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名言、故事成語に学ぶ人材マネジメントの本質 [2013.03.13]

第10回 評価そのものが目的化していないか?~人事評価の本質を考えさせてくれる言葉たち


名言、故事成語に学ぶ人材マネジメントの本質(10)
太期健三郎 だいごけんざぶろう
(ワークデザイン研究所 代表)

 「人事評価」は人材マネジメントの要(かなめ)と言えますが、評価制度の正しい運用はとても難しいものです。
 今回はいくつかの言葉から、人事評価の目的、意義と、評価を正しく行うポイントを考えていきましょう。

■人事評価の目的は、賞与・昇給額を決めるためだけではない

 「手段の目的化」という言葉があります。ある目的を実現するために手段を選択したはずなのに、その手段を実行すること自体を目的となってしまうことです。
 人事評価は何のために行うのでしょうか? これを正しく認識していないと、人事評価を行うことそれ自体が目的となってしまいます。
 人事評価のことを「査定」という人がいます。こういう人は人事評価の目的を「賞与、昇給の額」の決定だけにあると考えているのでしょう。しかし、これは人事評価を行う目的の一つに過ぎません。
 人事評価には、育成、異動配置、昇進・昇級などを行うための判断材料(情報)を得る、評価結果をフィードバックすることによって本人のモチベーションを高める――などさまざまな役割、機能があります。人材マネジメントを行う要(かなめ)と言えるでしょう([図表1]参照)。 

[図表1]人材マネジメントにおける人事評価の位置づけ
 

■人が人を評価することは不可能か?

 人事評価の話になると「人が人を正しく評価するなんてできない」「人を正しく評価できるのは神様だけですよ」と言う人がときどきいます。
 確かに、人が人を100%正しく評価することはできないかもしれません。しかし、このような発言は、正しい人事評価を行おうとする責務と努力を放棄する言い訳のように聞こえます。人材マネジメントを行っていく上で人事評価は欠かせないものです。それならば、「正しく評価できるのは神様だけ」なんて言っていられず、少しでも正しい評価に近づけるように評価者も人事部門も努めるしかありません。

 いくつか人事評価に関連する言葉を見ていきましょう。
 「先入観は悪、固定観念は罪」。これは元楽天イーグルス監督の野村克也氏の言葉です。監督として選手の育成、起用には先入観、固定観念を捨てる重要性を説いています。
 会社の配置や人事評価でも、「彼は**大学出身だから能力が高い」「異動前の営業所で営業成績トップだったから優秀」「本社エリートは現場を知らず机上の空論ばかり」……と固定観念、先入観を持って行われていないでしょうか? 評価者訓練などで是正するなどして、人事評価はニュートラルな状態で取り組む必要があります。

 「人を評価するにはその事業を見るべきである」。これは、ナポレオン(*)の言葉で、「人は何を成し遂げたかで評価されるべきだ」という意味です。立場や肩書きが高かったり、言うことは立派だったりするけれど行動が伴わないという人がいますが、人は、行動とその成果で評価されなければいけません(プロセス評価と結果評価)。
※ナポレオン1世:フランス革命期の軍人・政治家、フランス皇帝


 「岡目八目」――これは囲碁から出た言葉です。「碁を横から見ていると、実際に打っている人よりも、8目先(8手先)まで見越す」ということから転じて、事の当事者よりも第三者や少し離れた人のほうが物事を正しく判断できることを意味します。
 一番近くで見ている上司は近すぎるが故に見えないこともあり、ましてや本人評価(自己評価)ではなおさらです。そこで、部門全体を捉え、高い位置から俯瞰(ふかん)できる上位者による二次評価が行われることで補完されるのです。

 「主観が集まれば客観に近づく」という言葉があります。
 これは一人の意見、感想は主観でも、それが多く集まれば客観に近づくというものです。
 例えば、あるサービスについて調査をするとします。一人ひとりの調査結果は個人的な主観そのものですが、調査対象者が100人、1000人と増えれば客観性は高まっていきます。
 その考えを取り入れたものが多面評価制度(360度評価制度)です。通常、人事評価は上司が行いますが、多面評価制度では上司以外にも、部下や同僚、仕事で関係のある他部門の社員、あるいは顧客、取引先など多方面から評価を行います。
 上司だけの評価だと「上司は自分のことを分かってくれない」「評価ミスがある」と思う部下も、多面評価で同様の結果が多いと、納得性が高まるとともに、自己への振り返り、気づきの自己成長に役立ちます。適切な評価者の選定や、多面評価の趣旨や注意事項の説明など運用に手間がかかったり、難しい一面もあります。
 多面評価の結果を直接処遇に反映させる企業はまだ少ないですが、育成、配置などのために導入している企業は増えています[図表2]

[図表2]人事評価制度の主な課題とその対応策
 

■評価者自身も評価されている

 「自分が人を評価するように、他人もまた自分を評価する」ということわざがフランスにあります。
 評価者(管理者)は、部下を評価するとともに、自分自身も評価されています。
 「部下を適正に評価し活用する」ことは管理者の主要な責務の一つです。最も大切な責務と言っても過言ではないでしょう。そして、それを管理者は上位者や人事部、部下から見られている(=評価されている)のです。
 管理職の評価項目に「部下の評価」「部下の育成」を設け、他の業務に比べても高いウェイトで評価している企業も少なくありません。あえて独立した項目とすることで、管理職に職責として人事評価の重要性を意識させ、正しく評価することを促すのです。

■まとめ

今回のコラムのポイントを整理します。

1.人事評価は、人材マネジメントの要(かなめ)
2.ポイントを押さえることで、人事評価の精度は高められる
3.評価者自身も評価されている

 管理職の「評価力」と「部門業績、部門目標の達成度」は高い相関関係にあります。人事評価制度の運用レベルを高めることが、人材マネジメントを機能させる要諦なのです。

太期健三郎(だいごけんざぶろう)profile
1969生まれ。神奈川県横浜市出身。人事コンサルタント/ビジネス書作家。三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスを経て、ワークデザイン研究所代表に就任。コンサルタントおよび現場実務の両者の立場で一貫して人材マネジメントとキャリアデザインに取り組む。主著『ビジネス思考が身につく本』(明日香出版社)。
ワークデザイン研究所のホームページ http://work-d.org/
ワークデザイン研究所代表のブログ http://blog.livedoor.jp/worklabo/


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