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目標管理制度を機能させるために必要な“目標への動機付け戦略”とは [2012.10.15]

第1回 目標へのモチベーションを向上させる戦略

 


野間健司 のま けんじ
学校法人産業能率大学総合研究所 主幹研究員 


 モチベーショントレーナー、組織変革コンサルタントの野間健司です。
 目標管理制度を機能させるために必要な“目標への動機付け戦略”について、今回と次回の2回に分けてご案内します。

●目標達成に意欲を感じられない社員が多い?

 目標管理制度において、あなたの組織の社員(職員)は、自分自身の目標に達成意欲(コミットメント)をどの程度感じているでしょうか?
 多くの経営者、人事担当者は、社員の目標に対するモチベーションは低いと言います。近年の国内市場の低迷も影響し、目標へのモチベーションがさらに低下しているという声がさらに高まっています。
 昨今、産業能率大学でも、目標の動機付けをテーマとした企業研修の依頼がますます増加しています。管理者のコミュニケーション能力、リーダーシップの低下もあり、上位方針をただ伝達するだけの管理者が多いという嘆きの声が、日々数多く寄せられます。
 それには理由があるのです。

●目標のモチベーションを向上させるためには何が必要か

 目標へのモチベーションが高まらない理由は何でしょうか。
 理由は簡単です。その目標に取り組む価値を感じられていないのです。
 人の行動は実にシンプルです。苦痛を避けて、快感を求めるというものです。

 ではどうしたら目標に取り組む価値を感じるのでしょうか。
 そのためには、人の欲求について理解する必要があります。

 目標達成によって自分の欲求を満たされないのであれば、誰も目標達成をしようとは思いません。
 目標は自身の欲求を満たしてくれるものでなければなりません。人の行動とは、常に何らかの欲求を満たすためのものです。

 ただし、この欲求は人によって異なります。安定の欲求を満たしたい人もいれば、つながりの欲求を満たしたい人もいます。自己重要感の欲求を満たしたい人もいます。自己成長の欲求を満たしたい人もいれば、貢献の欲求を満たしたい人もいます。

[図表1] 人の欲求の種類


 組織で重要なのは、”重要感“の欲求です。
 その目標を実現することで、自分の存在価値やプライドを感じることができ、周囲から注目され、褒賞されるものである必要があります。
 しかし、本当に深い部分で人を動機付けるのは、自己成長と貢献の欲求です。その目標達成を通じて自分が人間としてどう成長できるかが理解できれば、自己重要感の欲求以上の強い欲求が生まれます。
 心の最も深いところにあるのが、貢献の欲求です。自分の中の貢献の欲求に気付いていない人もいます。仕事で感謝されることがないという人もいます。お客さんに感謝され、自分が誰かの役に立てているというという実感を得るとき、自分の中にある強い貢献の欲求に気付くのです。

 目標は、社員一人ひとりが自分の欲求を理解し、自分自身で、その欲求を満たせるものにする必要があります。また管理者は部下の欲求を理解した上で目標を設定する必要があることは言うまでもありません。
 しかし、多くの組織はそこまで個人の欲求に踏み込んだ目標設定をしていません。
 だから社員のモチベーションが高まらないのです。

●目標達成のモチベーションを向上させるための二つの戦略

 目標のモチベーションを高めるためには、以下の二つの戦略が必要です。

 戦略1.組織目標へのコミットメントを高める
 戦略2.社員に自分でモチベーションを高められる内発的モチベーションのスキルを習得させる

 自己重要感、自己成長、貢献といった欲求を満たす個人目標にするためには、組織の目標自体が社員の欲求を満たせる目標でなければなりません
 個人目標の前提である組織目標にコミットできないとしたら、それをブレイクダウンした個人目標にコミットできないのは当然です。

