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人事パーソンのための実践!ビジネスフレームワーク [2012.08.22]

第9回 “想定外”では済まされない~人事部門として取り組む必要最低限のリスクマネジメント

人事パーソンのための実践!ビジネスフレームワーク(第9回)
太期 健三郎 だいご けんざぶろう
ワークデザイン研究所 代表

 リスクマネジメント(危機管理)は、必要性は認識されていても、つい先延ばしにされがちな経営課題の一つです。東日本大震災では今まで想定していなかったさまざまな人事管理上のリスクがいくつも明らかになりました。また、今年4月に関越自動車道で発生した高速ツアーバスの大規模な事故(7人死亡、39人重軽傷)は、経営体質によるものが大きいですが、人事・労務のリスクマネジメントを適切に行っていれば防げたものと言われています。
 労働災害、雇用トラブル、パワーハラスメント、個人情報漏洩(ろうえい)など人事に関わるリスクは多岐にわたります。この機会に本コラムを読んで、自社の人事リスクマネジメントの取り組み状況をチェックしてみてください。

■リスクマネジメントとは?

 「リスクマネジメント」(危機管理)とは「リスク発生を予防し、万一発生した場合には被害を最小限に抑えるための一連の活動」です。
 「火災」を例に説明しましょう。
 リスクマネジメントの視点で「火災対策」を一言で述べるなら「火事は起こさない。起きてしまったらボヤで消し止める」です。
 リスクマネジメントの基本は予防(事前対応)です。しかし、発生を完全にゼロにすることはできませんから、万一発生した場合を想定し、被害の拡大、二次災害の発生を防ぐための対応を計画・準備をしなければなりません。発生後の対応は「時間との戦い」だからです。

 また、“リスクマネジメントなどはコストがかかるばかりで、目先の売り上げ、利益には直結しない”と考えてリスクマネジメントに消極的な経営者の方がいます。
 リスクが発生してしまった場合の損失&コストは、リスクマネジメントに要するコストに比べて膨大なものになります[図表1]

[図表1]「リスクマネジメントのコスト」と「リスク発生後の損失&コスト」の比較

 リスクマネジメントをおろそかにして、リスクが発生してしまったら、発生する損失と対応コストは利益を一掃してしまいます。それだけではありません。事業の停滞、信頼失墜につながり、最悪の場合は倒産に至ってしまうのです。
 逆に、適切に迅速に対応できると、顧客や市場からの信用・信頼が高まり、ビジネスを加速することさえあります。東日本大震災発生後のオリエンタルランド(東京ディズニーランドの運営会社、震災発生時のスタッフの冷静な対応が評価された)や、商品供給を継続したコンビニエンスストア・チェーンなどは、顧客の信頼を高め、ファンを生み出し、事業に大きなプラス効果を生みました。
 このように考えると、リスクマネジメントは軽視、先延ばしにするものではなく、経営として取り組むべき最優先事項なのです。

■人材マネジメントに関わるリスク

 ヒトという経営資源を扱う人事部門が関わるリスクは多岐にわたります。近年では、正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトとさまざまな雇用形態の社員が同一の職場で働き、労働法の頻繁な改正なども行われ、対応が今まで以上に難しくなっています。
 リスクの内容も、「退職・解雇」「残業・休日出勤」「パワーハラスメント」などの労働トラブルから、「社員の高齢化」「人材不足もしくは過剰人員」「人事制度の機能不全」など経営的な人事リスクまでさまざまです。
 以下に人材マネジメントに関するリスクを一覧で示した「リスクマップ」を掲載します[図表2]。これは、「発生頻度」と「発生時の影響」の二つの軸でリスクを整理したものです。
リスクの「頻度」と「影響」は企業によって異なりますが、ぜひ自社のリスクを洗い出す参考としてください。

[図表2]人事・労務のリスクマネジメントマップ(リスク一覧)

