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人事パーソン要チェック! 新刊ホンネ書評 [2013.05.08]

[26] 『社会的人事論――年功制、成果主義に続く第3のマネジメントへ』―木谷 宏


労働調査会 2013年3月



 本書では、社会環境の変化に対応した企業・人材・働き方が求められている今日において、人事管理の在り方も、従来の経済的合理性から社会的合理性へとそのフレームワークを変えていく必要があるとし、年功制、成果主義に続く第3のマネジメントとして、「社会的人事論」という考え方を提唱しています。

 「社会的人事論」とは、第1に、社会的存在としての企業の枠組みを変えていくことであり、そのためにはすべての企業がCSR(企業の社会的責任)を果たすべく、経済・社会・環境のトリプル・ボトム・ラインによる企業経営を行うことが不可欠になるとしています。第2には、個々の働く人のすべてがプロフェッショナルへと変身することであり、エリートやスター社員を育成・選抜するための人事管理ではなく、パートタイマーやアルバイト、若年者や高齢者、そして男性も女性も全員が活躍できる企業風土、処遇、育成が不可欠になるとしています。第3は、多様な働き方の実現であり、それは、企業が預かっていた人々の24時間を個人に返還する試みであるといってもよい、としています。

 全体は五つの章から構成されており、第1章で人事管理の系譜と行く末を概観し、以下の章で、新たな人事の枠組みを企業、人材、働き方の三つのアプローチから考察しています。第2章では企業のこれからの姿をCSRの視点から考え、第3章ではあるべき人材の姿についてプロフェッショナル論を展開し、第4章では働き方の未来をワーク・ライフ・バランスとダイバーシティ・マネジメントの観点から考察しています。そして最終の第5章では、新たな時代の人事管理のトピックを幾つか取り上げています。

 著者は大学教授であり、本書は人事管理のこれまでと今後について説いたテキストとしても読めます。一方で、著者は、大手企業での長年の勤務の間に米国現地法人でCOOを務めたり、人事部で成果主義の導入、ポジティブ・アクションの実現などさまざまな人事改革に携わった実績の後にアカデミズムの世界に転身した人でもあり、幅広いテーマを扱いながらも、各章において、「現場」「実務」からの視座が保たれているため、その提案に空疎感はありません。まさに、これからの人事の在り方、さらに言えば、企業の枠組みを超えた働く理論の再構築に一石を投じた、啓発される要素の多い本であると思います。

 個人的には、「小さなプロフェッショナル」という提案が非常に興味深く、その他にも、「時間とは第3の報酬である」という考え方や、ダイバーシティにおける個人の内なる多様性、根源的(個人的)ダイバーシティに着眼し、その重要性を説いている点などに大いに啓発されました。

 本文の冒頭には「多様な人材をマネジメントする20の問い」というリストがあり、「Q4 日本における成果主義はなぜ失敗したか?」「Q8 能力は正しく定義されているか?」「Q16 短時間正社員とは何か?」といった問いが並んでいますが、すべてのページの右上ハシラに、そこに書かれている内容に対応する「問い」が示されており、初学者は「20の問い」を先に見たほうが本書の内容を概観しやすいかもしれません。関心がある「問い」に対応している節から読み始めても読めてしまうという“優れもの”でもあります。

<本書籍の書評マップ&評価> 下の画像をクリックすると拡大表示になります

 

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2013年4月にご紹介したものです

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき

 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒) 
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長 
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格 
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに) 
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント 
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」 
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント 
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格 
    
1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員 
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員 
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー 

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