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育成担当者のための 今月の注目トピック [2013.09.04]

第18回(完) 演じて気づく、演じて学ぶ「プレイバック・シアター」

 


中川繁勝  なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー


 今回は、最近にわかに注目を集めている「プレイバック・シアター」にスポットライトを当ててみます。お話を伺ったのはプレイバック・シアターの第一線で活躍されており、その普及活動にも尽力しているNPO法人プレイバック・シアターらしんばん(http://playbacktheatre.jp/index.html)の理事長、羽地朝和(はねじ ともかず)さんです。

[注]プレイバック・シアター: 1970年代に米国のジョナサン・フォックスによって考案された“対話と分かち合いのための即興劇”。コンダクター(指揮者)によって進行され、目的やその場の状況に合わせて①ワークショップ(参加者全員があるときは語り手となり、あるときは表現者となる)、②パフォーマンス(ある程度トレーニングを積んだパフォーマーが参加者の中から語り手を募る)――という二通りの方法で行われる。学校教育や医療・福祉領域のほか、メンタルヘルスやコミュニケーションの活性化を目的とする企業研修として幅広く活用される。

●プレイバック・シアターとは?

――ズバリお伺いします。プレイバック・シアターを一言で言うと?

 「人と人とのつながりを育む場」です。
 プレイバック・シアターとは、誰かの経験や思い出のストーリーを聞き、それを本人以外の別の人が演じてみせる即興演劇です。演じる人は語り手が語る言葉に耳を傾け、時に遊び心や想像力をもって語り手の気持ちや経験を演技で表現するのです。
 私たちは誰しも人生の記憶、思い出を持っています。しかし日々の生活の中で、それらは心の片隅に埋もれてしまっているかも知れません。自分自身を振り返り、自分の人生の一場面を劇として取り出してみることは、自分自身やその場にかかわっている人たちを客観的に見つめ直し、そこで思いがけない気持ちに出会うことができるかも知れません。そんなことを経験するのがプレイバック・シアターです。
 その中で、かかわった仲間同士が対話したり、気持ちに共感したりする場が、人と人とのつながりにいい効果を生み出していくと考えています。

――演じるというのはハードルが高そうな気がしますが、普通の会社員にも取り組めるのでしょうか。

 企業研修等のプレイバック・シアターに慣れていない人たちを対象に行う時には、演じるためのウォーミングアップをじっくりと行い、皆さんが自主的に演じられるように場を整えてからストーリー(劇)を行っています。特に「自己表現力を高める」「対人感受性を高める」「創造性の開発」「未知のことにチャレンジする」「チームワークづくり」といった狙いでプレイバック・シアターを行う時は、演じる体験が役立つので、アクティング(演技)のエクササイズに多くの時間を費やします。

――いま「狙い」という言葉が出ましたが、プレイバック・シアターとは何を目的にどういうことをするものと考えたらいいでしょう?

 プレイバック・シアターは汎用(はんよう)性が高く、その適用範囲はとても広いと私は思っています。例えば、企業研修、治療現場、エンターテインメントなど、いろいろ考えられます。総じて言えるのは、人のストーリーを聞き、即興演技をすることを通して「言葉と感情でお互いの考えや想(おも)いを分かち合う」ということです。

 例えば、企業向けのリーダーシップ研修での適用を考えてみましょう。ここではプレイバック・シアターを通じて、一人ひとりの根っこを掘る、ということをします。その人のリーダーシップの根本的なものはどこにあるのか、何に基づいているのか。それを探るのです。そうすることで、普段は無意識に隠してしまっている“自分がリーダーシップを発揮する上での強み・弱みや課題”が、ストーリーを掘り下げるプロセスの中に出てくるんです。演じる人の演技の中にも出てきます。話を聞いて演じる人は特に質問をすることなく、ただ語り手がコンダクターに誘われて話した言葉だけを頼りに演じます。ここで演者に共感が生まれることもありますし、それを演じているのを見た語り手がハッと新たな発見をすることもあります。そうやって自分の根っこの大事な部分、すなわちリーダーとしての基軸みたいなものに気づいたりするわけです。自分のリーダーシップが何に根付いているのか、何を大事にしていきたいのか。良くも悪くも自分の持っている判断基準や軸と言ったものが明確になるわけです。そこから改善やあるべき姿の創出へとつなげることができます。

 治療現場においては、例えば自己肯定感や他者肯定感の低い精神科の患者さんなどを対象に行います。自分はダメだ、愛されてない、信じられないといった気持ちを持っている皆さんがプレイバック・シアターで自分のストーリーを語ります。語ることによって癒やされるという効果もありますし、演じてみて、またストーリーを見てみて気づくこともあるわけです。

 エンターテインメントでは、単純に喜びや楽しみの分かち合いですね。それによってチームの雰囲気を高めたり、さらに仲良くなったり。純粋にみんなで即興演劇を楽しんでいただくという面もあります。

●企業での活用

――最近は企業でも研修に導入していると聞きます。先ほどリーダーシップ研修での話はありましたが、それ以外にプレイバック・シアターは企業内でどのように活用されているのでしょうか。

