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「オフ」を前向きにとらえて楽しむ「ポジティブ・オフ」運動 [2012.04.11]

「ポジティブ・オフ」シンポジウム レポート

 

「ポジティブ・オフ」シンポジウム レポート
『日本経済を活性化するライフスタイル・イノベーション
  ~企業と個人の有機的成長戦略~』

主催:観光庁、関東運輸局
後援:(社)日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会
協力:(財)労務行政研究所、㈱日本経済新聞社

2012年2月22日 東京・日経ホールにて開催

 2011年度から、観光庁と内閣府、厚生労働省、経済産業省が共同で提唱・推進している「ポジティブ・オフ」運動の輪が、いま徐々に広がり始めている。
 休暇(オフ)は働く人々にとって、余暇の楽しみだけでなく、自分磨きや家族や地域との絆づくりを進める大切な機会。企業にとっては、そうした機会づくりを後押ししていくことが、社員の働きがいや生産性の向上、人材確保に結び付き、長期的な企業価値の向上へつながっていく。企業と社員の双方が、休暇の活用に前向き(ポジティブ)に取り組んでいくことにより、その効果が社会・経済の再生と活性化に波及していく。こうした「ポジティブ・オフ」運動の趣旨に賛同を表明し、休暇の取得・活用の取り組みを進めている企業・団体は全国で139に上っている(2月末現在)。
 この運動を主唱している観光庁は、「オフ」の効用と企業支援の重要性への理解を働き掛け、さらに賛同企業・団体の輪を広げていくため、去る2月22日に「日本経済を活性化するライフスタイル・イノベーション ~企業と個人の有機的成長戦略~」と題するシンポジウムを開催した。以下では、同シンポジウムで行われた基調講演および研究者・企業担当者によるパネルディスカッションの内容を要約して紹介する。

 

基調講演
オフからはじめる成長~残業ゼロと「ポジティブ・オフ」
 吉越浩一郎氏(吉越事務所 代表)

 溝畑 宏 観光庁長官の主催者あいさつに続いて、基調講演に登壇した吉越浩一郎氏は、女性用下着の大手メーカーであるトリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社の代表取締役社長を2006年まで務め、その間に19年連続の増収・増益を実現した名経営者として知られている。
 その実績とともに、吉越氏を世に名高く知らしめたのが、在任中に打ち出したユニークな経営施策の数々。とりわけ、自ら社内を巡回して徹底・実現を図った「残業ゼロ」の取り組みは、かつて多くのメディアで取り上げられ、注目を集めた。

ドイツ企業に学んだ、「仕事を任せること」と「やり切ること」の大切さ

 なぜ残業なしで、19年連続の増収・増益を実現できたのか。吉越氏によれば、それを支えたのは、トップダウンによる強いリーダーシップとメンバーによるフォロワーシップ。フォロワーシップとは、任された仕事を100%やり切ることであり、そのために、いかに上位者がリードしつつ、部下に仕事を任せるかがキーである――と語る。
 「トリンプ社に入社する前、ドイツに本社を置く外資系企業の香港支店で働くことになり、そこで学んだのが、日本との働き方の違いでした。彼らは、仕事中はまったく話をしない。報連相と称して何から何まで話し合い、ワイワイガヤガヤと“活気”のある日本とは大きく異なっていました」
 「そこで私が任されたのは、ローカルマーケットを何年で黒字にしなさい――ということだけ。任された以上は利益を上げなければいけない。やり方はすべて私に任せてくれる。幸い、それをやり切って黒字を出すことができましたが、その時に『なるほど、こういう仕事のやり方をしなくてはいけないんだ』と感じたのです」

