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トップリーダーが語る人材戦略 [2012.05.24]

第3回 コマツ(前編)


「コマツ流グローバル経営」

日置政克 ひおき まさかつ
常務執行役員
コンプライアンス、法務、人事・教育、安全・健康管理管掌

※お役職は2011年5月に行ったインタビュー当時のものです。

 1975年東京大学卒業。同年、小松製作所入社。粟津工場総務部勤労課を皮切りに、人事部人事課、人事部人事企画課など、主として人事畑でキャリアを積む。英国コマツ株式会社、小松ドレッサーカンパニー(米国)と、海外経験も豊富。02年に広報・IR部長、03年に人事部長、04年に執行役員人事部長となり、08年より常務執行役員。2012年4月より社長付。

【コマツの概要】
 日本を代表する建設・鉱山機械、産業機械のグローバル企業。建設・鉱山機械分野では、国内の12の生産拠点に加え、米州6拠点、欧州9拠点、アジア8拠点、中国8拠点の、計43の生産拠点を持つ。連結の従業員数は4万1059人、うち約55%は外国人が占めている。2013年3月期を最終年度とする中期経営計画「Global Teamwork for Tomorrow」では、製品・部品のICT(情報通信技術)化の推進、環境・安全性能の更なる進化、グローバルな販売・サービス体制の拡充、現場力の強化による改善の推進に注力し、さらなる成長を目指している。
URL=http://www.komatsu.co.jp/
本社 東京都港区赤坂2-3-6
資本金 678億7000万円(連結)
従業員数 単体9541人、連結4万4206人
<2012年3月31日現在>

※本インタビューは、人事専門資料誌「労政時報」の購読者限定サイト『WEB労政時報』にて2011年8月に掲載したものです。

聞き手、文:溝上憲文  写真:(株)トリニティ


 

■現地人トップを日本人スタッフが支える

――コマツの海外進出は1950年代に始まりました。グローバル企業の先駆者であり、グローバル経営の成功例と言われます。人事の現地化を早くから進めたことでも有名です。
 80年代に海外の製造拠点が拡大しました。規模が大きくなると、従業員は現地の人の割合が増えるわけですが、当時すでに、各拠点の経営のトップに現地の人間を据えるというやり方が定着していました。
 アメリカでは、1988年に50:50のジョイントベンチャーの形でスタートしましたが、従業員の大半は合弁先の従業員であり、経営トップもアメリカ人です。経営幹部は14人いましたが、そのうちコマツの人間は2人だけです。当時の合意では、会長兼CEO(最高経営責任者)がアメリカ人、社長兼CEO(最高執行責任者)が日本人となっており、いまだにそれが続いています。当時から、トップに現地の人間が就くのは当たり前だと思っていました。今の坂根(正弘)会長は2代目の社長兼COOとして赴任しています。
 イギリスの現地法人はコマツ単独の会社ですが、86年の立ち上げ時に私が赴任しました。人事部長と購買部長に現地の人間を採用し、製造部長もイギリス人、彼は後に社長になりました。スタート当初から、経営人材の現地化を行っていたのです。現地化したのは、やはりそこで働く従業員のことを考えた場合、日本人では無理だと判断したからです。今も、各拠点のトップは現地の人に任せ、それを日本人スタッフが支えるという“バランス経営”が当社の基本スタンスになっています。
 ただし、建設機械の心臓部となるエンジンや油圧機器などのコンポーネントは日本で作っています。日本で心臓部のコンポーネントを製造して海外に輸出するという形を維持しており、品質と信頼性を確保するものづくりのノウハウは依然として日本にあります。
 現在、建設・鉱山機械の売り上げの85%は海外です。日本では15%しか売れません。こうした状況の下で、日本だけではビジネスの成長はあり得ませんので、世界の拠点の人材がどれだけ活躍してくれるか、信頼できる現地のスタッフがどれだけいるかが重要になります。

――他社は、3年程度で交代する日本人の社長が珍しくありません。
 海外現地法人の日本人社長を何人も知っていますが、皆さん「早く日本に帰りたい」とおっしゃる(笑)。大変だろうなというのが率直な感想です。
 社長が交代するたびに送別会を開いていますが、それが頻繁に起きるのはたしかにおかしいと思いますね。当社は、同じ駐在員でも、経営幹部は比較的長期間赴任します。COOなどのトップの場合、最長7年、普通は5年でローテーションしています。私もアメリカに5年いましたが、ラーニングカーブからいえば、任せられる現地の人材がようやく育つのに3~4年。5年目は5割を任せて、自分は日本に帰る準備をする。そういう意味では、5年というのはちょうどよい期間だと思います。

■コマツウェイを策定し、全世界で共有

――2006年に世界共通の行動指針である「コマツウェイ」を作っています。トヨタ自動車など他社も同様なものを作る傾向がありますが、なぜ、作る必要があるのでしょうか?
 私自身、アメリカやイギリスに赴任していたときに痛切に感じたのは、現地の社員に対して、技術などハードのことは話せても、コマツの価値観や考え方など、コマツらしさを言葉にして話せるものがないということでした。同じ会社で一緒に働いている以上、価値観を共有することが絶対に必要だ――という信念に近い感覚を持ちました。ですから、コマツの考え方や価値観を明文化したコマツウェイを作ろうという話が出たときに、真っ先に飛び付きました。
 作成に当たっては、各部門をリタイアしたOBなどを含め、35人ぐらいにインタビューしました。その中からコマツらしさといえるものを文章化し、出来上がったのが、ものづくりを支える全社共通編です[図表1]。最終的に、「世界で働くコマツの社員が共有すべき価値観、心構え、行動様式」と定義付けしました。



