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新任担当者のための労働法セミナー [2014.03.25]

第23回 懲戒解雇、懲戒処分


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 懲戒解雇と普通解雇の違いを教えてください


A1 労働者に問題がある場合の解雇が懲戒解雇です


 懲戒解雇とは、労働者に重大な過失や問題行動があった場合に、会社がその労働者を辞めさせることをいいます。普通解雇や整理解雇が会社の都合による解雇であることに対して、労働者側に重大な問題行動があったという点が異なります。

普通解雇例 懲戒解雇例
 ・能力が不足している
 ・欠勤・遅刻が多い
 ・配置する仕事がない
 ・事業の縮小
 ・店舗の閉鎖 など
  ・無断欠勤
  ・会社のお金を横領した
  ・会社の重大な秘密を漏らした
  ・業務命令に従わなかった
  ・経歴を偽った など


【解説】

■懲戒処分も権利濫用と判断されれば無効になる(労働契約法15条)

 懲戒解雇は、懲戒処分の一つであり、一定の制約がかかります。具体的には、判例により、次の判断基準によって権利濫用かどうかを判断されています。

■懲戒処分が有効とされる判断基準
(1)就業規則に懲戒事由の記載がある(罪刑法定主義)
(2)懲戒事由に当たる事実がある
(3)違反の程度に比べて処分の内容が重すぎない(相当性の原則)
  例:「無断欠勤3日で懲戒解雇する」と就業規則に記載があったとしても、行為に対して重すぎ
   る処分はできない
(4)平等な取り扱いである(平等取り扱いの原則)
  例:他の労働者が同程度の違反をして、始末書の提出で済んだのに、今回は懲戒解雇とするな
   ど、異なる扱いをすることはできない。先例を考慮する必要があるとともに、今回の処分が
   先例になるという意識が必要
(5)適正な手続きを踏んでいる
  例:就業規則に「懲戒委員会で協議する」などと書かれている場合は、その手続きを経る必要
   がある
(6)一つの行為に二度懲戒処分していない(二重処分の禁止)
  例:一つの行為に対して過去にすでに懲戒処分したのに、もう一度懲戒処分を行うことはでき
   ない

 懲戒処分をする場合には、これらの判断基準を考慮に入れなければなりません。
 このように、懲戒解雇する際には就業規則の記載が重要になってきます。原則として、記載のない理由で懲戒解雇にすることはできません。就業規則を作成する際には、現実に懲戒解雇することを想定して、記載しておかなければなりません。

■退職金減額の事由になる

 懲戒解雇にすべきところを自己都合退職の扱いにすることがあります。
 多くの会社では、「懲戒解雇の場合は、退職金を支給しない」と定めており、退職金の支給額に違いが生じることがあるので、注意が必要です。懲戒解雇にすべきところ、自己都合退職扱いにする場合には、自社の退職金規程の内容を確認しておく必要があります。

■懲戒処分には、行為の程度によりいくつかある

 懲戒解雇のほか、懲戒処分には、けん責、減給、出勤停止、降格・降職、諭旨解雇などがあり、問題行動の程度により、どの処分をすべきかが異なります。行動に対して処分が厳しすぎる場合は、懲戒権の濫用になります[図表]

[図表]代表的な懲戒処分の種類
懲戒の種類懲戒の内容注意点
戒告始末書を提出させずに将来を戒めるもの実務では、懲戒処分ではない事実上の注意が多用される
譴責始末書を提出させて将来を戒めるもの始末書の提出は強制できない
減給本来ならば支給されるべき賃金の一部を差し引かれるもの労基法91条により、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金総額の10分の1を超えてはならない
出勤停止労働者の就労を一定期間禁止するもの期間が長いと無効となる可能性が高い
降格・降職等級や資格等の格付けを降ろし、または職位を下げるもの“保有(潜在)能力を評価する”職能資格制度の場合、原則として降格は、人事権としてはなし得ず、命令として行うときは懲戒処分となる
諭旨解雇就業規則上の懲戒処分として、退職届の提出を勧告するもの形式的には辞職による労働契約終了であり、この懲戒処分自体に法的効果があるわけではない
懲戒解雇懲戒処分として労働契約を使用者が一方的に解消するもの有効性は厳格に判断される



■減給の制裁には上限がある(労働基準法91条)

 懲戒処分における減給額の上限は、次のように定められています。
○1回の事案に対して、平均賃金の1日分の半額を超えてはならない
○総額が1賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならない
 出勤停止処分にした結果、働かなかった分の賃金を減額する場合には、この規定の制限を受けません。ただし、その出勤停止の期間がその行為に対して相当かどうかは、状況により異なります。
 また、遅刻や欠勤をした場合に、働かなかった賃金を時間に応じて減額することは違法ではありませんが、遅刻1回につき1000円を減給するなど、働かなかった時間に相応の金額を超えて減額することは減給の制裁になります。


《復習&応用問題》

Q2 懲戒解雇に該当すると思われる事件を起こした労働者がいます。この労働者を普通解雇にすることはできますか?


A2 普通解雇とすることもできます

 懲戒解雇も普通解雇も同じ解雇ですが、懲戒解雇の場合は懲戒処分として行います。
 労働者の非違行為があった場合に、懲戒解雇にするのは厳しすぎると思われるケースがあります。この場合、懲戒解雇にせずに普通解雇にすることができると考えられています。ただし、普通解雇が有効かどうかは、前回ご説明した普通解雇の判断基準によって判断されます。

Q3 前回処分したのに、改めない労働者がいます。懲戒処分は一つの行為に二度処分はできないと聞きましたが、態度を改めないとして今回は以前よりも厳しい処分にすることはできますか?


A3 過去の行為を考慮してさらに厳しい処分にすることはできます

 懲戒処分するに当たって、大原則である「二重処分の禁止(一事不再理の原則)」というのは、いったん出勤停止としたものを、後日懲戒解雇にするなど、一度処分が決まれば二度処分することはできないということです。
 過去に非違行為があり懲戒処分したのに、同様の行為を繰り返した場合は、以前処分した際の反省が十分でなかったと考えられます。そのため、過去にまったく懲戒処分を受けたことのない者に比べて重く処分することは認められます。

 
※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2013年2月にご紹介したものです。


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 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


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