■リスクマネジメントは「ハード」と「ソフト」の両面から取り組む

 リスクマネジメントはハード(仕組み、体制、諸規程など)ソフト(社員の意識、能力、組織風土など)の両面からのアプローチが必要です。

 ハードとは、企業の構造に関係するもので、戦略、組織、仕組みです。リスクマネジメントでは「運用推進主体となる組織」「制度、仕組み」「未然防止・問題発生時のルール、マニュアルなど諸規程」「システム」などです。

 ソフトとは、人の内面に関するもので、経営スタイル、社員のスキル・意識、自社のノウハウ、企業風土を指します。「リスクマネジメントに対する経営者の意識とリーダーシップ」「社員の対応スキルと危機意識を高める教育」「平時・非常時の社内コミュニケーション」などが挙げられます。

組織を構成し、仕組みを運用するのは社員です。ハードを整えてもそれが実行されなくては「絵に描いた餅(もち)」です。
 また、「ルール、規程を守りなさい」「気をつけなさい」と社員の意識に訴えるだけでは十分ではありませんから、社員が実行しその状況をチェックできる組織、仕組みが必要になります。

 そのような意味で、ハードとソフトは相互補完の関係にあり、バランスよく取り組むべきものなのです[図表3]

[図表3]ハードとソフトによるリスクマネジメントの取り組み

 労働法規違反、労働トラブル、その他人材マネジメントにかかわるリスクは「故意」「悪意」により発生するものはわずかで、ほとんどは社員の理解不足、誤解、ヒューマンエラーなどの「過失」により発生します。

 これらを防ぐためには人事部が主導となって、管理職や一般社員への理解促進、意識付けを継続的に行うこと(ソフト面のアプローチ)が大切です。
 とは言っても、人はいくら気をつけても、ミスをしたり忘れたりするものです。対策を徹底し、トラブル発生の芽はないかをチェックできる体制、仕組み(ハード面のアプローチ)が必要なのです。
 また過重労働、プレッシャーなどが社員の肉体的、精神的な「余裕のなさ」を生み、リスク発生の遠因にもなります。人事としてはリスクマネジメントの視点で労働環境整備、労務管理を行ってください。

■リスクマネジメントと就業規則の改訂

 人事部としての重要な取り組みの一つは、リスクマネジメントの視点で就業規則をチェック・改訂することです。就業規則を一般的なひな型をそのまま利用して作成し、その後ほとんど改訂していない、という企業があります。法改正や事業環境の変化に対応していないのです。これはとても危険なことです。
 「退職・解雇」「異動・配置転換」「休職・復職」などの問題は、具体的な要件、手続きなどを記載していれば防げるものが多いのです。
 また、東日本大震災の際、「社員の帰宅困難時の取り扱い」「操業停止の際の自宅待機の賃金支払い」「計画停電の際の土日出勤の賃金」など想定していなかった事態が発生しました。多くの企業では就業規則に記載がなかったため、対応に苦慮したのです。
 ぜひ一度、自社の就業規則を確認し、必要に応じて変更・具体的な記述の追加をしてください。

 マーケティング、営業などが攻めの経営であるとすれば、リスクマネジメントは守りの経営といえるでしょう。しかし、企業がスピーディーに継続的に事業を進めるために、今ほど人事部がリスクマネジメントの整備、運用を求められる時代はありません。
 「転ばぬ先の杖(つえ)」「備えあれば憂いなし」です。

◆関連リンク

「転ばぬ先の杖(つえ)」、「備えあれば憂い(うれい)なし」。企業も個人もリスクマネジメントをしよう!:コンサルタントが世界一やさしく教えるビジネス思考(23)

太期健三郎(だいごけんざぶろう)profile
1969生まれ。神奈川県横浜市出身。人事コンサルタント/ビジネス書作家。三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスを経て、ワークデザイン研究所代表に就任。コンサルタントおよび現場実務の両者の立場で一貫して人材マネジメントとキャリアデザインに取り組む。主著『ビジネス思考が身につく本』(明日香出版社)。
ワークデザイン研究所のホームページ http://work-d.org/
ワークデザイン研究所代表のブログ http://blog.livedoor.jp/worklabo/


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