 コマツウェイには、まず経営トップが遵守すべき5項目があります[図表2]。つまり、トップが交代してもこれだけは変えてはいけないというメッセージです。実はこの項目は坂根会長自身が実践してきたことであり、以前から、関係会社の社長が交代するときに同じ内容を記した手紙を新社長に送ってきたという経緯があります。

――さまざまな普及活動を行っていますが、海外拠点での浸透度はいかがですか?
 コマツウェイに書かれたものを見て、人によっては、こんなものではないと言いたくなる部分もあると思います。また、我々も金科玉条(きんかぎょくじょう)のごとく押し付けるつもりはありません。ちょっと違うかなと思ったら、それぞれの地域の社員が議論し、知恵を出し合って改善していくことも許容しています。3年前にイギリスに行ったら、コマツウェイをビジュアルに表現する方法で浸透を図っていました。「見える化」することも大事ですので、逆に日本の社員をイギリスに行かせて学ばせたほどです。
 また、1982年に拠点を作ったインドネシアは、もともとものづくりに熱心な国であり、自然発生的に取り組んでいます。彼らからすれば、コマツウェイに書かれていることは特別新しいことではなく、今まで聞いてきたことと同じじゃないかという雰囲気があります。
 例えば、インドネシアの工場内にはいくつもスローガンが貼ってあるのですが、昨年、訪問したら、ローマ字で「GASHINSHOTAN」(臥薪嘗胆:がしんしょうたん)と書いてあり、驚きましたね。日本人のだれかが教えて「次に向けて頑張ろう」という意味で使っていたのですが、コマツウェイも日常の感覚で受け入れてくれています。

 

■日本と世界をつなぐ『ブリッジ人材』が必要

――海外拠点の拡大に伴い、グローバルに通用する人材の育成が叫ばれるなど、グローバル人材という言葉が盛んに飛び交っています。先駆者として、「グローバル人材」をどのようにとらえていますか?
 正直言って、グローバル人材はいますかと問われれば、「当社には、世の中で言われるグローバル人材はいない」と答えるしかありませんね。
 グローバル人材といえば、一般的には卓越したリーダーを想定しますが、私は昔から、「はたしてそうだろうか?」という疑問を持っています。加えて、英語が流暢(りゅうちょう)で日本人のアイデンティティを持っている人とも言われますが、日本人としてのアイデンティティは日本人を20年もやっていれば自然と身に付くと思いますし、日本の歴史・文化にしても、高校の教科書程度の知識があれば十分ではないでしょうか。また、英語でコミュニケーションできる人がグローバル人材であるとは絶対に思いません。
 当社でグローバル人材という言葉をあえて使うとすれば、前提として確固としたプロフェッショナルの領域をしっかり持っていること。それを相手に伝えようとする意欲のあることが必要です。確固とした専門領域があれば、言葉は自(おの)ずと付いてくるものだと思います。
 グローバル人材を当社流に読み替えるならば、日本と中国、あるいは日本とイギリスをつなぐ「ブリッジ人材」です。ブリッジ人材に必要なのが専門的能力であり、設計のプロ、あるいは生産のプロであることです。この問題は彼(彼女)に聞けと言われるぐらいの存在になることが大事だと思っています。
 坂根会長も「英語ができて、仕事ができないのが一番困る」と言っていますし、野路(國夫)社長も「プロフェッショナルになることが大事。それがしっかりしていれば言葉は自ずと付いてくる」と、語学に関しては楽観主義的考え方を持っています。

――世間一般でいうグローバル人材の定義とは違いますね。
 グローバル経営ではブリッジ人材も大事ですが、さらにいえば、世界の拠点で働くフォロワー、従業員が何よりも大事です。この人たちが集合体として努力し、その頑張りが当社のグローバリゼーションに寄与しているのです。したがって、日本から赴任する駐在員に問われるのは、彼らと一緒にやれるかどうかです。別の言い方をすれば、日本語の情報を英語で、あるいは中国語で共有し、巻き込むことができるのかです。
 そのためには、外国人を“みそっかす”にしない。つまり、よそ者扱いにせず、常に一緒ということが大事なのです。日本人だけで集まらないで外国人の中に飛び込んでいく。たとえ言葉は通じなくても一緒に会議をするなど、一緒にやる場をできるだけ多く作ることが大事なんだと常に言い続けています。

(後編に続く)


溝上憲文(みぞうえ・のりふみ) ジャーナリスト
1958年鹿児島県生まれ。明治大学卒業。経済誌記者などを経て独立。経営、ビジネス、人事、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍中。著書に『隣りの成果主義』(光文社)、『超・学歴社会』(同)、『団塊難民』(廣済堂出版)、『「いらない社員」はこう決まる』(光文社)などがある。


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