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新任担当者のための労働法セミナー [2013.09.27]

第17回 割増賃金(労働基準法37条)(2)


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 当社では、基本給を低くして他の手当をたくさん付けることで、時間外労働割増賃金を低く抑えています。法律上、問題ありますか?


A1 基本給だけを基礎にして割増賃金を計算することはできません


 割増賃金の計算の基礎となる賃金は、通常の労働時間に働いた賃金です。計算の基礎から除外できる手当は法律で定められており、それらの手当以外の賃金はすべて加えなければなりません[図表1]
 基本給から手当を分けても、割増賃金を計算する上では、加算して計算する必要があります。

[図表1] 割増賃金を算定するために賃金総額から除外するもの

割増賃金の算定の基礎から除外 (参考)平均賃金の算定の基礎から除外
家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当 通貨以外で一定の範囲に属さないもの
(法令・労働協約によらない現物給与)
1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
(賞与、1カ月を超える期間ごとの精勤手当など)
3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金
(年3回までの賞与など)
臨時に支払われた賃金
(結婚手当、私傷病手当など)
臨時に支払われた賃金
(結婚手当、私傷病手当など)

【解説】

■除外できるかどうかは実態で判断される

 除外できる賃金(手当)は、[図表1]のとおり七つ掲げられています。ただし、これらに当たるか否かは名称ではなく、実態で判断されます。
 例えば、家族手当は「扶養家族の人数に応じて決定するもの」をいい、人数に関係なく一律に支給されているものは、ここでいう家族手当とはみなされません。また、住宅手当は、①賃貸住宅については居住に必要な住宅の賃借のために必要な費用、②持ち家については居住に必要な住宅の購入管理等のために必要な費用をいい、住居形態などの条件によって一律に支給するものは割増賃金の算定基礎から除外できません。
 家族手当や住宅手当など、労働者の実績や貢献度とは関係のない属人的な賃金を削減・廃止する会社が増えています。しかし、割増賃金の算定のみで考えると、これらの除外可能な手当を厚くして他の賃金を低くするほうが、割増賃金の支払いを抑えることができます。ただし、これらの額を高くしすぎるなど、貢献度とのバランスを考慮せずに設定することは、労務管理上好ましいとは言えないでしょう。

■賞与は割増賃金計算から除外できる

 賞与は、「1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金」として割増賃金の計算の基礎から除外できます。このため、毎月支払いの賃金を低く抑え、賞与の割合を多くすれば、時間外労働手当を低く抑えることができます。
 また、賞与は平均賃金を算定する際にも除外できるので、毎月の賃金を低く抑えて賞与の割合を多くすると、解雇予告手当や休業手当、労災の場合の休業補償も低くなります。


《復習&応用問題》

Q2 年俸制賃金の対象者は、時間ではなく、成果を評価して年俸額を決定しているため、労働者も納得の上で割増賃金を払っていません。後で問題になるケースはありますか?


A2 年俸制賃金でも、割増賃金は支払わなければなりません

 年俸制賃金であっても、法律上の特例が認められているわけではなく、割増賃金を支払わなければなりません。労働基準法は強行法規ですから、本人が納得していたとしても、支払う義務は免れません。
 ただし、管理監督者や、裁量労働制、事業場外みなし労働時間制の労働者であれば、多くの場合、割増賃金を払う必要はないため、年俸制賃金に向いていると考えられます(みなし時間の設定等によっては別途必要)。
 また、年俸制の適用対象がその他の一般労働者でも、次の要件を満たす限り、割増賃金を毎月一定額で支払うことができます。この場合、あらかじめ定めた割増賃金が、実際に労働した時間外労働時間等に基づいて計算した額に満たない場合は、不足の割増賃金を支払わなければなりません(平12.3.8 基収78)。
①年俸に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容として明らかである
②割増賃金相当部分と通常の労働時間に対応する賃金部分に明確に区別することができる
③割増賃金相当部分が法定の割増賃金額以上支払われている

 年俸制賃金では、年俸額を基に割増賃金を計算しなければなりません。本来、賞与は割増賃金計算の基礎から除外できるものですが、あらかじめ支給額が確定している賞与は除外できません(昭22.9.13 基発17)。そのため、年俸制賃金では割増賃金が高額になることが多く、注意が必要です。

 

Q3 当社では、給与計算で割増賃金を計算する際に、15分単位で切り捨てています。法律違反になりますか?


A3 原則として、端数を切り捨てることはできません。ただし、給与計算をする上で端数処理が認められているものもあります

 働いた分に対する賃金は、全額を支払わなければなりません。そのため、毎日の時間外労働時間を15分単位で切り捨てるなど、賃金計算をする際に端数を切り捨てることはできません。同様に、5分の遅刻を30分の遅刻として計算するなど、働かなかった時間を超える減額は、全額払いの原則に反するため、できません(制裁として行う方法はあります)。
 ただし[図表2]のとおり、給与計算をする上で端数処理として認められているものもあります(昭63.3.14 基発150・婦発47)[図表2]

[図表2] 端数処理で求められるもの

1.割増賃金の計算

  • ①1カ月の時間外労働、休日労働、深夜業のそれぞれの時間数を合計したとき、1時間未満の端数がある場合、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること
  • ②1時間当たりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り 捨て、それ以上を1円に切り上げること
  • ③1カ月の時間外労働、休日労働、深夜業のそれぞれの割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること

2.1カ月の賃金支払額における端数処理

  • 1カ月の賃金支払額(賃金の一部を控除して支払う場合には控除した額)に100円未満の端数が生じた場合
  • ①50円未満の端数を切り捨て、それ以上を100円に切り上げること
  • ②1カ月の賃金支払額の1000円未満の端数を翌月の賃金支払日に繰り越して支払うこと


※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2012年8月にご紹介したものです。


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

●人事・総務担当者なら知っておきたい、よくあるケース・実務のポイントを123問のQ&A形式で解説!

●労働時間、解雇、賃金など、問題となりがちな項目について、労働基準法の定め・取り扱い等を図解入りで解説

 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』『あなたの年金これで安心!―受け取る金額がすぐ分かる』(以上、成美堂出版)など。


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