 ある化粧品メーカーA社のトップアーティストたちの研修をご紹介しましょう。A社のメーキャップアーティストや美容部員のトップを育成する1年間のコースの最終プログラムで実施します。マスコミや雑誌に登場するような、会社を代表するカリスマ社員を育成することが目的で、プレイバック・シアターを通して、本当の自分の魅力を見つけるために一人ひとりのストーリー(生きざま)を掘り下げます。なぜプレイバック・シアターなのか、不思議な感じがしますよね。でも、彼女たちは普段いかに人を美しくかつ良く見せるか、あるいは自分をいかに良く見せるかということに傾倒した仕事をしているわけです。化粧は人を飾るわけですからね。そんな中でいいメーキャップアーティストになり、生き残れる人というのは、自分の欠点を出し、それを魅力に変えられる人たちです。自分の欠点を魅力として再定義することができるかどうか。ここがメーキャップアーティストの成長に必要なことなんだそうです。それをプレイバック・シアターでお手伝いします。

 また、ある技術系の会社の技術系役員の方々に対して「将来の創造的ビジョンづくり」のプロジェクトの一環で行ったプレイバック・シアターも強く印象に残っています。現在の延長線上の発想やリスクを避ける思考パターンからなかなか抜け出せずにいた皆さんが、会社創業期の何もないゼロから世にないものを生み出そうとがむしゃらに取り組んでいた頃のストーリーを語り合い、劇で分かち合ううちに、発想だけでなく、役員相互のかかわりも変化してきて、プロジェクトチームの雰囲気もずいぶんと変わったように感じました。なかなか興味深かったですよ。

 最近は、お客様満足のための対人能力、接遇やマナーといった身近なテーマで行うことが増えています。これもつながらない感じがしますが、自分たちのうれしかった体験、嫌な思いをした体験を語り、ストーリーとして演じることで当事者の思いに共感したり、サービスする側の行動を客観的に観察したりすることができます。研修でただ知識を教えるだけではなくて、感情に触れて分かち合うことで、自分の中に深く刺さるものがあるわけですね。そうすると、接遇やマナーでの所作の意味や必要性の理解が促されるというわけです。

――なるほど、汎用性は高そうですね。いろいろ使えそうな気がしてきましたが、他の方法ではなく「プレイバック・シアターならでは」の研修効果をまとめるとどうなりますでしょうか?

 まずは座学や一般の演習では体験できない“リアルな経験”が演じることを通じてできるので、生き方にも影響するような深い気づきが得られます。また、即興で演じるという未知のことに全員で取り組むので、チャレンジ精神と相互のつながりが強化され、創造的チームビルディングができます。ですから、プロジェクトチームのキックオフにプレイバック・シアターを行って、メンバーの相互理解と未知のことにチャレンジできるチームの風土をつくることもできます。

――プレイバック・シアターを進める人を「コンダクター」(指揮者)と呼ぶそうですね。この役割はいわゆる研修講師とは違うようですが、どんな特徴がありますか?

 コンダクターは大きく二つの役割を担っています。一つは、集団全体を見て受容的で創造的な場を創り出すファシリテーターとしての役割です。二つ目に、ストーリーを聴いてそれを掘り下げたり発展させたりして、みんなで創造的な作品を生み出すアーティストとしての役割です。
 前者はまさに場を活性化させるファシリテーターと言っていいでしょう。後者は芸術的でありカウンセリング的でもあります。このファシリテーション、アート、カウンセリングの感覚を研ぎすませて進めています。コツとしては、その場で起きていることに自分の感覚を開くこと、そして参加者の力を信じることです。

――誰でも簡単にコンダクターができるわけではなさそうですね。

 例えば、写真をとる、絵を描く、といった行為は誰でもできますが、プロとして極(きわ)めるには日々の研鑽(けんさん)とトレーニングが必要です。それと同じようにコンダクターも、安全で深く、そして創造的な場をつくるためにはしっかりとしたトレーニングが必要です。コンダクターとしてのスキルを身につけ、自分のプレイバック・シアターをつくってもらうために、私は2年間のプログラム「プレイバック・シアター実践リーダー養成プロジェクト」を提供しています。

――最後に、プレイバック・シアターを体験してみたい、という人材育成担当の方へ、アドバイスをお願いします。

 プレイバック・シアターは、語るのもよし、演じるのもよし、ただ見ているのもよし、です。自分の好きなように、まずは楽しんで参加してください。そしてプレイバックをもっと活用してください。
 私は、日本の皆さんにもっと将来の夢を持って語り合って、チャレンジできる人になってもらいたいと考えています。最近、韓国やミャンマーを訪問しました。
彼らは元気があるしエネルギーが高いんです。アジアの諸外国に比べて元気がない日本を痛感しました。日本人をもっと元気にしていきましょう!


※本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2012年10月に掲載したものです 

中川繁勝中川繁勝 なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー

システムエンジニア、ネットワーク技術者養成のマーケティングを経て、ITコンサルティング会社の人財開発マネジャーとしてITコンサルタントの育成に従事した後、独立。現在は、論理と人の感情の両面にアプローチした思考系およびプレゼンテーション等のコミュニケーションを中心とした研修の企画・制作をし講師を務めるとともに、人財育成を支援するためのコンサルティングサービスも提供している。NPO法人人材育成マネジメント研究会理事。ワールド・カフェをはじめとした対話の場の普及を促進するダイナミクス・オブ・ダイアログLLPのパートナーとして、各種ワールド・カフェとワールド・カフェ・ウィークの開催を推進。また、場活流チェンジリーダー塾にてメンターとしてリーダーの在り方を養成する活動にも従事する。


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