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名言、故事成語に学ぶ人材マネジメントの本質 [2012.11.14]

第3回「習うより慣れろ」「鉄は熱いうちに打て」~社員教育に失敗しないためのポイント


名言、故事成語に学ぶ人材マネジメントの本質(3)
太期健三郎 だいごけんざぶろう
(ワークデザイン研究所 代表)

 名言、ことわざには「教育」「育成」に関するものがいくつもあります。今回は「鉄は熱いうちに打て」「習うより慣れろ」「やってみて、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かず」などの言葉から、社員教育のポイントについて考えてみましょう。

■社員教育、人材育成の実態

 まずはじめに、「2010年度能力開発基本調査」(厚生労働省)から企業が抱えている人材育成の課題を見てみましょう。

[図表1]人材育成の課題

  7割弱の企業が人材育成について何らかの問題がある、と回答しています。問題点の内訳(原因)を見ると、コンサルティングの現場でクライアント企業が悩まれていることばかりです。読者の皆さんの会社でも同様の悩みを抱えているのではないでしょうか。

■社員教育は早期に行うほど効果は高い

 クライアント企業の担当者と話をしていると「うちは即戦力を期待している。入社後の研修など行わず、現場での実践を通して育ってもらう」というような声を聞くことがあります。
 しかし「最初に仕事の基本やポイントを教えることなく実践の場で育つのを待つ」というのは、泳げない子供をプールに放り込んで「上手に泳げるようになれ」と言っているのと同じです。
 私の息子(小学生)はスイミングスクールに通っていますが、スイミングスクールでは最初に泳ぎ方の基本(泳法、フォーム)、息継ぎなどの注意すべきポイントなどを繰り返し教えます。その後、泳げる距離を長くしていったり、スピードを高めたりするトレーニングを続けます。基本を正しく習得しているかどうかで、半年後、1年後の成長は大きな差となって現れるでしょう。

 水泳のレッスンと同様に、社員教育も基本を早期に教え込むほど、その後の成長度合いを高めます。
 逆に、基本をマスターしないまま実践を続けると変なクセや習慣が身についてしまい、それを後から直すことは難しくなります。特に新入社員(新卒でも中途採用でも)は、変なクセが付く前のまっさらな状態の時に基本を教えるべきです。
 「鉄は熱いうちに打て」と言いますが「社員は早いうちに教育すべし」ですね。

※「鉄は熱いうちに打て」:鉄は真っ赤に焼けているのを叩いて整えるもので、冷めてからでは整えられない。そこから転じて、教育、しつけは純真な精神を持っているうちに行うべきであるというたとえ。「物事は好機を逃さず実行するべきである」というたとえにも使われる。

■OFF-JTとOJTのバランス、有機的運用

 社員教育の方法には大きく分類して、OJT、OFF-JTがあります。
 OJTとは、On the Job Trainingの略で、職場内訓練のことを言います。日常業務を通じて、現場で知識、スキルを意図的、計画的、かつ継続的に組織で教育することです。
 OFF-JTとは、Off the Job Trainingの略で、職場外訓練のことを言います。日常業務や職場を離れて、集合研修、セミナーなどで知識、技術の理論を系統立てて習得させることです。
 「習うより慣れろ」という言葉があります。「物事は人に教わったり本で学んだりするより、実際にやってみて慣れた方が身につく」という意味のことわざです。
 この言葉は、「習う(OFF-JT)」が不要と言っているわけではありません。「知識だけの頭でっかちではダメで、実践を重ねて習得することが必要」ということで、「理論」と「実践」を比較した重要さを言っているのでしょう。私は「習うだけでなく慣れろ」と読み替えたいと思います。企業でも「OFF-JT」と「OJT」をバランスよく連動させて行うことが大切です。

■人を動かせ、育てるには?~OJTの本質

 次はOJTについて考えていきましょう。『やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ』という言葉があります。海軍大将・連合艦隊司令長官の山本五十六(やまもと いそろく、1884-1943)の言葉です。
 この言葉は、仕事を教える時によく引き合いに出されるので、一度は聞いたことがあると思います。
 この言葉を分解してみると、『やってみせ(手本を見せて)、言って聞かせて(理論を教え)、させてみて(実践させて)、褒める(できたら褒めてやる気を高める)ことで、人は育ち、働く』――というように、教える側が果たすべき役割は非常に多岐にわたることが分かります。 
 これは、OJTの本質を表している言葉です。教える側がよく考えて、手順を踏んで計画的に習得させることの必要性を端的に表しています。途中までは行っていても、最後の「褒める」を実践できている人は少ないのではないでしょうか。

 実際に、自社のOJTが有効に機能していると自信を持って答えられる担当者は、それほど多くないと思います。
 下の二つのグラフは「経済危機下の人材開発に関する調査」(産業能率大学総合研究所が2010年に実施)によるものです。「計画的OJTの実施状況」と「計画的OJTの機能の状況」についての設問です。OJTの実態を示しているのではないでしょうか。

[図表2]新卒・中途採用者に対する計画的OJTの実施状況

 計画的OJTの実施状況は「新卒採用者で86.9%、中途採用者で42.9%」となっています。しかし、計画的OJTを実施している企業の中で、35.6%がOJTは機能していない(「どちらかといえば機能していない」と「機能していない」の合計)と答えています。

[図表3]計画的OJTの機能状況

 機能していない理由を見ると、教える側と教わる側双方の意識、スキルの問題に関するものが並んでいますが、OJTを現場任せにしている様子が伺えます。教えるべきことが明確でなく、教える能力が低いからOJTが機能していないというのは、カリキュラムが明確でない状態で、教える訓練を受けていない教師が生徒を教えている学校――ということと同じです。そのような学校に行きたいと思う人も、子供を通わせたいと思う人もいないでしょう。学校全体や行政のレベルで、育成カリキュラムを整備し、教師に適正な訓練を施すなど、学習環境を整備することが必要不可欠です。
 企業においても同じことが言えます。自社のOJTを機能させるには、社内の人材マネジメントを統括する人事部門が、教えるべき内容、教え方などを示しながら、現場をサポートすることが必要です。

 OJTという名の下に「現場丸投げの育成」とならないように、人事部門と現場が二人三脚で社員教育を行ってください。

■まとめ

 「鉄は熱いうちに打て」「習うより慣れろ」「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」などの言葉には社員教育のために人事パーソンが学ぶべきエッセンスが詰まっています。
 今回のコラムのポイントを整理してみましょう。

「鉄は熱いうちに打て」
「習うより慣れろ」
「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」

1.社員教育は早期に行うほど効果は高い

2.「OFF-JT(理論)」と「OJT(実践)」はバランスよく連動させて行う

3.OJTを機能させるためには、現場任せにせず人事部門のサポートが必要である

太期健三郎(だいごけんざぶろう)profile
1969生まれ。神奈川県横浜市出身。人事コンサルタント/ビジネス書作家。三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスを経て、ワークデザイン研究所代表に就任。コンサルタントおよび現場実務の両者の立場で一貫して人材マネジメントとキャリアデザインに取り組む。主著『ビジネス思考が身につく本』(明日香出版社)。
ワークデザイン研究所のホームページ http://work-d.org/
ワークデザイン研究所代表のブログ http://blog.livedoor.jp/worklabo/


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