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育成担当者のための 今月の注目トピック [2013.08.07]

第17回 未来を創る人材育成 ~イノベーションに向かって~

 


中川繁勝  なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー


 今回は前回に引き続き、ASTD Global Network Japan(以下ASTD Japan)理事で事務局長の浦山昌志氏にお話を伺った。浦山氏は技術者教育を強みにする人材育成企業 株式会社IPイノベーションズの代表取締役でもある。テクノロジーはもちろんEラーニングにも深い見識をもつ浦山氏に、人材育成にテクノロジーを導入する際のポイントについて貴重な意見を伺うことができた。

●人材育成部門が未来を創る

 ――浦山さんは技術系の教育会社を経営されていますよね。その観点からASTDで感じ取れたことはなんでしょうか?

 昨年、シンガポールで開催されたSTADA(Singapore Training and Development Association)という国際会議、さらにTech Knowledgeという米国西海岸で開催されたASTD関連のイベントに参加してきました。加えて先日のASTD 国際会議(ASTD International Conference & Exposition、2012年5月6~9日開催)に参加しました。
[編注]本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2012年9月に掲載した
    内容を再掲してご紹介しています。イベント開催時期等は初回掲載時のものです。


 この1年、これらに参加して感じたことは、「どうしたら人材育成が“イノベーション”に貢献できるか」ということです。HRD(人材開発)部門がどうしたらイノベーションにつながる教育が提供できるか。イノベーションを起こす人材育成ができるか、というテーマです。
 印象的だった言葉があります。それは「人材育成部門が未来を創る」ということでした。人材育成を通して人が変わり組織が変わり、会社が変わっていきます。私たち人材育成に関わる者たちは、人を通して未来の会社の創造に関わっているんだ、ということです。ただ単に研修を提供しているだけではなく、会社の未来を創る重要な部門であるということを意識するべきだと感じました。

●「Think mobile」

 ――進化しつつあるITをどのように人材育成に使ったらいいのでしょうか。その辺りの方向性は何かつかんでいらっしゃいますか?

 いくつかの講演の中でASTD会長のトニー・ビンガム氏が「Think mobile」という言葉を使っていました。まずモバイルでどうするか考えよ、と。教育をやろうと思ったら、まず「Think mobile」だと。

 ――まずITでどうするか考えよ。しかもモバイルツールでの活用を考えよ、ということですか。確かに今は技術の進歩によってモバイル機器でEラーニングをすることも可能になってきていますね。

 ただし、今までのEラーニングとはちょっと違った使い方なんです。
 Facebook社のHRマネジャーは、「リアルタイムフィードバック」の重要性を説いていました。自分たちが仕事をしている中で、新しいアイデアが浮かんだり、「なんだろう?」とか「これいいな」と思ったら、すぐにFacebookに書け、と。私たちは普段仕事をしながら、そんなことをたくさん考えているんですね。
 ところが、それを放っておけばそのまま忘れてしまったり、邪魔が入って思考が流れてしまったりする。ところが頭に浮かんだ時にすぐFacebook上で自分のウォールの記事として記録しておけば、そこに考えが残るだけでなく、組織も時間も場所も越えてコミュニケーションをするきっかけになります。すると、「それならこうしたらいいよ」「こういうアイデアを加えたらもっと面白くならない?」というリアクションがあり、そこに「コラボレーション」が生まれるわけです。

 ――面白いですね。研修という時間と場所の限られた学びの場だけでなく、日常の業務の中で学び・気づきとさらにはコラボレーションまで生んでしまおうというわけですね。

 そうです。今はブラウザもSNSもモバイル機器もある。オンラインでリアルタイムフィードバックができる環境は整っているんですよね。1週間後になってから週報を書いたり、数日後のミーティングで共有したりするのでは既に遅い。思考の旬を逃してしまいます。感じた時に想いや考えを共有し、リアルタイムに周りがフィードバックする。まるですぐそばでおしゃべりしているように。リアルなおしゃべりの中にはそういうことってありますよね。話が勢いづいて突拍子もないいいアイデアが浮かぶような。オンラインでもそういうやりとりがあれば意見交換のスピードも上がり、「明日から変更しよう」「すぐに取りかかろう」という動きにもつながっていきます。

 ――ということは、「Think mobile」というのは教育のシステムだけの話だけではなくて、仕事におけるコミュニケーションをどう変えていくかというレベルの話になりますね。