 会社は管理者に対して、組織の方針、目標の背景を部下によく説明するように指示します。
しかし、その組織目標は、社内へ説明したときに、社員が情熱を感じられるようなものになっているでしょうか。
 経営者のみが情熱を感じるような(売り上げ)目標だけになっていませんか。
 ただやみくもに売り上げ、生産性を上げなさいといった、組織維持を目的とした、理念を持たない組織目標に、社員が情熱を感じるでしょうか。
 多くの企業でこんな声が聞かれます。「うち(自社)は経営方針が降りてこない」と。それは経営理念が明確でないということに他なりません。

 余談ですが、JALは今のところ、うまく再生が進んでいるようです。JALは経営危機に直面し、変化を強いられました。大切なのはそのやり方です。ただコストをカットして利益を上げるというやり方もあります。しかし昨今、JALの社員のモチベーションは向上し、機内のサービスも劇的に向上しています。いったいなぜでしょうか?
 それは経営者に理念があるからです。社員の心を魅了する経営理念があるからなのです。

 会社は経営理念を明確にしなければなりません。JALは、我が国を代表する企業の一つとして、卓越したサービスを遂行する使命を有しています。それにより社員も重要感を得られるでしょう。
 それを計るバロメーターが、感謝の対価である“利益”です。感謝と応援が利益という形になって示されるのです。利益が目的なのでなく、多くの感謝、感動を作り出すことが目的なのです。そのためにはお客さまに感動を与えられるような社員になる必要があり、そこに人としての成長があります。

 経営理念とは組織経営の背景にある価値観、信条、考え方のことです。これが社員の賛同を得られ、社員の心を動かすものでないと、そこから示される組織目標に情熱は感じられません。

 私は経営者だけを非難しているのではありません。組織運営をサポートする経営企画部門や、社員の動機付けを図る上で大きな役割を担う人事部門が、その役割の一端を担うべきです。
 「経営方針が降りてこないから何もできない」「自分たちの仕事ではない」といった防衛的なスタンスでは、社員の目標への動機付けは永遠に期待できないでしょう。

 もう一つの重要な戦略は、社員一人ひとりに対する動機付け(モチベーション)の戦略です。
 いまだに多くの組織は、外発的な動機付け(処遇、上司が褒める、叱るといったやり方)に頼り、内発的な動機付けにシフトできていません。
 真のモチベーションとは内発的なものです。自分自身のモチベーションは自分で高めなければならないし、それが正しい在り方です。上司に褒められたからがんばる人は、上司に叱られただけでやる気を失ってしまいます。それは真のモチベーションではないのです。

[図表2] 内発的なモチベーションとは


 組織が内発的なモチベーションにシフトするためには、社員一人ひとりがモチベーションを高める技術(セルフモチベーションのスキル)を習得することが必要になります。
 今、企業でセルフモチベーションのスキルトレーニングが急増しています。セルフモチベーションのスキルを学ぶトレーニングメソッド(TEDメソドロジー)はすでに確立されており、教育研修を通じて確実に習得できます。

 人事部門はモチベーションを経営や管理者任せにせず、モチベーションを高めるための具体的な取り組みに着手する必要があります。

●組織目標へのコミットメントを高めるための方法

 内発的モチベーションを高める方法は次回のテーマとし、今回は組織目標へのコミットメントを高めるための方法について、もう少し詳しく説明します。
 組織目標の在り方を見直すために、以下の方法をお勧めしています。

STEP1:経営理念の在り方を見直す(経営に働き掛けをする)
 あなたが人事担当者であれば、経営者に「経営理念を見直してほしい」という要請を一方的にしてもほとんど効果はないでしょう。
 多くの経営者にとって重要なのは、短期的な数字目標です。
 これを“短期目標型経営”といいます。われわれが目指したいのは正しい経営理念に基づく“長期ビジョン型経営”です。

[図表3]“長期ビジョン型経営”のイメージ



[図表4]“短期目標型経営“と“長期ビジョン型経営”の相違



 過去10年で経営の在り方は大きく変化を遂げてきました。JALもそうですが、経営の目的が、量的(売り上げ)拡大から、質的拡大へと変化しており、この変化は今後、さらに加速化します。
 質的拡大とは、突き詰めて言えば、企業活動を通じて組織員の精神の次元が向上することであり、それを実現する企業こそが社会から求められ、永続的な発展を遂げることができます。

