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育成担当者のための 今月の注目トピック [2013.07.11]

第16回 ASTD〜人材育成の世界的潮流を探るために〜

 


中川繁勝  なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー


 今回は視点をグローバルに向けてみたい。世界に目を向けてみれば、驚くほど多くの教育者や人材育成に関わる人々が、知恵とノウハウと研究結果をシェアしながら切磋琢磨(せっさたくま)していることが分かる。今回紹介するASTD(American  Society for Training and Development:米国人材開発機構)がまさにそれを体験できる場である。今回はASTD Global Network Japan(以下ASTD Japan)理事で事務局長の浦山昌志氏にお話を伺った。

●ASTDとは?

 ――ASTDと言えばASTD国際会議(ASTD International Conference & Exposition)が有名ですね。私も2008年のサンディエゴ大会に参加してきました。まずは簡単にご紹介いただけますか?

 ASTDは、1944年に設立された非営利団体です。米国ヴァージニア州に本部を置き、世界約100カ国以上に約4万人の会員を持つ、人材開発に関する世界最大の会員制組織です。ASTDでは、人材開発、組織開発の分野で、カンファレンスやセミナーの開催、出版、資格認定などを大規模に行っています。ASTD国際会議は今年で59回目の開催を数え、人的資源開発に関する世界最大のカンファレンスおよび展示会として知られています。

 ――日本にも支部があるんですよね? 米国では大きな展示会とカンファレンスを開催していますが、いま日本国内ではHRD Japan(主催:日本能率協会)、ヒューマンキャピタル(主催:日経BP社)やHRサミット(主催:HRプロ株式会社)が同様の大規模なイベントを開催しています。このような状況の中で、ASTD Japanとしてはどのような位置づけで活動していかれるのですか?

 ASTD Japanでは、米国と同様の大規模なイベントをするつもりはありません。おっしゃる通りすでに他の企業や団体が実施していますので、私たちはそういった団体とコラボレーションする形で関わっています。
 また、米国で開催されるASTD国際会議やその他の会議等で出された情報、そこから見える潮流を日本の皆さんにもっと紹介したいと思っています。そこには日本の皆さんがあまりご存じない「ASTDならでは」の情報もたくさん詰まっているのです。

 ――「日本発・世界向け」というような情報はないのでしょうか。

 もちろん、情報を輸入する一方で、日本の人材育成の良い事例をもっと世界に発信していきたいとも考えています。最近、世界の人材育成の流れは、機能主義、すなわち、一人ひとりの成果やスキルの質を追求するのではなく、もっと人間的かつ日本的な、数字では計れない要素への重要性が注目されつつあります。それは日本人が古くから当たり前にやってきていたことや考え方だったりするのです。ということは、世界が知りたい良い事例が日本にはたくさん存在するのだと思います。そういった事例をもっと世界に発信していきたい。
 私たちが世界の人材育成と日本の人材育成のつなぎ役になれればと考えています。

●ASTDならではの情報

 ――「ASTDならでは」の情報というのはどんなものなのでしょう?

 ASTDの歴史は約70年あります。世界中の企業、組織、大学や研究機関が関わっていますので、その時々の情報量が他と違います。IBM、Microsoft、Googleなど、その時代の話題の企業がどんな人材育成・組織開発に取り組んでいるのかも発表されています。それを網羅的かつ時間の経緯とともに見ていけることは「ASTDならでは」と言えるのではないでしょうか。
 さらには、教育の設計の仕方、提供の仕方、効果測定の仕方など、人材育成の網羅的な観点からのカテゴリーはどんな人材育成担当者にも気になる要素が含まれています。一つ一つの内容も長い時間をかけて事例を研究して体系化されてきています。米国はそういった体系化が上手です。そういった情報が米国、欧州をはじめとしてワールドワイドの視点で見ることができるのは「ASTDならでは」でしょう。
 ASTD国際会議での発表の機会は数倍の競争率を勝ち抜いてきた内容です。お金を払えば発表できるというわけではなく、営利的でもない。質を求められた上で厳選された情報でもあります。

 ――なるほど、発表される品質も確かだと言うことですね。確かに営利目的が絡む展示会ですと宣伝色が強かったり、企業発表でも内容の薄いものがあったりしてがっかりすることがあります。

●ASTDのメリットは?

