1456、昭31.2.13 基収489)。

Q3 退職予定の労働者から「退職日まで、年次有給休暇を取得したい」と申し出がありました。引き継ぎも十分にできておらず、困っています。この申し出を拒否することはできますか?


A3 法律上は拒否することはできません

 退職予定者には、退職日を越えて振り替えることができないので、「時季変更権」は使えません。そのため、退職日までの年次有給休暇取得について、法律上は取得を認めざるを得ません。
 しかし、引き継ぎをせずに退職してもよいということにはならず、最後まで責任をもって仕事をせずに退職することは、社会人として最低限のマナー違反といえるでしょう。その労働者には責任をもって引き継ぎをするよう要請することが考えられます。
 今後、このようなことが起こらないようにするには、就業規則に引き継ぎについて記載し、日ごろから教育しておくことが考えられます。また、退職金規程には、「引き継ぎをせずに退職した場合に退職金の全部または一部を支給しない」という旨の記載をすることが考えられます。
 ただし、現実に退職金の減額をすることは、その状況と減額する額とのバランスが問題になり、難しいと言わざるを得ません。

 
※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2013年6月にご紹介したものです。


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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


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