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採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント [2013.02.07]

2013年2月

 

HRプロ株式会社/HR総合調査研究所
代表 寺澤康介 てらざわ こうすけ
(調査・編集: 主任研究員 松岡 仁)


 HRプロ代表の寺澤康介です。
 2月を迎え、大学の後期試験も終わって、いよいよ採用活動も本格化してきました。広報活動としてのセミナー・説明会から、面接選考の局面に突入された企業様も多いのではないでしょうか。昨年も言われたことですが、12月までの期間に業界研究やOB・OG訪問をしている学生は少なく、満足な企業研究ができていないまま面接に臨む学生が多く見受けられるようです。企業研究ができていないからといって優秀でないとも限らず、逆に企業研究がよくできている学生が必ずしも優秀というわけでもありません。
 では、企業はどう対応すべきなのでしょうか。
「入りたい人の中から選ぶ」のではなく、「採りたい人の中から選ぶ」といった、発想の転換が必要なのではないでしょうか。つまり、優秀だと思う学生の志望度を上げさせていく、育てていくという考え方です。

■学生の志望度を高めるモチベーティブコミュニケーション

 昨年12月の記事では採用担当者の「プレゼンテーションスキル」について触れましたが、説明会での「1対多」のコミュニケーションだけでなく、面接で学生との「1対1」のコミュニケーションも採用成功において大変重要な要素となります。しかし、採用選考での「個別面接」を、学生を動機づけるためのコミュニケーション機会として活用できている会社はまだまだ少ないのが現実です。

 採用選考での「個別面接」の第一の目的は、「学生の能力や価値観を客観的に評価し、自社で活躍できる人材を選考すること」です。
 説明会に参加して自社を志望してくれた学生に対してエントリーシートや履歴書で情報収集し、面接では学生時代の経験などを聞きながらその学生のポテンシャルを把握します。そして、その評価が高い(優秀)と判断された学生は合格となり、次のフェーズの選考に進むか、それが最終面接であれば内定(内々定)を付与します。しかし、ポテンシャルの高い人材は他社からも内定を得ており、あんなに熱く自社への志望動機を語っていたにもかかわらず、あっさりと内定を辞退してしまう――そんな状況が、毎年多くの企業の採用活動の中で起きています。

 もはや個別面接は、「学生を選考する場」だけではなく、「学生の自社への志望度を高める場」としても考える必要があるのです。では、個別面接の場でどのように学生の志望度を高めればよいのでしょうか。その一つの手法が今回ご紹介する「モチベーティブコミュニケーション」です。
 弊社が開講している人事担当者向けスキルアップ講座・HRプロスクールの『学生や現場社員を動機づけるモチベーティブコミュニケーション力養成講座』(講師:小寺良二氏)で伝えている「モチベーティブコミュニケーション力」をいくつかご紹介いたします。

※小寺良二氏(キャリアファシリテーター)プロフィール
 アメリカの大学にて教育学とパブリックスピーキングを学び、日本人留学生で唯一のA評価を得る。卒業後はアクセンチュア(株)を経て(株)リクルートで採用コンサルティングを経験し、2009年にキャリアファシリテーターとして独立。
 現在は官公庁などの若年就労支援プロジェクトや、(株)リクルートがCSR活動として全国展開している若者就職応援プログラム「ホンキの就職」のプログラム開発兼ファシリテーターとして、全国各地でのキャリアセミナーの実施や、講師の育成に取り組んでいる。
 参加者20名のセミナーから1200名の前での講演まで数多くのスピーチ経験があり、フジテレビや日本テレビなどのテレビ番組にも多数ゲスト出演。

■「学生を選ぶ面接」から「学生を動機付ける面接」へ

 多くの採用担当者や面接官は、個別面接を「学生を選ぶ場」と考えていますが、そもそも本当に採用したい人材というのは、個別面接の場でなければ判断できないのでしょうか。採用活動を何年か経験した担当者であれば、最終面接まで通過する学生というのは、会社説明会や集団面接の場でも目を引くものがあることに気付くでしょう。
 要はすべての学生に対しては難しくても、一定レベル以上の“欲しい人材”というのは、個別面接の前である程度ターゲティングができてしまうということです。その場合、個別面接を「学生を選ぶ場」だけで捉えてしまうのは大変もったいないことなのです。欲しい人材にこそ、個別面接の場で自社への志望動機を高めていきたいはずです。
 採用活動で「モチベーティブコミュニケーション」を活用する最初のステップは、個別面接を「学生を選ぶ場」から「学生を動機づける場」として捉えることから始まります。

