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育成担当者のための 今月の注目トピック [2013.06.24]

第15回 限られた時間とリソース、目標から成るシンプルなワーク~「マシュマロチャレンジ」

 


中川繁勝  なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー


 先日、知り合いの講師のDVD映像を見ていて、卒倒しそうになった台詞(せりふ)に出くわした。彼が研修の冒頭でこう言い放ったのだ。「今日は徹底的に座学です」と。受講者の視点でこのDVDを見ていた私は参った。ずっと話を聞いていなければならないという状況は子供のみならず大人にとってもつらいものだ。
 昔は確かに座学の研修も多かっただろう。私も20代の頃に受けた研修で座学だけのものがあった。受講者の中に不満やストレスがたまって噴出したのを記憶している。最近の研修は改善しつつあり、さまざまなワーク(演習)が取り入れられている。今回は「マシュマロチャレンジ」というワークを題材に、研修の在り方について検討してみたい。

●マシュマロチャレンジとは?

 まずマシュマロチャレンジについて簡単に説明しよう。
 マシュマロチャレンジとは、与えられたいくつかの道具を使って、できるだけ高い自立式の構造物を作り、そのてっぺんにマシュマロを置く、というワークのことだ。これを4人が一つのチームとなって進めていく。各チームには下記の道具が用意される。

 1.マシュマロ          1個
 2.スパゲティ(未調理の乾麺) 20本
 3.テープ           90 cm×1本
 4.麻ひも           90 cm×1本
 5.はさみ            1本

 制限時間は18分。通常は複数のチームで一斉に行っているようだ。
 このワークは数年前にピーター・スキルマンというデザイナーによってTED(Technology Entertainment Design:学術分野、ビジネスなどさまざまな領域の講演会を開催し、WEB配信を行う米国の非営利団体)で紹介され、さらに2010年に情報デザイナーのトム・ウージェックによって興味深い研究結果とともに紹介された。以後、日本国内においても活用されているワークである。

●マシュマロチャレンジをやってみた

 筆者も人材育成に携わる者として、このマシュマロチャレンジに挑戦してみた。私を加えた仲間8人とともに2チームを編成しての挑戦。一通りのルール説明の後、材料を配布し、スタート。
 さて、どうしたものか。マシュマロをどうやって上に置くのか。スパゲティや麻ひもをどのように使うと効果的なのか。スパゲティは折って使ってもいいし、麻ひもも切って使ってもかまわない。テープは固定したりつなげたりたりするときに使うのだろう。しかし長さは90 cmに限られている。どの程度の長さで使うのが適切なのだろうか。そんなことを考えているうちに時間は刻一刻と過ぎていき、チームメンバーはそれぞれ意見を言い合ったり手を動かしたりしている。「とりあえず」ということで何本かのスパゲティを使って形を作り、テープで固定してみたりしてようやく構造物の制作が始まった。始まってみると思っていたほど簡単ではないことが分かる。スパゲティは長くつなげればそれだけ「しなって」しまうし、マシュマロの重さでもしなってしまう。テーブル面にスパゲティを固定しようとしてもテープとスパゲティをどうくっつければ固定されるのか、試行錯誤を余儀なくされた。
 18分という時間はあっという間に過ぎてゆき、残り数十秒のアナウンス。そこそこの高さにすることができたものの、スパゲティがしなってしまうのでせっかくの高さが失われてしまう。苦肉の策で、ひもを使ってうまくバランスをとり、なんとかまっすぐにすることができた。とは言え不安定であることは否めない。高さ計測までもてばいいとの意見でメンバー納得したところでタイムオーバー。
 興味深いことに、2チームの構造物は形こそ違うものの、高さが全く同じ65 cmだった。

●マシュマロチャレンジをどう使うのか

 さて、このワークをどう使うのか。先述のトム・ウージェックはデザインワークの一つとして活用しているようだ。複数のメンバーで、どのように話し、どんなアイデアと創造性を駆使して目標を成し遂げるか、という目的設定だという。
 日本の活用事例を見てみると、分かりやすく「チームワーク」や「チームビルディング」を目的として掲げている。4人で一つのプロジェクトに向かうときにどのようにしたらいいのかを学ぶための取り組みだ。

