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新任担当者のための労働法セミナー [2014.01.28]

第21回 解雇のルール、解雇理由の証明(労働契約法16条、労働基準法22条)


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 能力不足の労働者を30日前に予告して解雇することはできますか?


A1 権利濫用として、解雇が無効になる可能性があります(労働契約法16条)


 労働者を解雇する場合、労働基準法では、30日前までの予告を義務づけていると前回説明しました。しかし、30日前に予告しさえすれば、いつでも解雇できるわけではありません。
 例えば、「能力不足」という理由で30日前に予告して解雇したとします。労働基準法は守っていたとしても、「解雇権の濫用」に当たるかも知れません。「解雇権の濫用」を簡単に言うと、その状況での解雇が、世間一般から見ると「労働者があまりにもかわいそうだ」と思われるものです。判断基準は、過去の裁判によってできあがっています。

【解説】

■解雇権濫用かどうかは二つの観点から判断される

 解雇権濫用かどうかは、①合理的な理由があるかどうか、②解雇が相当であるかどうか、という二つの観点から判断されます。
 例えば、「能力不足」の場合であれば
 ①本当に能力が低いのかどうか
 ②解雇を避けるためにどれだけ努力したか
 ――という点について検討されます。

■普段から証拠を残す意識を持つ

 過去の裁判を見ると、「能力不足」による解雇は簡単には認められていません。
 裁判等になると、会社側は解雇権濫用ではない証拠を示さなければなりません。解雇しようというときになって、慌てて証拠を集めようとしても、急には集められないことがほとんどです。人事担当者としては、これらの証拠を、普段からこまめに集めておくことが重要です。 
 「能力不足」を例にとると、具体的には、人事考課表やクレーム書、指導記録などが証拠になります[図表1]。これらの書類は、裁判では証拠になるという意識を持って、日ごろから残しておくことが重要です。口頭での話を書面で残す、書類に書いてもらうという努力が必要です。

[図表1] 能力が著しく低いことを理由とする解雇の証拠例

1.本当に能力が低いのかどうか
   ○過去の人事考課表…どのように低いのかを具体的に残す
   ○目標管理シート…本人の直筆は有力な証拠になる。目標がどれほど低いのか、
               会社はどういう指導をしたか
   ○クレーム書…顧客からのクレームは書面に残す、書いてもらえる場合は書いてもらう
   ○始末書…トラブルがあればこまめに書かせる

2.解雇を避けるためにどれだけ努力したか
   ○日々の業務の中で注意や指導した記録…具体的に指導内容を残す、回数が多いほどよい
   ○外部の研修に行かせて能力向上を図った…研修に行かせても能力は向上しなかった
   ○配置転換をした…他の仕事もさせてみた

■解雇通知は文書を渡す

 解雇通知を口頭ですると後で「言った、言わない」のトラブルになることがあります。また、予告をした日を明確にする必要があるため、解雇通知は文書を渡します[図表2]
 解雇通知書は、後で重要な証拠になります。トラブルになれば、ここに記載した解雇理由について証明しなければなりません。人事担当者としては、後で変更も追加もできないという意識で作成する必要があります。

[図表2] 解雇通知書例

■退職時の証明が義務づけられている(労働基準法22条1項)

 労働者が、「退職時の証明書」の交付を請求してきた場合には、遅滞なく交付しなければなりません。証明は、次の項目のうち、労働者が希望した項目だけを記載するものとされ、希望しない項目を記載してはいけません。また、これら以外の項目を証明するよう求められても、応じる義務はありません。
 ①会社に在籍した期間
 ②従事していた業務の種類
 ③役職名
 ④賃金
 ⑤退職または解雇の理由

■解雇予告のときは「解雇理由証明書」の交付が義務づけられている(労働基準法22条2項)

 労働者に解雇予告をした場合で、労働者が「解雇理由証明書」の交付を請求してきたときは、これを交付しなければなりません[図表3]
 解雇理由は、具体的に記載する必要があり、就業規則に該当することを理由として解雇した場合は、その条項の内容と事実関係を証明書に記入しなければなりません。

■会社を守る意識を持つ

 これらの証明書には、あらかじめ第三者と申し合わせて、労働者の国籍、信条、社会的身分、労働組合活動について記入したり、秘密の記号を記入したりすることは禁止されています。
 また、これらの証明書は、解雇通知書と同様に、注意して記入しなければなりません[図表4]。トラブルになれば、ここに記載した内容が証拠になるという意識が必要です。解雇理由についても、前回説明した解雇制限に触れるような事由や不利益取り扱いに当たるような内容は、当然ここに書いてはいけません。(例えば育児休業・介護休業を取得したことなど)
 このように、人事担当の業務は、日常の書類が重要な意味を持つことが多い業務です。常に自分の仕事の責任を自覚し、「会社を守る」という意識を持つことが重要です。
 
[図表4] 解雇理由証明書例

■解雇の理由は就業規則に記載する(労働基準法89条)

 どのような場合に解雇するのか、その理由をあらかじめ就業規則に記載しておく必要があります(労働基準法89条)。また、労働契約を結ぶ際にも、どのような場合に解雇するのか、書面で明示することが義務づけられています(労働基準法15条)。ただし、適用する部分を明らかにした上で就業規則を交付しても構いません。
 懲戒解雇の場合とは異なり、解雇の理由として具体的な記載がないから解雇できないというものではありません。


《復習&応用問題》

Q2 労働者を解雇したところ、裁判を起こされました。もし、会社が負ければどのようなお金が必要になりますか?


A2 解雇後の賃金などを請求されます

 会社がした解雇が、権利濫用と判断された場合は、無効になります。無効になると、会社は労働者を辞めさせることができなくなります。
その上、一般的に以下の費用を請求されます。
○解雇されていなかったら支給されたであろう賃金
○弁護士費用
○その他の財産的損害、精神的損害など
 上記のうち、必ずしもすべて認められるわけではなく、認められるものはケースにより異なります。

Q3 解雇した労働者から、解雇理由に関する証明書を請求されましたが、口頭で伝えていた理由は本当の理由ではありません。証明書にはどのように記載すべきでしょうか?


A3 事実を記載すべきです

 退職時の証明は、事実を記載してはじめて義務を果たしたものとされます。虚偽の記載は義務を果たしたことにはなりません(平11.3.31 基発169)。
 また、退職時の証明書は、もし労働審判や訴訟を起こされた場合には証拠として使われることもあります。そして、証明書に記載した内容について、後日、証明をしなければならない可能性があります。虚偽の記載はこのような場面でも困ることが予想されます。

Q4 退職した労働者から、退職時の証明を請求されました。離職票を発行することでこれに代えることはできますか?


A4 離職票を退職時の証明書に代えることはできません(平11.3.31 基発169)

 ハローワークに提出する離職票は、雇用保険の手続きのために提出する書類であり、これを発行したことで、退職時の証明書に代えることはできません。


※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2012年12月にご紹介したものです。


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
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 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


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