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『HRトークLIVE』レポート
第1回 グローバルで躍動する人材づくりのために、いま人事は何をすべきか
[2012.08.22]

Session1〈4〉 グローバルHRの四つの論点②

 

【論点3】戦略性vs継続性

■「過去」ではなく、「いま」を見たマネジメントをせよ


野田 では、次の論点「戦略性vs継続性」にまいりましょう。

八木 これは先ほどお話しした制度の在り方の問題です。継続性のマネジメントというのは、制度・マニュアル・権限配置によるマネジメントです。私は、これは過去との継続性を大切にするマネジメントだと思っています。過去が将来も役に立つような事業、あるいは分野であれば、これはいいと思います。あるいは、継続により、人が3倍とか5倍働くような状態を作る。あえて変わらないことによって、他の会社では絶対に出てこないような社員のやる気を引き出していれば、それはそれで勝てるかもしれません。

しかし、日々変化が起こるいまの時代は、その時々でいかに戦略的であるか、意味のあるマネジメントをしているか、ということが勝負のカギになってくると思います。戦略というのは、現在が過去からどう変わったか、そのことによって自分たちはどういうふうに変えなければいけないのか、自分たちのリソースをどういうふうに配置してどう動かさなければならないのか――ということをしょっちゅう考えることに他なりません。
その際、先ほどもお話ししましたが、「制度」は邪魔になります。「権限」も邪魔になります。権限ではなく、見識で物事をリードしていかなくてはいけない。ルールではなくて、いかに例外を認めていくかが大切になる。ですから、私は、戦略vs継続とは、「いまのマネジメントvs過去のマネジメント」なのだと思っています。
ただ、お断りしておきますが、過去からの継続性でやっているのが悪いと言っているわけではないです。それが、勝負に勝てるだけのバリューを生んでいるものであればOKです。

野田 一つ質問をしたいのですが、そうは言っても変化の中で、人間のキャリアの継続性みたいな部分がありますよね。例えば、通信がアナログからデジタルになる。でもアナログ技術者が、そう簡単に、デジタルに職務転換できない。すると、切らざるを得ない、となってしまってはたまらないですよね。こういうキャリアの継続性、あるいは職務転換の困難さというものについてはどう対応されますか?

八木 難しいですね。世の中にフィットしなくなったときというのは、運が悪いと言わざるを得ないし、私は、その運の悪さを受け入れるしかないと思います。
では人事としてすぐに、「お前はクビだ」ということをやるかと言われれば、それはやりません。やりませんが、職種転換もできず、その人をキープしておくことが会社としての「負け」につながるということであれば、それは切らざるを得ない。そこは厳しいです。
やっぱり「狩り」の場ですから、「狩り」で自分が勝つにはどうしたらいいかを、今度はそのライオン自身が考えなければならない。そのための支援はします。そこで、生まれ変われない人がいつまでも残っていられる組織を作ってしまったら、最終的にその組織は負けます。

野田 北欧などでは、国の制度として手厚い職能訓練制度がありますよね。だから社会も解雇に寛大、というか、むしろ推奨するくらい。そうしないと会社がつぶれますから。その代わり、解雇された人は国が面倒を見る。2年間くらい大学に入れて、全部勉強し直すことができるんです。
私の番組で取り上げたのが、皮革の染色工の例です。会社がその事業をもう続けられなくなったので、染色工は仕事を辞めざるを得なくなった。それで次に何をやるか。職業訓練のアドバイザーがいるんですが、彼はそこで訓練を受けて、太陽光発電の技術者になりました。全く未経験の元染色工が2年間大学に通って、ドイツの太陽光発電企業のキューセルに技術者として入って、それで、もうマネジャーになっているんです。とてもダイナミックな転身の例ですが、そんなふうになっていけばいいですけれどね。

八木 一企業としてできることにはやはり限界があります。だからといって、それでいい、仕方がないという冷たい人間になるつもりはありませんが、やはり国としてどうバックアップするか、という部分は必要だと思います。

■マーケット・バリューを持つ人材を常に作り続けろ


参加者Eさん 「生まれ変われない組織は滅ぶ」というお話は理解できる一方、ご紹介いただいたような国の制度がない日本でどうするのかが問題と思います。転身しなければいけない人の年齢という問題もありますが、人事としてはどう対応できるのでしょうか。

野田 労働の本質的な流動性が必要ですよね。同業者、同職種の中での流動性だけではなくて職種・業種をまたがった流動性をどう作れるのか。北欧の事例は40代半ばくらいでしたが、それもどう考えるのか。

八木 私も、鉄鋼会社から始まって、GEでもいろんなリストラを手掛けてきました。やむを得ずリストラを行うときは、コミュニケーションはもちろん、金銭面でもきちんと対応します。その結果を振り返ってみると、私の場合は幸いに、リストラで決定的に不幸になった人というのはあまり見たことがありません。
ですから、大変冷たい言い方かもしれないけれども、人間は本当に追い詰められるときちんとした力を発揮するものだ、という実感はあります。ただ、私がいた会社は、NKKもGEも、比較的人の育成をしっかりやってきた会社だと思うので、そこが容易だったという面もあると思います。

野田 マーケット・バリューを身に付けられるような人材育成を日ごろから行っていると、職務転換をしやすいということになるわけですね。逆に言うと、マーケット・バリューのある人材を育成することで、会社自身のフレキシビリティも担保できる。