 長期ビジョン型経営に転換する方法として、われわれがよく使う方法があります。
 それは理念に基づく経営をしている企業をベンチマークするという方法です。
 今日はありがたいことに、こういった企業の映像を購入して観ることができます。映像で実際の職場活動を目の当たりにすることで、経営者にも社員にも大きなインパクトを与えることができます。
 われわれも企業研修や役員会といった場面で、こうした企業の実際の映像を見てもらい、価値観の転換やイメージ作りを行っています。
 またこういった企業の中には、社会貢献の視点から、視察を受け入れている企業も多く、経営者や管理者が一緒に視察ツアーを組むのも非常に良い方法です。
 まずは、われわれがどのような価値観に基づき、長期的にどのような組織を作りたいのか、イメージを創り上げることが変革の第一歩です。

STEP2:組織目標の打ち出し方を再検討する
 われわれが目指す組織のイメージが明確になってきたら、それを組織目標にする必要があります。
 組織がどんな崇高な目標を目指すのか、それによって組織のモチベーションは大きく変わります。
 サービス業であれば顧客にどんな感動を創り出すのかを目標にしなければなりません。
 “クレーム10%低減”といった目標で、社員がプライドや情熱を感じるでしょうか。

 ここで重要なのは目標に対する正しい考え方です。
 多くの組織は目標の意味、目的を間違っています。
 組織目標を設定する際の原則として、以下の点をぜひ覚えておいてください。

【目標設定の原則1】基準を上げる(低い基準は“結果”も“情熱”も生み出さない)
 モチベーションが低い企業は、目標や行動の基準が低いのです。
 ビジネスでも人生でも、当初に設定した基準以上の結果は出ません
 顧客満足を目指せば、顧客満足は実現できません。もう一段上の顧客感動を目指すから、顧客満足を何とか実現できるのです。
 われわれの設定した基準が結果を作り出します。低い基準は情熱さえも生み出さないのです。

【目標設定の原則2】そこに向かう価値を感じられる目標にする
            (達成よりも向かう方向が重要である)
 目標とは目指すものであり、そこに向かうことに価値を感じられるものです。
 挑戦するものだから当然、達成できない場合もあります。チャレンジ目標と言っておきながら、必達というのは矛盾しているのです。
 絶対に達成しなければならない必達目標なら、計画とかコミットメントという表現にしましょう。実際にそのような名称にしている企業が少なくありません。
 目標は達成することが目的ではありません。目標をイメージしたときに、社員のハートにスイッチを入れるのが目的なのです。ディズニーランドは毎日、顧客に感動を与えるのが目標です。目標と聞いただけでモチベーションが落ちてしまう組織もあります。それで目標設定をする意味があるのでしょうか。

【目標設定の原則3】目標に向かって進むことで社員一人ひとりが人間的に成長できる目標にする
 目標に取り組む上で大切なのは、その目標に向かって行動することで、どんな組織になれるかです。
 社員一人ひとりがその目標に向けて行動することで、どんな自分になれるかが重要なのです。目標を立てる本当の目的は、ありたい組織、ありたい自分に近づくためなのです。
 
 以上の原則は、組織目標だけでなく、個人の目標設定においてもまったく同様です。
 目標管理制度でモチベーションが上げらないとしたら、目標管理制度と目標の意味が、本来のあるべき姿からずれてしまっているのです。

 次回は多くの企業で実際に成果を上げている、個人のモチベーションを高めるための具体的な方法についてご案内します。どうぞ楽しみにしてください。

 

野間 健司 のま けんじ
学校法人 産業能率大学 総合研究所 主幹研究員

延べ2000社以上の上場企業や官公庁、延べ10万人以上の指導実績があり、モチベーショントレーニングの実績は業界トップクラス。
現在は学校法人産業能率大学で、企業の研修、講演会を行うと同時に、カルチャースクール等での心理学講座やメンタルカウンセリングを行っている。
連絡先:NOMA_kenji@hj.sanno.ac.jp


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