プロとしての体力・能力を発揮するために「残業ゼロ」の働き方へ

 ドイツ企業での勤務経験を通じて、吉越氏がもう一つ痛感したのが、日本とヨーロッパの仕事に対するアプローチ、考え方の違いである。
 「仕事の基礎になるのは何かと言えば、間違いなく体力です。皆さんの中で、8時間睡眠をとっている人はどのくらいいるでしょうか? しっかり睡眠をとることで体力が蓄えられ、その上に気力・意力・やる気というものが出てきます。そしてその上に能力が発揮される。会社は、この能力に対してお金を払うわけですが、体力がなければ能力を発揮することはできません」
 「日本人にとって、仕事の対極にあるものと言えば“休み”です。平日は遅くまで残業して、週末はくたびれて寝だめをし、ゴロゴロとテレビを観ている。一方、欧米人にとって仕事の対極は“遊び”です。彼らはバランスよく仕事をして体力を蓄えているので、土日のオフには遊びに行って頭を切り換え、リフレッシュしているのです」
 「会社から給料をもらっている限り、社員はプロ以外の何者でもありません。プロとしてしっかり能力を発揮するためには、よく寝て体力を蓄えなければいけない。生活意識から変えていく必要があるのです。いずれにしても、365日・24時間働くことはできませんから、1日の仕事と生活のどこかに線を引かなければいけない。そこで私は、残業を一切しない・させないという線を引いたのです。その代わり、それまで以上の仕事をする。売り上げ・利益を上げて社員の給料を上げてみせる――そうしてやってきました」

仕事に「デッドライン」をつける

 残業をやめることが最初にありき。ただそれだけでは、上司も部下も仕事が回っていかない。吉越氏が社長として、社内で徹底を図ったことの一つは、すべての仕事に「ここまでで必ず仕上げる」というデッドラインをつけることだった。
 「優先順位をつけて、その日に終えなければならない仕事を明確にする――デッドラインをつけた仕事の与え方をすると、部下は時間を強く意識して仕事に取り組みます。デッドラインを意識して、1時間の仕事を30分で終えていくようなやり方を何年も続けている人と、自分の仕事を楽しみながら十分時間をかけてやっている人とでは、実力に雲泥の差が付きます。これがいわゆるストレッチ、部下を育てていくということだと思います」
 「気をつけたいのは、最初からすべてにデッドラインをつけると、当然ながら回らなくなるということです。同じ日に確認すべきデッドラインが100も出てくると短時間では終わらなくなります。初めは、ゆっくりと少しずつ進めるのがコツです」
 「会社として取り組むべき生産性の高い仕事というのは、“重要度が高く緊急度が低い”ところに山ほどあります。こういったものに上司として、少しずつデッドラインをつけ、部下に任せ、処理してもらっていくのです」

1議題に2分で結論を出す早朝会議

 効率的な業務運営を象徴するもう一つの取り組みが、独特の「早朝会議」だ。当初、部署間のコミュニケーション改善のために、始業1時間前に行うこととしたこの会議は、全役員・全部長・全課長と必要とされる担当者の合計70人ほどが出席する大規模な全社会議へと発展していった。
 その場では各部署からさまざまな話題が上がるが、特に重要とされたのは“即断即決”。1議題当たり約2分で結論を出すというスピード感だ。自ら会議の議長を務めていた吉越氏は、運営のポイントを次のように語る。
 「問題点に対し、緊急対策に再発防止策に横展開と、みんなごちゃまぜにして行う人が多いのですが、手順は分けなければいけません。まず火を消すことだけに集中する。消し終わったらなぜそれが起きたのかを追いかけ、二度と起こさせない。さらに似たようなことが他の部門で起きないか追いかける。そのために、すべての案件は、担当者に結論を持ってきてもらい、それを検討するのです」
 「会議の議事録には、決定事項と“誰が/何を/いつまでに”というデッドラインを明確にさせました。積み残しや先送りは一切許されません。デッドラインの基本は翌日、最長で1週間。1週間以上のものはスケジュール表を提出。単に早くやれと言ってもダメですから、デッドラインを意識的に短縮して、だんだんとスピードアップを図りました」