●「素(す)の姿」を表出するワーク

 限られた時間とリソース、そして目標。それはまさに日常の仕事と置き換えることができるだろう。それをシンプルなワークに仕立てているのがこのマシュマロチャレンジだ。
 このようなワークの興味深いところは、その人の「素」の姿が現れるというところではないだろうか。うまくできてもできなくても、その18分間に何を考え、何を話し、何をしたのか――その姿の多くは仕事中のその人自身となる。このような限られた時間のワークで、かつ他チームとの競争意識を持たせると、研修であることを忘れ、いかに目標を達成するかということに熱中する受講者は多いようだ。すると、そのような状況でのいつもの自分が無意識に表出するのである。
 終了後にワークを振り返り、作戦を立て直して2回目の挑戦をする、ということも一つの学びにつながるが、私はむしろ、自分は何をしていたのか、チームはどんな状況になっていたのかを振り返り、チームワークやチームビルディングがどのようになされたのかを振り返ることのほうが学びは大きいと思う。

●いつもの自分を客観視することによる学びの深さ

 このワークを通じて、自らの素の表出を振り返ることにより、自分自身がどのようにチームに影響を与えているのか、チームメンバーとどのような関わりをもっているのかを客観的に見ることができる。このように、自らの思考、言動、行動の問題点に気づくことこそが、マシュマロチャレンジのようなワークの最大の活用方法ではないかと考える。
 言い換えれば、「どうしたらできるか」というhow to doではなく、「自分はどうあればいいのか」というhow to beを知ってもらう研修である。ワークの後に自分自身を振り返って考えてもらうことこそが、大きな学びにつながるのだ。その視点は間違いなく本人を成長させる。それこそがこういった研修ワークの活用の方向性ではないかと考える。
 なぜなら、現代人の多くの仕事はモノを相手に仕事をしているのではなく、人を相手にしているからだ。多くの仕事が人とのコミュニケーションをベースに成り立っており、関わる人は一人として同じではない。だとしたら、一つのhow to doを学んでも、人との関係性の中では活用はできないだろう。その場にある関係性を客観的に見つめる力こそが、現場に戻ったときにも使える再現性のあるスキルとなるのだ。

●自らを振り返るために

 世の中に面白い研修ワークはいろいろある。これからの人材育成担当者の皆さんには、一つのワークを通じて受講者が自らを振り返り、自らを磨き直し、他者との関係性に生かすという方向にワークを活用していただきたいと思う。ぜひ研修のプログラムにワークを組み込むときに留意していただきたい。「自らを客観的に振り返る」ということは、受講者が現場に戻っても使える考え方であり、一つのhow to doを覚えて帰るよりもずっと効果があるのだから。

 最後に、マシュマロチャレンジについてはTEDのトム・ウージェックの映像をご覧いただいてさらに理解を深めていただければと思う。
 TED 「トム・ウージェック:塔を建て、チームを作る」
 http://www.ted.com/talks/lang/ja/tom_wujec_build_a_tower.html

 
※本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2012年7月に掲載したものです

中川繁勝中川繁勝 なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー

システムエンジニア、ネットワーク技術者養成のマーケティングを経て、ITコンサルティング会社の人財開発マネジャーとしてITコンサルタントの育成に従事した後、独立。現在は、論理と人の感情の両面にアプローチした思考系およびプレゼンテーション等のコミュニケーションを中心とした研修の企画・制作をし講師を務めるとともに、人財育成を支援するためのコンサルティングサービスも提供している。NPO法人人材育成マネジメント研究会理事。ワールド・カフェをはじめとした対話の場の普及を促進するダイナミクス・オブ・ダイアログLLPのパートナーとして、各種ワールド・カフェとワールド・カフェ・ウィークの開催を推進。また、場活流チェンジリーダー塾にてメンターとしてリーダーの在り方を養成する活動にも従事する。


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