八木 そう言えますね。一方で、日本中の偏差値トップ集団を採用して入社させて、40代から50代前半くらいでリストラして出さざるを得なくなったときに、ほとんどの会社からNoと言われても仕方がない人材育成をしている会社っていうのは、一体何なのだろうと思ったことも事実です。
分かりやすい言い方をすると、偏差値65の学生が会社で30年間仕事をして出てきたら偏差値40になっていたっていう感じ。やっぱりわれわれは、もっと人材の育成を一生懸命やらなければいけないと思います。

 

【論点4】強い会社vs良い会社

■勝ちにこだわる強さと、社会に価値を生む企業ミッション


野田 それでは四つ目の論点、「強い会社vs良い会社」についてお願いします。

八木 GEのときの話ですが、2008年のリーマンショックの後、ジェフリー・イメルトの発案で、「21世紀に通用するリーダーシップとは何か」を世界中で調査して、GEの新しいリーダーシップバリューを作ろう、ということになりました。
私は世界で120社くらい訪問し、日本でもパナソニック、トヨタ、三井物産など10社ほどの会社にお邪魔して、「21世紀のリーダーシップをどのように考えておられますか」ということをお尋ねしました。

「21世紀のリーダーに期待すること」については、各社とも、GEで考えていたこととあまり違いはなかったのですが、一つだけ大きく違うことがありました。それは企業のミッション、哲学という点です。例えばパナソニックでは、「水道哲学」に社員が大きな誇りを持って仕事をしている。「私がパナソニックを辞めないのは、これがあるからだ」とはっきりおっしゃるんです。トヨタでも三井物産でも同じような経験をしました。
リーダーシップバリューがどうこう、というのもさることながら、本物のミッションを持っている企業の社員のやる気、誇りというものを見た気がしました。もちろん、それが日本企業の全てに共通するというわけではありませんが、私が見た日本の会社の素晴らしさはそこにありました。
翻ってGEはどうなんだ、と考えると、GEにはgrowthとreturnというミッションしかありませんでした。

野田 なるほど。社会的なミッションはなく、ただもうけなさい、だったわけですね。

八木 確かにもうけていました。それも世界一もうけていました。だから、それはそれで機能していたのですが、リーマンショックの後、収益の半分をキャピタル部門から上げていたGEの業績は大きく下がってしまいました。トリプルAの格付けも失い、配当も下がった。そういう状態で、どうすればみんなが一生懸命働くことができるのか、ということを考えたときに、「良いミッションを持たなければならない。世の中に対してきちんと価値を付加していく会社にならなければならない」と強く感じたわけです。
一方で、GEには、「良さ」はないけれど「強さ」はありました。勝ちの定義をgrowthとreturnに置いて、徹底的に強さを追求する――そういう会社でした。私が感じたことは、日本の会社にこの強さがあれば、「良い会社」が強くなるだろう。また、GEに良いミッションがあれば、「強い会社」がもっと「良い会社」になるということです。

それで、日本の500人の社員の前で、ジェフリー・イメルトに対し「このGEという会社は、ミッション、ビジョンをきちんと持つべきだ」と議論してみました。結果として、GEは2011年から、「世界で最も難しい課題を解決する会社になる」というミッションを打ち出してやっています。それが完璧に根付いたとはまだ思っていませんが、ミッションを打ち出して、強い会社が良い会社になろうという方向性ができてきていると思います。こうした経験を踏まえ、逆に今度は日本のいい会社を、GEみたいに、グローバルレベルで強くしたいと思ったわけです。

■「強善い」会社がグローバルで勝つ

野田 それが冒頭にお話しいただいたこれからのチャレンジということですね

八木 そうです。これからグローバルで勝っていく会社というのは、「強い」と「良い」を両方持っている会社だと思います。「強」という字に「善」って書いて「強善い(つよい)」と言っているんですが、そうした会社が勝っていくだろうと思います。それがこの「強いvs良い」です。本当は「vs」ではなくて「and」です。

野田 私は人材も同じだと思っていて、青臭いことをちゃんと考えなければいけない一方で、実行するための黒さも持たなきゃいけない。合わせて「青黒さ」、「青黒人材」。これだと思っています。

八木 私も似たようなこと考えていまして、社員には「良い子ちゃんになるな。暴走しろ。良い子ちゃんになるようなやつは、会社をリードするような強い人間にはなれないから」と言っています。若いうちに暴走し、失敗して学んで、そして、反対があっても前に行く強さを身に付ける。
加えて「暴走したら、後ろを振り返れ。後ろに人が付いてきてなかったら寂しいだろ、自分がやりたいことを実現できないだろ」と。そのときに初めて「和」の精神を発揮しろと、チームを巻き込め、良い人間になれというわけです。
前の会社で、周りに「お前にはマチュリティがない(成熟していない)」と言われたと相談しに来た若い社員がいました。私が言ったのは「君にマチュリティがあったら、俺は君なんか採用しなかった」と。「君はマチュリティがないから面白い。暴走するから、面白いことを言うから、突っ走るから面白い。その良いところを思いっきり伸ばせ。そして最後に後ろを振り返って、人が付いてきているかを見ろ」と言いました。まさに野田さんがおっしゃる「青黒さ」ですが、やっぱりそういうことはすごく大事だと思っています。

参加者Fさん 「強い」と「良い」はぶつかりあうこともあると思うのですが、両立することは可能でしょうか。

八木 両立できます。スポーツに例えると、自分がやりたいゲームをフェアプレーで勝ちに行けば…ということです。
自分が働きたい業界でミッションを持ち、「勝ち」を定義して、正しいことを正しくやって勝ちに行けば良いのです。


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