 吉越氏の「即断即決」経営を物語るこうしたエピソードから、効率よく仕事をしてもらうために取り入れた人事制度の数々まで、90分間の基調講演は幅広い話題に及んだ。
 「オフ」の充実は「オン」の生産性アップと切り離せない関係にある。多くの企業にとってすぐにはハードルが高いかもしれないが、最後に吉越氏から勇気づけられるメッセージが一言。
 「私の座右の銘は『成功するまでやれば必ず成功する』です。諦めてはいけません。最初は頑張って始め、やり切ることが肝心です」

パネルディスカッション
[パネリスト]
・島津明人氏(東京大学大学院 医学研究科 精神保健学分野准教授)
・武石恵美子氏(法政大学 キャリアデザイン学部 教授)
・中川荘一郎氏(㈱高島屋 人事部 人事政策担当次長)
・吉田久子氏(第一生命保険㈱ 人事部 ダイバーシティ推進室長)
[コーディネーター]
・白石真澄氏(関西大学 政策創造学部 教授)

 後半のパネルディスカッションでは、個人や企業、社会にとって“三方良し”の効果が期待される「ポジティブ・オフ」のこれからの展開をめぐり、働く人の健康や働き方の多様化、取り組みを進める賛同企業の現状という視点から議論が行われた。以下、パネリストの発表内容から主なポイントを抜粋して紹介しよう。

充実したオフが良い働きへと波及効果をもたらす(島津氏)

メンタルヘルスとポジティブ・オフとの関係で注目したいのは、良い気分の感情が、家族との間で共有され、伝わっていくという「クロスオーバー効果」だ。例えば、「良い仕事ができた」という充実感は、良い気分となって家庭で家族へと伝わっていく。また、家族で充実したオフを過ごすと、良い気分のまま仕事に取り組むことができ、パフォーマンスが上がるといわれる
働きやすい職場作りにより、充実したオフを過ごすことができる。また充実したオフを過ごすことが良い働き方に結び付く――ということが学術レベルでも明らかになりつつある。こうした、良い気分・感情が広がるクロスオーバー効果は、家族との間だけでなく、上司や部下、同僚との間でも起こることが明らかになっている
クロスオーバー効果は、ストレスやネガティブな感情より、うれしい・楽しいといったポジティブな感情のほうが影響力は強いといわれている。会社の中では、管理職など影響力の強い立場の人が率先して充実したオフを過ごし、生き生きとしていくことが、組織全体の“生き生きさ”の度合いを高めることにつながっていくのではと考えている

「ポジティブ・オン、ネガティブ・オフ」からより多様な働き方へ(武石氏)

日本人の働き方の現状は「ポジティブ・オン、ネガティブ・オフ」だと思う。つまり、日本の場合、目の前の仕事が終わった時が終業時間で、「何時に仕事を終えよう」というオフを意識した業務遂行になっていない。「何時に終わるためにこう段取りをしよう」という時間意識がないと、ポジティブ・オフにはなりにくいだろう
イギリスやドイツと日本の働き方の比較調査を行ったが、イギリス・ドイツでは働く時間や働き方に多様性があり、職場で人それぞれが働きやすさ、能率的な働き方を考えて実践することができる。日本の場合、フレキシビリティに欠けているのか、あるいは個人が自ら選ばないのか、結果的に職場での働き方が画一的になっている。そのため、多様な人材が生かされず、結果として業績もあまり上がらない構造になっていると思う
企業経営の視点から見れば、ポジティブ・オフやワーク・ライフ・バランスは、それら自体が目的ではないと思う。多様な人材の活用や、従業員のモチベーションアップなど、人材マネジメント面での目的があり、そのために休暇や制度を積極的に使ってもらって、それを仕事にフィードバックしてほしいということだろう。そうした面も含め、日本企業は多様な人材活用を進めるために何が必要か、そのための戦略を考えるべき時がきていると思う

充実したオフを「インプットの場」として活用し、仕事でアウトプットしてほしい
(中川氏)

