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育成担当者のための 今月の注目トピック [2012.08.10]

第4回 グローバル人材育成の中で効果的に英語力を上げるには

 


中川繁勝  なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー

 年々その勢いを増しているようにも感じられる日本企業におけるグローバル化の声。社内公用語を英語にするという企業もあれば、東日本大震災以後、いざというときのために本社機能をシンガポールにも作るという企業まで現れてきている。大手電機メーカーでは、技術系/事務系にかかわらず、新入社員は数年以内に必ず海外勤務を経験させるというところも。そうなると避けて通れないのが国際共通語でもある「英語」だ。もう苦手などと言ってはいられない。採用の時点で外国人比率も高くなってきている企業もあり、既存社員はうかうかしてはいられない。部下に外国人がいる、なんてことが現実のものとしてすぐそこまで来ているのだから。

 そうなると、TOEICで何点だとか、英検何級などというレベルではなく、コミュニケーションはできて当たり前で、プラスアルファの業務遂行能力が問われてくる。人材育成としてもこの辺りを見極めつつ、グローバル人材育成に取り組んでいきたい。

 そこで今回は、ちょっと趣の変わった英語研修をご紹介したい。

●必要性とやる気の関係

 筆者自身も含め、これまで多くのビジネスパーソンが英語学習に取り組んできた。いまだに私の友人の何人かは英語学習をしている。例えば、彼らが行っている学習法として、Skype[編注]を使ってアジア圏に住む英語ネイティブと会話をすることで、話す力、聞き取る力を養おうというものがある。ところがここに落とし穴がある。それは、気がつくと「英語を話す/英語で話す」ということ自体が目的になってしまうことだ。そうすると何が起こるか。私も英会話スクールで経験があるが、「What did you do last weekend ?」という会話のやり取りの中でどう話すかを一生懸命考えることとなる。話すネタを作るために出かけるようなことがあろうものなら、もう本末転倒だ。
[編注]Skype(スカイプ):インターネット電話サービス。Skypeユーザー間であれば、遠距離や国際間であろうと、無制限・無料で音声通信することができる。

 私たちは目的が明確になると、そこに向かって行きやすい。なんとなく大学へ進学する学生と、「私は弁護士になる」としっかり目標を立てた学生とでは、勉強に対する意欲も違うし、やるべき事とやる必要のないことの判断や、力の入れ具合も変わってくるというもの。英語学習もまったく同じで、自分の業務に直結した目的が明確にあると、英語を学ぶ意味や価値が高まり、意欲も興味も増してこよう。

 ことグローバル人材のマネジメントをする方々にとっては、週末に何をしていたのかという話よりも、組織マネジメントや部下管理などの話の方が興味は高まるし、「これは英語でなんと言うんだろう?」と、業務に直結した学びを自主的に行うようになる効果がある。そこでお勧めしたいのが、「必要なこと」で英語を学ぶという方法だ。

●英語で学ぶ海軍士官の組織マネジメント

 私の知人におもしろい研修を提供している人がいる。
 21歳でアメリカ海軍に入隊。数々の艦で30年間勤務し、下士官兵としては最上級、トップ1%のみが到達できる最先任上級兵曹長(Master Chief Petty Officer)という階級へ昇級。空母キティホーク(Kitty Hawk)では、多国籍にわたる465人の部下をまとめ上げた元士官が講師となり、企業に通じるリーダーシップやコミュニケーション術を伝授するというものだ。しかも英語で。
 そう、この研修はもはや語学研修ではなく、英語を使って、どうやって部下をまとめるのか、というリーダーシップとコミュニケーションを学ぶ研修なのだ。『海軍士官に学ぶリーダーの組織マネジメント術』となればマネージャー達の興味も津々といったところではないだろうか。

 いや、むしろこれをお読みのご担当者が興味津々になっているかもしれない。もう少し説明しておこう。

 トップダウン式の指令ばかりといったイメージのある軍隊だが、それだけでは人は動かないのも現実。アメリカ海軍といえども実際にそうらしい。時には命を預けて仕事をしなければならない環境に身をおく彼らの、人を動かすポイントが学べるそうだ。
 組織は異なる人々の集まり。一つ間違えば訴訟に発展し、築き上げてきたキャリアが崩れてしまうことさえあるのがアメリカだ。実際に元士官の講師にもその危機があったのだという。国籍、言葉、宗教、性別、世代など、兵士達のバックグラウンドによる違いを理解し、部下を率いるコツ、してはいけないこと等についても教えてもらえる。
 部下が家族と長い時間離れて過ごさなければならないのは、海軍と企業の単身赴任で似たところがある。その辺りのフォローアップの方法も伝授してもらえるそうだ。これらは、グローバル展開する企業には必須の知恵となろう。

