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人事担当者のための法律読みこなし術 [2012.06.27]

第2回 公布文と制定文

 


吉田利宏  よしだとしひろ 元衆議院法制局参事


■公布文とは、いわばイントロ

 映画を見に行くと驚くのが予告編の多さです。「乞うご期待!」「戦いの果てにあるものは…○月○日堂々ロードショー」。予告編が終わりようやく本編が始まるころには、観客席のどこからか寝息が聞こえてくるというようなこともありました。本編の内容とは関係ないと言えばそこまでですが、予告編には、映画を見に来たというワクワク感を高めてくれる力があります。やっぱり、映画は映画館で見るに限ります。
 新たに公布された法令も官報で見ると、六法では見慣れないパーツがあることに気がつくはずです。以下は雇用保険法関係のある政令です。本体的な規定のことを「本則」といいますが、本則が始まる前に、次のような予告編ともいうべきパーツが置かれています。



 まず、最初に置かれているのが「公布文」といわれるものです。法律や政令については、憲法で天皇が公布するよう定められているので、これらの法令には公布文が置かれています。「御名 御璽」とあるのは、ここに、天皇の名前が記され、印が押されることを表しています。

■制定文は正当性の根拠

 題名の次にも何やら書かれていますが、この部分を「制定文」といいます。制定文というのは、政令に置かれ、その政令の正当性の根拠を示すものです。国民の権利を制限したり、義務を課したりする場合には法律によらなければなりませんが、その内容をさらに詳しく政令に委ねる場合があります。「○○については、政令で定める」。そうした法律の規定があって、はじめて政令を定めることができるのです。そして、その根拠を示すのが制定文というわけです。
 上の例では「雇用保険法等の一部を改正する法律(平成十九年法律第三十号)附則第百四十三条の規定に基づき」とあるのが、これに当たります。
 ただ、まれに、法律に規定がなくとも、政令を定めることができる場合があります。国民の権利義務にかかわるというほどの内容ではなく、法律を実施するための技術的なことなどについてです。この場合には、制定文の書き方も少し変わってきます。「○○法第××条の規定に基づき」とは書けませんので、「○○法を実施するため」という表現がとられることになります。
 「では、国民の権利義務に関わることや、関わらないことが混ぜこぜにある政令の制定文はどう書くの?」。そんな疑問があるかもしれません。その場合には、「○○法第××条の規定に基づき、及び同法を実施するため」と表現されることになります。
 なお、制定文は政令についてだけ付されるものですが、実際には省令(内閣府令)についても付されています。その場合は、政令でいえば公布文の場所に制定文が置かれることになります。
 


 六法では目にすることもない制定文ですが、政省令の内容を知る手がかりになりますし、政令が法律の内容を踏み外していないか監視のための手がかりも与えてくれます。
 たまには官報をめくるのもいいかもしれません。映画館でしか味わえない映画があるように、官報でしか見ることができない法令の世界がそこにあるのですから。

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2011年9月にご紹介したものです。

吉田利宏 よしだとしひろ
元衆議院法制局参事
1963年神戸市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、 衆議院法制局に入局。15年にわたり、法律案や修正案の作成に携わる。法律に関する書籍の執筆・監修、 講演活動を展開。
著書に『法律を読む技術・学ぶ技術』(ダイヤモンド社)、『政策立案者のための条例づくり入門』(学陽書房)、『国民投票法論点解説集』(日本評論社)、『ビジネスマンのための法令体質改善ブック』(第一法規)、『判例を学ぶ 新版 判例学習入門』(法学書院、井口 茂著、吉田利宏補訂)、『法令読解心得帖 法律・政省令の基礎知識とあるき方・しらべ方』(日本評論社、共著)など多数。


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