jin-jour(ジンジュール) |人材育成、リーダーシップ、モチベーション、メンタルヘルス対策など 人事の視点から、働く人と会社の関係を元気にする情報を発信

ログイン
MENU

メニュー

×

新任担当者のための労働法セミナー [2012.05.22]

第1回 労働基準法、労働基準監督署


下山智恵子
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

今回のクエスチョン

Q1 労使で「残業代は、払わない」と定めれば、払う必要はありませんか?


A1 労使で不支給と定めたとしても、支払う必要があります

 労働基準法は、強行規定です。そのため、当事者の意思とは関係なく適用されます。労使で「残業代は、払わない」と定めたとしても、会社は残業代を払う必要があります。このような強行規定は、このほかに、労働安全衛生法、最低賃金法などがあります。
 強行規定に相対する法律としては、任意規定があります。任意規定は一応の基準を示しただけで、当事者の意思が法律と異なる場合は、当事者の意思の方が優先されます。

 

【解説】

■ある日突然、労働基準監督官が来る(労働基準法101条~104条の2)
 「労働基準監督官が突然やってきて、残業代の不足分を過去2年分払うよう是正勧告が出された」
という相談を受けることが、この数年、増えています。労働基準監督署とは、いったいどんなところなのでしょうか?
労働基準監督官には、事業場に立ち入り(臨検)、帳簿や書類の提出を求め、尋問する権利があります。また、労働基準法等の法律違反に対して刑事訴訟法の司法警察官の職務を行う権利があります。労働基準監督署は、単なる役所ではないのです。

■労働者からの申告が増えている
 労働基準監督官は、突然やってくることもありますが、労働基準監督署に来るように連絡が入ることもあります。労働基準監督官には、使用者や労働者に報告をさせたり、出頭を命じる権利もあるのです。日時の都合が悪ければ変更してもらうことはできますが、命令には従わなければならないという認識が必要です。

■労働基準法等は罰則付きの強行規定(労働基準法117条~120条)
 「労働者と会社が、残業代を払わないことに合意していたら、払う必要はありませんか?」
こう聞かれることがよくありますが、答えは「NO」です。労働基準法等は、強行規定ですから、当事者の意思とは関係なく適用されます。残業代を払わないことに労働者本人が納得していたとしても、法律に従って払う必要があるのです。
また、労働基準法等には罰則があります。例えば残業代不払いの違反に対しては、「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」と定められています。法違反に対し、いきなり送検というケースは通常はそれほどなく、まず是正勧告を受けます。しかし、是正勧告は、「法違反を労働基準監督署が認識した」ということですから、早急に是正し、報告する必要があります。是正勧告を受けても、会社に改善の意思がみられない場合には、労働基準監督官は送検の手続きを開始します。
しかし、重大・悪質な事案に対しては、いきなり送検ということもあり得ます。東京労働局(平成22年5月14日)の発表では、平成21年度には東京都で55件送検し、「今後、労働基準法等の違反に厳正な態度で臨む」と方針を公表しています。

■遡及(そきゅう)は2年(労働基準法115条)
 賃金の請求権は2年、退職金は5年となっています。そのため、未払い残業代の請求では、ほとんどの場合、過去2年分を請求されます。労働基準監督署の支払命令も、労働者からの申告があった場合はほとんどの場合過去2年間に遡(さかのぼ)って支払いを命じられますが、普通の調査による支払命令は3カ月間のこともあります。
また、労働基準監督官から呼び出しを受けることもありますが、突然やってくる「臨検(りんけん)」は、労働者からの申告によるものが多いようです。人事担当者としては、法律を正しく知り、労働者に不満を持たれない労働環境の整備を行っていく必要があるといえるでしょう。

《復習&応用問題》

Q2 万が一、残業代不払いで裁判になった場合、労働者に払う必要があるのは、最大2年分の賃金だけですか?

A2 裁判になれば、支払額は2倍になります

裁判所は、解雇予告手当(労働基準法20条)、休業手当(26条)、時間外、休日、深夜の割増賃金(37条)、年次有給休暇(39条6項)の違反に対しては、未払いの金額と同額の付加金を支払うよう命じることができるとされています。(114条)。
裁判になると、支払額はほとんどの場合、2倍になります。それまでに早期に解決するほうがよいでしょう。

Q3 労働基準法と労働契約法、民法の関係がよく分かりません

A3 労働基準法は労働条件の最低基準を定めた法律、労働契約法は裁判等で培われてきたルールを明らかにしたものです。

労働基準法は、賃金、労働時間などの労働条件の最低基準を定めた法律です。民法の特別法(一般法である民法に優先して適用される法律)であり、これを下回る労働条件を定める労働契約を結んでも、その部分は無効となります。
ただ、労働基準法で定められていることはそれほど多くなく、定めがない部分は、過去の裁判等で労使関係の在り方が培われてきました。労働契約法は、裁判等で培われてきた民法上のルールを明らかにしたものです。労働基準法とは異なり、罰則はなく、労働基準監督署の管轄外です。紛争が発生した場合等では、ここに明記されている内容が問題になる可能性が高いものです。

[図表] 三つの法律の関係のイメージ

本稿では、今後、労働基準法を中心に、労働契約法などの周辺の法律も必要に応じて解説していきます。また、初心者にも分かりやすく、人事担当者が知っておくべき基礎知識を学んでいただくものを目指しています。

※本記事は、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2011年5月に掲載したものです


こんなときどうする? Q&Aでわかる! 労働基準法
  特定社会保険労務士 下山智恵子 著/労務行政
  A5判・256頁・1,782円

●人事・総務担当者なら知っておきたい、よくあるケース・実務のポイントを123問のQ&A形式で解説!

●労働時間、解雇、賃金など、問題となりがちな項目について、労働基準法の定め・取り扱い等を図解入りで解説

 第1章  労働基準法とは?
 第2章 「労働時間」の基本を押さえる
 第3章 「賃金」の基本を押さえる
 第4章 「休暇・休業」の基本を押さえる
 第5章 「妊娠~出産~育児関連、年少者」の基本を押さえる
 第6章 「退職・解雇」の基本を押さえる
 第7章 「労働契約・就業規則」の基本を押さえる

書籍の詳細、内容見本の閲覧、ご注文はこちらをクリックしてください

下山智恵子 しもやまちえこ
インプルーブ社会保険労務士事務所 代表 特定社会保険労務士

 大手メーカー人事部を経て、1998年に下山社会保険労務士事務所を設立。以来、労働問題の解決や就業規則作成、賃金評価制度策定等に取り組んできた。 2004年には、人事労務のコンサルティングと給与計算アウトソーシング会社である(株)インプルーブ労務コンサルティングを設立。法律や判例を踏まえたうえで、 企業の業種・業態に合わせた実用的なコンサルティングを行っている。著書に、『労働基準法がよくわかる本』『もらえる年金が本当にわかる本』(以上、成美堂出版)など。
http://www.improve1998.com/


管理職のeラーニング講座、お試しできます

無料トライアル受付中

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

ログイン

×

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品