 ――日本企業の人材育成担当者にとって、ASTDに関わるメリットは何でしょうか。

 いま日本企業がグローバル化しつつあります。これは今に始まったことではなく、日本企業は以前からどんどん海外に展開していました。しかし、いまや外国から労働者がどんどん日本企業の中に入ってきています。社内公用語が英語になることで国際色豊かな社員が社内にたくさんいる企業も現れていますね。グローバル化はこちらが出て行かなくても、向こうからやってくる時代になったというわけです。

 ――そういう意味では、日本人相手にだけ人材育成を考えていてはだめだと言うことですね。

 さらにイノベーションが求められています。同じような人種が集まっていると残念ながらイノベーションは生まれにくい。国籍や文化を交えれば視点も変わる。同じ目的は持ちつつも多様な価値観の元にさまざまな視点を持つ人々と共に考え、それをマネジメントしていくことが求められています。したがって、多様性を受容できる人材育成、多様なタレントをうまく育成していく人材育成が求められているのです。そういった事例はASTDの中にたくさんある。欧米諸国の国々ではすでに経験していることですから。そういう部分が日本の企業には役に立つのではないでしょうか。

 ――ASTDの内容は専門性の高いものも多い。

 そうですね。例えば、日本人のマネジャーが海外の現地法人に出て行った時に、現地で人材育成担当者を雇うとしましょう。雇われる諸外国の人材育成担当者は大抵その筋の専門家なんです。大学で教育学の学位を取っていたり、関連分野の学位を持っていることが多い。ですから、彼らの話す言葉や考え方が分からないマネジャーでは、彼らと話ができない。そこで、ASTDでは人材育成に関する認定プログラムを作って、人材育成に関する一定の知識を持ってもらう基準を用意しているのです。韓国をはじめとしたアジアの企業はどんどんそれを学び始めている。日本人は後れをとり始めていますよ。世界共通の人材育成のプラットフォーム、体系化された教育プログラムを受けることで、共通言語で世界中の人材育成関係者と会話ができるようになるのです。
 そういった底上げや触発をすることで、日本人の人材育成のモチベーションを上げていければいいのではないかと思っています。
 ASTDに関わって学ぶことによって、質の高い人材育成、研修等が提供できるようになる。世界レベルで通用するプロとなる最短距離を進むことができると考えています。

●ASTDは難しい組織?

 ――経験の浅い方々にはハードルが高いんじゃないでしょうか?

 そうなんです。実はハードルが高いんです(苦笑)。やはり英語というハードルがありますね。加えて、話されているレベルも高い。なんせ70年ほどの積み重ねがある世界ですから。ですので、いくつかのステップを踏んで関わっていただければいいと思っています。
 ASTDではエントリーレベルの担当者向けのステップが用意してあります。CPLP(Certified Professional in Learning and Performance)という資格がそれです。(http://www.astd.org/Certification
 CPLPは人材育成に関わる人たちが適切な知識と能力を持っていただくためのプログラムであり、またそういった力を持っていることを証明する資格です。いま、CPLPの日本語化にも取り組もうとしています。

 ASTD Japanとしては、それ以外にも日本語での研究・発表などもしています。委員会活動としてリーダーシップや組織開発などの研究の場を用意しています。そういったものをステップにしていただいて、より深く人材育成を知っていただき、積極的にASTD国際会議に参加してもらうといいでしょう。
 
 ASTD国際会議に行く日本のツアーの中には、事前に、あるいは現地にて日本語のセッションを別途設けてくれているものもありますから、英語に自信がない方でも価値ある機会になると思います。

 ――英語のハードルについてはどうですか? 人材育成の方々向けの英語講座があったらいいようにも思いますが。個人的には私も参加したい(笑)。

 それはいいですね。それを中川さんがやったら儲かりますよ(笑)。
 ま、それは冗談ですけど、例えばCPLPの勉強を英語のままするだけでも、人材育成分野での英語力はかなりつくと思いますよ。背景も理解できますし、専門用語を単語レベルで知るだけでも理解力は上がりますね。

●人材育成のグローバル化、待ったなし!

 ASTD国際会議に参加して思ったのは、皆さんそれぞれに専門分野があったり、人材育成に真剣に向き合っているということだ。これまで私たちは日本という小さな世界で考えていたが、これからはどんな人種や文化の人たちとも同様に組織を作りチームワークを働かせて組織を動かしていかなくてはいけない。そうなると、人材育成の世界も「グローバル化、待ったなし!」という状況なのではないだろうか。
 グローバル人材育成を考えるのも結構だが、それと同時に、いかに自分たち人材育成担当者がグローバル化するかを考えておかないといけない時期に来ていると言えるだろう。私たちがボトルネックにならないためにも。

※本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2012年8月に掲載したものです

中川繁勝中川繁勝 なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー

システムエンジニア、ネットワーク技術者養成のマーケティングを経て、ITコンサルティング会社の人財開発マネジャーとしてITコンサルタントの育成に従事した後、独立。現在は、論理と人の感情の両面にアプローチした思考系およびプレゼンテーション等のコミュニケーションを中心とした研修の企画・制作をし講師を務めるとともに、人財育成を支援するためのコンサルティングサービスも提供している。NPO法人人材育成マネジメント研究会理事。ワールド・カフェをはじめとした対話の場の普及を促進するダイナミクス・オブ・ダイアログLLPのパートナーとして、各種ワールド・カフェとワールド・カフェ・ウィークの開催を推進。また、場活流チェンジリーダー塾にてメンターとしてリーダーの在り方を養成する活動にも従事する。


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