jin-jour(ジンジュール) |人材育成、リーダーシップ、モチベーション、メンタルヘルス対策など 人事の視点から、働く人と会社の関係を元気にする情報を発信

ログイン
MENU

メニュー

×

新任担当者のための労働法セミナー [2013.03.26]

第11回 労働時間の把握

 

下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士



今回のクエスチョン

Q1 当社では、社員には出勤したら印鑑を押してもらっており、タイムカードを使っていません。
 また、残業が必要な場合は所定の申請書で従業員から事前に申請することとしており、申請がなければ定時で帰宅したものとしています。中には、残業をしても申請をしない労働者がいますが、本人も納得して申請していないものと考えています。このような方法で問題ないでしょうか?


A1 使用者には、労働者の労働時間を把握する義務があります


 使用者には、労働者の労働日ごとの始業時刻、終業時刻を確認し、記録する義務があります。その方法は必ずしもタイムカードによる必要はありませんが、出勤したかどうかだけを確認する現在の方法には問題があります。
 また、自己申告制を導入する場合の要件の一つとして、「自己申告制により把握した時間が実際の労働時間と合致しているかどうかを実態調査すること」というものがあります。もし、居残りの時間と自己申告により出された時間が合致しないのであれば、申告しない理由を調査し、合致させておく必要があります。

【解説】

■使用者には労働時間を把握する義務がある(平13.4.6基発339)

 自己申告制で時間外労働の時間を把握している会社が、時間外手当の不払いをめぐる裁判で、記録した時間を否定され、割増賃金の不足額の支払い命令を受けるケースが増えています。
 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平13.4.6基発339、『労政時報』第3494号-01.6.8参照)には、労働時間の把握方法や、自己申告制を導入する場合の具体的な要件が明記されています。
 自己申告制を導入している会社は、不払い残業の問題を招かないためにも、従業員の健康管理の面からも、自己申告制の要件を理解したうえで適正に運用しなければなりません。

◆「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平13.4.6基発339)の概要
1.原則:労働日ごとの始業・終業時刻を記録すること
2.原則的な方法(次のいずれかによる)
  ①使用者が現認し、記録する
  ②タイムカード、ICカード等の客観的な方法で記録する
3.自己申告制による場合、次の措置を講ずること
  ①労働者に自己申告制を行うことについて十分な説明をすること
  ②自己申告制により把握した時間が実際の労働時間と合致しているかどうかを必要に応じて実態調査すること
  ③適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数に上限を設けたりしないこと。また、社内通達や割増賃金の定額払いなどが申告するうえで阻害要因となっていないかを確認すること


■労働時間を適正に把握しないことが賃金不払いの原因になる

 毎年、全国の労働基準監督署では、労働条件等に関する法令違反の把握・是正を図るために行う定期監督等の結果を取りまとめて公表しています。東京労働局が2011年5月に公表した「平成22年の定期監督等の実施結果」によると、定期監督を行った事業場のうち法令違反が指摘されたところは7割に上りました。その中でも、労働時間に関する違反が最も多く、違反件数の3割を占めています[図表1]

 また、労働者からの申告(労働基準監督署への法違反事実の通告)についても、賃金不払いに関する件数が最も多く、8割以上を占めています(東京労働局 2011年3月2日発表)[図表2]

 このように、労働時間や賃金不払いに関する法違反についての労働者からの申告が、問題になることが多いのですが、筆者の経験では、タイムカードの打刻時間と各自が申告する時間外実績との間に乖離(かいり)があるケースが多いと感じています。それが結果として賃金不払いや割増賃金不払いになっていると考えられます
 先の通達によると、「自己申告制で把握した時間と実際の労働時間が合致しているかどうかを実態調査」することとされています。
 タイムカードを使っている会社は打刻時間と申告された時間に乖離はないか、タイムカードを用いず自己申告制で運用される場合は、管理者や従業員に対する実態調査などを通じて、各自の申告内容と労働実態が乖離していないか、ときどきチェックしておく必要があるでしょう。


《復習&応用問題》

Q2 労働時間把握の対象となる労働者を教えてください。


A2 管理監督者、みなし労働時間制適用者を除くすべての労働者です

 管理監督者、みなし労働時間制適用者を除くすべての労働者が対象です。ただし、除外される労働者についても、健康確保の責務が免れるわけではありませんので、過重労働とならないよう労働時間管理をしなければなりません。

Q3 把握した労働時間に関する書類は、いつまで保存すればいいでしょうか? 

 
A3 労働基準法第109条により、3年間保存することが義務づけられています

 

※本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2012年2月に掲載したものです


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

●人事・総務担当者なら知っておきたい、よくあるケース・実務のポイントを123問のQ&A形式で解説!

●労働時間、解雇、賃金など、問題となりがちな項目について、労働基準法の定め・取り扱い等を図解入りで解説

 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

書籍の詳細、内容見本の閲覧、ご注文はこちらをクリックしてください

下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』(以上、成美堂出版)など。
http://www.improve1998.com/


管理職のeラーニング講座、お試しできます

無料トライアル受付中

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

ログイン

×

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品