●コラボレーション、その成功の鍵

 環境を整えることはそう難しいことではないのですが、問題はそれを使う人の考え方なんですよ。自分の知恵やアイデアを共有しようという時に、「なぜ自分が苦労して見つけた手法をあいつに教えてやらなきゃならないんだ」「自分が知らないということを人に知られるのが嫌だ」という考え方があるとコラボレーションの文化が生まれないんです。逆に考えると、ITの活用のみならず、成功する企業・組織のポイントというのは「Culture of collaboration(共創の文化/協働の文化)」をもつ組織が勝ち抜いていくのだろうと思うんです。
 例えば、営業力を上げるために一人ひとりのセールススキルを上げるというトレーニングは大事だと考えられています。しかし徐々にそういう時代は終わりに向かっているのではないでしょうか。これからは、一人の営業マンが提案書を書く時に、分からないことや悩みがあればそれを社内のSNS等に吐き出し、自社が出すソリューションとして提案書にどうまとめるのかを他の営業マンが寄ってたかって協力するんです。そのほうが組織としての営業力は上がっていきます。お互いがお互いの知恵や情報を提供し合って協力するんです。そのプロセスの中で新しいことを学ぶ人も出てくるでしょう。そしてそれは営業だけでなく、部門や専門性を越えて行われる必要があるでしょう。それが「Culture of collaboration」なんです。

 ――それはいいですね。一人ひとりの気持ちが変わればできそうな気がします。日本人にはそういった助け合いの気質が昔から備わっているようにも感じます。

 ところが、それを邪魔する仕組みが会社組織には存在するんです。それは「報奨」という仕組みです。自分の知恵や情報を他者に提供することで、その相手の成績が上がるわけですが、それによってその人が社内で高く評価されていくとします。そうなると協力をした人が損をすることにもなる。嫉妬や妬(ねた)みといった感情が生まれると、下手に助けずに自分の手柄につなげたほうが得になる。そうやってコラボレーションが阻害されてしまうんです。
 ですから、ただSNSを導入すればいいということではないんです。そのようなシステムを導入しただけでは機能しない、という発表はASTDでも数多く発表されています。

 ――既存の組織の仕組みが、イノベーションにつながるコラボレーションのための仕組みの働きを阻害してしまう、と。何かいい手はあるのでしょうか。

 そのためには、報奨の仕組みを変えることも必要なのですが、イノベーションのためのコラボレーションの文化を創ることが重要だと思っています。
 企業が力をつけていくためには、単に一人ひとりのスキルを上げればいいという時代は終わりつつあり、組織単位や企業単位で相互に助け合い、より高い成果を作り出そうという、コラボレーションできる環境が必要なんです。それをさまざまな場で感じました。それが一番強く感じたメッセージでした。

●文化を創る仕事を

 トニー・ビンガム氏はSTADAでもTech Knowledgeの講演でも同様の話をしていました。Culture of innovation、Culture of collaboration、Culture of collaborative learning, collaborative service(イノベーションの文化、共創の文化、共に学習し、共に奉仕する文化)――などさまざまな表現で。
 私たちは、いかにしてコラボレーションのできる組織文化を創るか、どうしたらそういう働き方ができるかを、より高いプライオリティで考える必要があるんじゃないでしょうか。コラボレーションのできる文化をいかに早く創るかが今後の企業が優劣を決するポイントになってくると思いますし、人材育成部門はそこにアプローチする必要があるということを彼はアピールしていました。

 ――ただ、そこまでいくと人材育成担当の人の中には「あぁ、もうこれは自分の仕事ではないな」「自分の役割を越えているな」と考えてしまう人もいるんじゃないでしょうか。話が研修だけのことではなくなっているから。

 その捉え方は改める必要はありますね。
 「自分たちがこの会社を変えるんだ」「文化を創るんだ」と考えを変えてはどうでしょうか。スキル研修のファンクションだけに縛られて仕事をしているだけでは、いつまでもコストカットの対象になってしまいます。

●人材育成部門から始まるイノベーション

 コストセンター(非収益部門)から、価値を生み出すプロフィットセンター(収益部門)になる。イノベーションを生み出す企業になるために、まず人材育成部門がその働き方や機能に対する考え方を改善し、「現場を助けるために、経営を助けるために何ができるか」を考え行動し始める。そこからイノベーションが始まるように感じた。
 同時に、人材育成はスキル教育のみならず、職種を問わず、働く人の考え方の変革を促すことも必要だと強く感じられた。「For me(自分のために)」だけを考えるのではなく、「For us(自分たちのために)」や「For you(相手のために)」と考え行動することが、これからの人材育成部門には必要だ。より広い視点で“人作り”を考えていく必要があるのではないだろうか。

■株式会社IPイノベーションズhttp://www.ipii.co.jp/


※本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2012年9月に掲載したものです 

中川繁勝中川繁勝 なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー

システムエンジニア、ネットワーク技術者養成のマーケティングを経て、ITコンサルティング会社の人財開発マネジャーとしてITコンサルタントの育成に従事した後、独立。現在は、論理と人の感情の両面にアプローチした思考系およびプレゼンテーション等のコミュニケーションを中心とした研修の企画・制作をし講師を務めるとともに、人財育成を支援するためのコンサルティングサービスも提供している。NPO法人人材育成マネジメント研究会理事。ワールド・カフェをはじめとした対話の場の普及を促進するダイナミクス・オブ・ダイアログLLPのパートナーとして、各種ワールド・カフェとワールド・カフェ・ウィークの開催を推進。また、場活流チェンジリーダー塾にてメンターとしてリーダーの在り方を養成する活動にも従事する。


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