■学生に対して評価や課題点を伝える「フィードバック」

 「モチベーティブコミュニケーション」の最も重要なスキルは、面接官自身がその学生に対して感じたことや評価、課題点をその場で直接伝える「フィードバック」です。
 「フィードバック」は、実際に社内の評価面談や業務上のミーティングなどで行われているものです。自分自身の業務や成果に対して、上司や他の社員からの評価やコメントを受けることは、自身の今後の成長に大変役に立ちます。この成長につながる「フィードバック」を個別面接で有効に活用するのです。

 フィードバックの内容は、面接官によって異なっていてもよいと思います。ただし、ぜひ基本として理解していただきたいのは、その学生の「評価」と「課題点」を伝えることです。「評価」とは、その学生の良い点や強み、面接官自身が評価した点です。「課題点」とは、その学生にとって成長が必要な点や、次回の面接に向けて改善していくべき点のことです。これらの「評価」と「課題点」を組み合わせながら、学生に対してフィードバックをしていきます。

 下記はフィードバックの例です。AとB、それぞれ何がどう違うのかを比較し、どちらのフィードバックが有効か考えてみてください。

[フィードバック例:A]
 ○○さんの良いところは、自分自身が組織の中でどんな役割を期待されているかを考えた上で、役割意識を持って行動できる点だと思います。実際にご自身のサークルでも、リーダーとメンバーの間に立って、組織のつなぎ役を担ってきたということですから、きっとどんな組織に身を置いたとしても、自分のポジションでできる貢献をしてくれると感じました。ただし、行動することよりも、まず考えることが先行してしまう傾向があるような気がしますので、ぜひ失敗を恐れず行動に移すことを今後の成長テーマにしてほしいと思います。

[フィードバック例:B]
 ○○さんの「組織に対して自分の役割意識を持ちながら行動できる点」は大変評価しています。しかし、現在のままでは社会では通用しないというのが今の私の印象です。なぜならば、組織にとって必要な役割が明確化されている状況というのは、ビジネスの現場では決して多くないからです。この役割を誰かが担えば必ず組織は良くなるという答えが出ていれば、すでに誰かがやっているはずです。ほとんどは答えのない状況の中で行動し、失敗を重ねながら答えを自分で見いだしていくしかありません。○○さんからは、行動を通じて失敗を糧にしていこうという気概が感じられませんでした。

 AのフィードバックとBのフィードバックで何が違うかお分かりになりますか?
 答えは「評価と課題点の割合」です。

 Aのフィードバックは「評価」が8割で、「課題点」が2割で伝えられています。学生にとっては大変うれしい内容のフィードバックといえます。逆にBのフィードバックは「評価」が2割で、「課題点」が8割で伝えられています。若干辛口の内容で、学生によっては落ち込んでしまう学生もいるでしょう。

 両フィードバックともに「欲しい」と評価されている学生に対して行われているものですので、自社への動機づけを目的として行われているはずです。

 では、どちらのフィードバックの方が効果的なのでしょうか。

 答えは、「AもBも共に有効である」ということです。
 学生の状態や性格によって使い分けることで、どちらのフィードバックも動機づけに良い影響を与えてくれます。
 Aのフィードバックは「評価」が中心なので、まだ自分自身の能力やポテンシャルに気づいていない学生に有効です。自己評価が他者評価よりも低い場合は、その自己評価を上げてあげることで自信につなげることができるため、学生に「自分自身を最も評価してくれた会社」というイメージを持ってもらい、志望動機を高める効果が期待できます。
 逆に、Bのフィードバックは、ある程度学生時代に実績を持ち、自己評価が高い学生にとって有効です。そういった学生は評価を受けることに慣れているので、評価よりも自分の課題や改善点のほうに意識が向かいます。自分の成長を最も真剣に考えてくれて、あえて厳しいことも言ってくれる「育成意識のある会社」というイメージを持ってもらうことが有効なのです。

