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新任担当者のための労働法セミナー [2013.07.23]

第15回 賃金とは(労働基準法11条)、賃金支払い5原則(労働基準法24条)


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 会社が労働者に支払うものは、すべて賃金ですか?


A1 賃金とは、労働の対償として使用者が労働者に支払うものをいいます。賃金、給料、手当、賞与など名称が何であるかは問いません(労働基準法11条)


 賃金とは、労働の対償として使用者が労働者に支払うものをいいます。例えば、結婚祝金、死亡弔慰金、災害見舞金などの恩恵的なものは原則として賃金ではありません[図表1]。ただし、労働協約、就業規則などによってあらかじめ支給条件が明確なものは賃金として扱われます(昭22.9.13 発基17)。
 「賃金」であれば、直接払いの原則、全額払いの原則が適用されるなど、後で説明する労働基準法に保護されることになります。

[図表1] 賃金であるかどうかの判断例

 

【解説】

■退職金として明確なものは賃金として支払う義務が生じる(労働基準法11条)

 本来、会社は退職金を支払う義務はありません。しかし、就業規則や労働協約などに退職金制度として規定すれば、「賃金」として支払う義務が生じます。就業規則とは別規程となっている「退職金規程」も、就業規則の一部になります。
 同様に、賞与の支給も法律で義務付けられたものではありません。そのため、賞与を支払わなくても法違反ではなく、支給要件、計算方法についても会社が定めることができます。
 ただし、就業規則や賃金規程等に「基本給の○カ月分を支給する」などと記載している場合は注意が必要です。支給額や月数を明確に定めている場合は支給する義務が生じ、それに従い支給しなければなりません。

■賃金を請求する権利は2年で時効になる(労働基準法115条)

 賃金を請求する権利は2年、退職金を請求する権利は5年で時効によって消滅します。
割増賃金を払っていないことが、労働者の申告等によって判明し、労働基準監督署から支払い命令を受けるケースが増えています。この場合、時効消滅までの最長2年間の支払い命令を受けることになります。

■賃金支払いの5原則(労働基準法24条)

 賃金の支払いには、①通貨で、②直接本人に、③全額を、④毎月1回以上、⑤一定期日を定めて支払う――という5原則があります[図表2]

[図表2] 賃金支払いの5原則

 このうち、いくつかピックアップして、説明します(詳しくは、後掲[図表3]をご覧ください)。

●要件を満たせば振り込みによることができる(通貨払いの原則の例外)
 賃金は通貨(現金)で支払うこととされており、小切手や現物給付は認められません。ただし、①法令に定めがある場合、②労働協約に定めがある場合、③厚生労働省令で定める賃金について、定める方法で支払う場合は、例外として通貨以外の支払いが認められています。
 例えば、次の要件を満たした場合は振り込みによることができます。また、退職金については、本人の同意を得た場合に小切手や郵便為替によって支払うことが認められています(労働基準法施行規則7条の2)。
<振り込みによる場合の要件>
・労働者の書面による同意を得ること
・労使協定を締結すること
・所定の賃金支払日に金額等を記載した計算書を交付すること
・賃金の全額が所定の支払日の午前10時ごろまでに払い出しできること
・取扱金融機関は複数とするなど労働者の便宜に十分配慮すること
・証券総合口座の場合はMRF(マネー・リザーブ・ファンド)であることを確認するなどの要件あり

●労使協定があれば賃金から控除できる(全額払いの原則の例外)
 賃金は、その全額を支払わなければなりません。ただし、
①所得税や社会保険料など法律で定められているもの
②会社と労働者の過半数を代表する者(過半数を代表する労働組合があれば労働組合)との書面協定があるもの
――については、賃金から控除することが認められています。②については、「購買代金、社宅、寮その他の福利、厚生施設の費用、社内預金、組合費等、事理明白なもの」についてのみ、賃金から控除することが認められます(昭27.9.20 基発675、平11.3.31 基発168)。
 なお、賃金は労働の対償として支払うものですから、欠勤や遅刻など、働かなかった時間分を減額することはこの限りではありません。

[図表3] 賃金支払いの5原則 <画像をクリックすると拡大表示になります>


《復習&応用問題》

Q2 給与計算をする際に、担当者のミスで多く払いすぎてしまいました。翌月の給与から控除しようと思いますが、法律違反になりますか?


A2 過払い賃金の清算はできます

 「全額払いの原則」により、原則として会社が一方的に給与から控除することはできません。ただし、前月に支払いすぎた賃金を翌月清算する場合は、判例では次の要件を満たす限り賃金の全額払いに反せず、許されるとされています(福島県教組事件 最高裁一小 昭44.12.18判決など)。
①支払い後それほど離れていない時期である
②労働者に予告する
③調整する額が多額でない

Q3 給与支給日が休日の場合は、「一定期日払いの原則」があるので、前日に支払わなければなりませんか?


A3 支給日が休日のときの支給日は、前日でも翌日でも構いません

 賃金支払日が休日のときは、就業規則に基づいて支給日の繰り上げ、繰り下げをすることができます。
 ただし、本来の賃金支払日が毎月末日の場合で、支払日が休日となってしまった場合、翌月1日に支払うことは、その月に払ったことにならず、毎月払いの原則に違反することになります。
 なお、賞与や退職金は、毎月払いの原則ならびに一定期日払いの原則の例外が認められています。


※本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2012年6月に掲載したものです


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 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』(以上、成美堂出版)など。


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