2006年から、ワーク・ライフ・バランスの周知徹底と育児・介護の両立支援を皮切りに全社的取り組みをスタートした。初期の取り組みで力を入れたのが、社内への周知徹底。ガイドブックを作り、パート・契約社員を含め、1万数千人に上る全社員に配布した。そこで示したポイントが、「家庭やプライベートの充実や自分自身の健康が、仕事においても良い影響をもたらす」ということだ
周知の際に併せて伝えたのは、ワーク・ライフ・バランスとは、仕事と生活を天秤にかけて釣り合わせるのではない、ということ。ポジティブ・オフに関しても、仕事を一生懸命やっている人は少し手を抜いてほどほどに働けばよい…という誤解を招きかねないが、そうではない。仕事や家庭、自身の勉強や地域とのつながりなど、人によってやりたいこと、やらなければならないことは数々ある。自分という限られたキャパシティの中で、それらの優先順位を考え、バランスさせながら相乗効果を発揮していく――それがワーク・ライフ・バランスだと考えている
そのために、自分自身の仕事が終わった時間や休暇の時間の使い方をうまくインプットの場として活用して、そのアウトプットを仕事の場で出していってほしい、というイメージで社員には伝えている
具体的な取り組みでは、ボランティア参加のための休暇や、学校行事に参加するための休暇、育児関連の休暇の充実、単身赴任者のための帰省休暇などの制度整備を行っている。こうした休暇を活用し、家族や地域とのつながりを深めてもらうことが、仕事の場、企業にもプラスとなって跳ね返ってくる。これがまさにポジティブ・オフにもつながることであり、今後も制度の充実と周知を進めていきたいと考えている

105項目の「しごとダイエット」でワークスタイル変革を推進(吉田氏)

当社では、ワーク・ライフ・バランス推進の目的として三つの柱を構えている。一つ目は「ダイバーシティの推進」。営業職員まで含めると全職員の9割に上る女性の潜在的能力を、会社の戦力として活用し活性化していくということだ。二つ目は「全従業員の最大限の能力の発揮」。“ライフ”で充実した時間を過ごし、その成果を“ワーク”での生産性向上に活かしてほしいと考えている。三つ目は「人材の確保」。“充実した生活を送れる企業”として企業価値を高め、優秀な人材の採用や離職率低下に結びつけていきたい。すでにこれまでの取り組みでも、離職率の改善では目に見える成果が得られている
これまで、ワーク・ライフ・バランス推進の取り組みは、育児をはじめ家庭と仕事の両立を支援する休暇等の制度充実とワークスタイル変革の二つを柱に進めてきた。後者はもちろん女性のみではなく、全従業員のワークスタイルを見直す視点で、早帰りによる「総労働時間の縮減」と、ポジティブ・オフにもつながる「休暇取得の促進」をポイントとして進めている
労働時間の縮減や休暇取得は、当然掛け声だけでは進まないので、それと同時にトップダウンによる業務量の削減を「しごとダイエット」として取り組んだ。電話やメールや資料など、省けるムダはないかをチェックし直し、105項目に上る業務見直しを全社で行って成果を上げることができた
働きやすい職場作りはもちろん重要なことだが、一番大切なのは、女性の「働きたい」という意思を企業がしっかり受け止め、パフォーマンスを発揮する場を提供して、やりがいを感じてもらうこと。ワーク・ライフ・バランスそのものも、1日何時間働くとか、どれだけ休みを取るとかでなく、一生涯のワークスタイルを視野に考えてもらいたい。そうしたことを従業員に理解してもらうとともに、休みをしっかり取って、自分をリフレッシュさせて、そこから新しい発想が会社へ戻ってくるということを伝えながら、この取り組みを推進していきたいと考えている

(文責:労務行政研究所 編集部)

◎「ポジティブ・オフ」運動に関する最新の情報と、運動への賛同登録のご案内は、観光庁の特別サイトでお知らせしています
 http://www.mlit.go.jp/kankocho/positive-off/


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