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新任担当者のための労働法セミナー [2012.08.14]

第4回 変形労働時間制[2]


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士


 

1年単位の変形労働時間制(1)

 

今回のクエスチョン

Q1 1日8時間労働で、週休2日制の会社です(土日祝日と国民の祝日、年末年始4日、お盆3日が休み)。毎月月末が忙しいため、月末の土曜日を出勤日にしたいと考えていますが、可能ですか?


A1 月末の1週が48時間となり、このままでは法違反となりますが、1年単位の変形労働時間制(労働基準法32条の4)を活用すれば可能になります

 対象期間を1年間とした所定労働時間の計算方法は次のとおりです。年末年始やお盆、祝日の休みを1年間に分散するようなイメージと考えるとよいでしょう。実際に活用するには、その年のカレンダーを基に計算してください。

(1)自社の年間休日を計算する
   日  曜  日:    52日
   土  曜  日:    40日(毎月月末を出勤日とする)
   国民の祝日:  12日(年によって異なる。土・日曜と重なる日を考慮している)
   年末年始:     4日
   お       盆:    3日  
      計:       111日 ……年間休日日数
(2)年間の総労働日数を計算する
  365日-111日=254日 ……年間総労働日数
(3)1日当たりの労働時間数を計算する
  2085.7時間÷254日=8.21(切り上げはできない)

→2085.7時間は、1年間(365日の場合)の法定労働時間の総枠であり、1年単位の変形労働時間制を導入すれば、1日8時間12分までなら時間外労働にならない制度とすることができます(後で詳しくご説明します)。

【解説】

■1年単位の変形労働時間制は、1年以内の一定期間を平均して週40時間以内にする
 1年単位の変形労働時間制は、1カ月を超え1年以内の一定期間において、平均労働時間が週40時間以内であれば、ある日に8時間、ある週に40時間を超えて働かせることができる制度です。超えた時間は時間外労働ではなく、割増賃金を支払う必要もありません。また、この時間についての36協定も必要ありません(ただし、1年単位の変形労働時間制についての労使協定の締結・届け出が必要です)。
 考え方は前回説明した、1カ月単位の変形労働時間制と同様です。1カ月単位の変形労働時間制は、1カ月以内の一定期間を平均しますが、1カ月を超え1年以内の一定期間を平均するのであれば、この制度を使うことになります。
 なお、この制度を活用する場合は、特例事業場であっても1週当たりの労働時間の上限は、44時間ではなく40時間となります。

■季節によって繁閑の差が激しい業務に最も有効
 この制度を最も活用できるのは、季節によって繁閑の差が激しい業務です。繁忙期には出勤日数や1日の労働時間を増やし、その代わりに閑散期には、労働日数や労働時間を減らすことができます。
 うまく活用すれば会社は時間外労働手当の削減ができ、労働者は閑散期に働く時間を減らすことができます。
 全社で統一した出勤日にする必要はなく、部署によって変化を持たせることも可能です。また、例えば経理職員のように、1年のうちで特定の期間が繁忙であることが予測できる部署にだけこの制度を活用することも考えられます。

■法定労働時間の総枠は算式に当てはめて計算する
 対象期間は、3カ月、6カ月など1年以内であれば可能です。対象期間の法定労働時間の計算方法は、1カ月単位の変形労働時間制と同じです。週40時間を基本として、次の算式に当てはめて計算します。

40時間×変形期間の暦日数÷7日

 


 対象期間ごとに計算したものが[図表]です。


■労使協定を締結して、就業規則に記載する
 1年単位の変形労働時間制を採用するには、次の手続きが必要です。
(1)就業規則に労働時間制度として、この制度を採用することを規定する
(2)労使協定を締結し、労働基準監督署へ届け出する

■変形労働時間制を使えない労働者に注意する
 変形労働時間制を活用するうえでは、次の労働者に配慮が必要です。この配慮は、1カ月単位、1週間単位の変形労働時間制でも同様です。
(1)年少者(満18歳未満)
・15歳に達した直後の3月31日まで……禁止
・15歳に達した最初の4月1日から18歳に達するまで……1週48時間、1日8時間以内であれば可能
(2)妊産婦(妊娠中と産後1年まで)……申し出があれば、1週40時間、1日8時間を超えることはできない
(3)特別の配慮を必要とする者……それぞれに必要な時間を確保できるよう配慮
・育児を行う者
・老人などの介護を行う者
・職業訓練または教育を受ける者
・その他特別の配慮を要する者


《復習&応用問題》

Q2 1年単位の変形労働時間制で割増賃金の計算方法を教えてください

A2 次の時間が法定の時間外労働となり、割増賃金を支払う必要があります

(1)1日の法定時間外労働
  労使協定で1日8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
(2)1週の法定時間外労働
 労使協定で1週40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は1週40時間を超えて労働した時間((1)で時間外労働となる時間を除く)
(3)対象期間の法定時間外労働
 対象期間の法定労働時間の総枠(上記[図表])を超えて労働した時間((1)または(2)で時間外労働となる時間を除く)
 法定労働時間を超過した時間を計算すると、上記のとおり複雑です。
 しかし、「所定労働時間」を超える労働に対して、「法定労働時間」を超える労働と区別せず、割増賃金(×1.25)を計算して支払うこととすれば、計算は簡単です。この場合は、あらかじめ設定した各日の所定労働時間を超過した時間に対して割増賃金(×1.25)を払えばいいのです。所定労働時間を超える労働に対して割増賃金を支払えば、法定労働時間を超える労働に対する割増賃金は必ず払うことになるため、労働基準法の問題が生じることはありません。

Q3 1年単位の変形労働時間制を活用しています。病気で休職していた労働者が復帰しましたが、ちょうど変形期間の残りの期間が繁忙期に当たり、出勤日数が多くなっています。その労働者が、「週40時間を超える分を残業代として払ってもらわないと労働基準法違反になる」と言ってきました。本当ですか?

A3 在籍期間の平均で週40時間を上回る部分については割増賃金が必要です

 対象期間の途中で採用された人や途中で退職した人など、たまたま繁忙期だけ在籍するケースがあります。この場合、在籍期間だけを平均すると週の労働時間が40時間を超えてしまい、超えた時間に対しては、割増賃金を払う必要があります(労働基準法32条の4の2)。
 また、一つの事業場で複数の1年単位の変形労働時間制があるときに、配置転換があったケースでも考え方は同じです。配置転換前は途中退職と同様の清算が、配置転換後は途中採用と同様の清算が必要です。
 ただし、この考え方は、育児休業や産前産後休暇などを取得した休暇中の労働者には適用されません。

(「1年単位の変形労働時間制」は次回に続きます)

※本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2011年7月に掲載したものです


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

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 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

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下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』(以上、成美堂出版)など。
http://www.improve1998.com/


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