 しかし、フィードバックで「評価」と「課題点」を学生に伝えるだけでは、本当の意味での自社への志望動機の醸成にはなりません。フィードバックの効力を最大化させるためにも、「フィードバック内容」と「自社の価値」に橋をかけてつなげることが重要なのです。

■フィードバック内容と自社の価値をつなげる「ブリッジング」

 面接官からのフィードバックで、学生は自分の「評価」と「課題点」を認識することができました。しかし、それだけでは本当の意味での自社への志望度が上がったことにはなりません。フィードバックの内容を志望動機につなげるには、その内容を「自社の価値」と結びつける「ブリッジング」というスキルが必要になるのです。
 「ブリッジング」とはまさに「橋をかける」ことですが、フィードバックで認識した自分の強み(評価)や弱み(課題点)を、「自社であれば活かせる」、もしくは「伸ばしていくことができる」ということを学生に伝えることです。

 下記は、先ほどのフィードバック事例にブリッジングを加えたものです。

事例:A
〈フィードバック〉
 ○○さんの良いところは、自分自身が組織の中でどんな役割を期待されているかを考えた上で、役割意識を持って行動できる点だと思います。実際にご自身のサークルでも、リーダーとメンバーの間に立って、組織のつなぎ役を担ってきたということですから、きっとどんな組織に身を置いたとしても、自分のポジションでできる貢献をしてくれると感じました。ただし、行動することよりも、まず考えることが先行してしまう傾向があるような気がしますので、ぜひ失敗を恐れず行動に移すことを今後の成長テーマにしてほしいと思います。

〈ブリッジング〉
 弊社では、入社2年目の早い段階で店舗のサブマネージャーというポジションに就いてもらいます。きっと○○さんなら、今までのサブマネージャーの役割に捉われない、新しいリーダー像を作ってくれると思います。期待していますよ。

事例:B
〈フィードバック〉
 ○○さんの「組織に対して自分の役割意識を持ちながら行動できる点」は大変評価しています。しかし、現在のままでは社会では通用しないというのが今の私の印象です。なぜならば、組織にとって必要な役割が明確化されている状況というのは、ビジネスの現場では決して多くないからです。この役割を誰かが担えば必ず組織は良くなるという答えが出ていれば、すでに誰かがやっているはずです。ほとんどは答えのない状況の中で行動し、失敗を重ねながら答えを自分で見いだしていくしかありません。○○さんからは、行動を通じて失敗を糧にしていこうという気概が感じられませんでした。

〈ブリッジング〉
 弊社の仕事をひと言で言うと「店舗経営」です。自分の店舗の成果や失敗はすべて自己責任となります。その代わり、それらを糧にして何度でもトライ&エラーを重ねることができる環境です。もし○○さんが今の自分を成長させていきたいと本気で思うのであれば、最高の環境を用意することはできると思いますよ。

 フィードバックの内容を基にして自社とのブリッジングを行うことで、自社の特徴がその学生にとって本当に価値のあるものになります。学生自身が面接など、企業とのコミュニケーションを通じて気づいたことが、本当の意味での志望動機となるべきですし、面接官は面接で学生をただ選ぶだけではなく、学生と共に自社のどの部分がその学生にとって最も価値があるのかを、一緒に探す意識を持って臨むべきでしょう。モチベーティブコミュニケーションは、ただ学生を一方的に口説き落とす技術ではなく、「学生自身が求めている価値を企業の中に見つける」ためのコミュニケーションなのです。
 いかがでしたでしょうか。ぜひ実践してみてください。


110506terazawa_pic.jpgのサムネール画像寺澤 康介 てらざわ こうすけ
HRプロ株式会社 代表取締役
HR総合調査研究所 所長

86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(現HRプロ)を設立、代表取締役に就任。約20年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
http://www.hrpro.co.jp/

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