 全編英語での講義ではあるが、パートごとに、または全体の終わりに、バイリンガルのファシリテーターが内容の確認やまとめを助けてくれる。学んだ内容をより深く理解して、すぐに実践に移すきっかけができる。

 具体的なシーンを想定して、部下にどう話しかけたらいいのかを考え実践してみるという、まさに実務に直結した学びの場であり、しかもマネジメントと英語の両方を強化することのできる機会となる。
参考までにこの研修の概要を示しておこう。

【研修の概要】
(1)海軍から仕事場、家庭まで 共通するリーダーシップの本質とは
(2)命を預けられる仲間の見分け方・育て方
(3)バックグラウンドの異なる、465人の部下を率いたコミュニケーション術
(4)新人は最初の48時間が勝負、人材をダメにしないための「メンターシップ」
(5)後を任せられる「次のリーダー」の資質とは

●語学は目的ではなく手段

 多くのグローバル人材育成プログラムが、まずは英語を学び、TOEICで規定の点数を取得し、加えて異文化コミュニケーションやマネジメント等を学ぶ。それはそれで個々のプログラムはうまくできているのだと思うが、語学と業務に直結した内容を別にするのではなく、一緒にして進めてしまうことで一石二鳥の効果をねらうこともできそうだ。
 例えば、手軽にできる英語学習法として、興味のある分野の書籍を原書で読んでみる、という方法がある。私自身、英会話は初級ビジネスレベルでできているとは思うが、英語の本を読んだことはなかった。何度かチャレンジしてみたのだが、興味の薄い内容の本はなかなか読み進まなかった。ところが昨年、自分の読みたい本の訳書がまだ国内で発売されておらず、しかしそれを待っていたくはなかったので思い切って原書を買って読むことにした。驚いたことに、興味のある分野だからなのか、ざっと読んだだけでも頭に入ってくることはたくさんあるし、なにしろ読破してしまったのだ。
 近年、海外挑戦するアスリートたちが、現地の言葉で海外メディアに堂々とした対応をしている姿をよく目にする。サッカー選手にしても野球選手にしても、好きなスポーツでコミュニケーションする必要性があるから、積極的に興味を示し言葉を覚える気にもなるのだろう。知らない単語は実はたくさんあるのかも知れない。しかし、自分の仕事の範疇(はんちゅう)の興味のある分野に特化して学ぶ事で、英語力を向上させ、さらに業務力も向上させることができる。
 言うまでもなく、英語を習得することはグローバル人材が活躍するための手段なのだが、これを学習する段階で、目的化する危険性がある。特に語学研修だけを独立して行っているとそうなってしまいがちだ。まずは育成担当者がグローバル人材を育成する目的を明確に捉え、そのための「手段としての英語」という認識をもってプログラム作りをすると、今までと違ったものができてくるのではないだろうか。

 「興味があれば積極的に学ぶ」という考え方は、他にも適用ができるだろう。会社として押し付けるような研修プログラムではなく、受ける側の社員が興味を持っている内容や事例を盛り込むことで、違った分野においても参加意欲が高まる研修作りに取り組めそうだ。


※本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2011年7月に掲載したものです 

中川繁勝中川繁勝 なかがわしげかつ エスジェイド代表、人財育成プロデューサー

システムエンジニア、ネットワーク技術者養成のマーケティングを経て、ITコンサルティング会社の人財開発マネジャーとしてコンサルタントの育成に従事した後、独立。現在は、研修講師としてロジカルシンキングやプレゼンテーション等のコミュニケーション系研修を提供するとともに、人財育成を支援するためのコンサルティングサービスも提供している。NPO法人人材育成マネジメント研究会理事。ワールド・カフェをはじめとした対話の場の普及を促進するダイナミクス・オブ・ダイアログLLPのパートナーとして、各種ワールド・カフェとワールド・カフェ・ウィークの開催を推進。また、場活流チェンジリーダー塾にてメンターとしてリーダーのあり方を養成する活動にも従事する。


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