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人事担当者のための「福利厚生」の基礎知識 [2012.03.02]

1.福利厚生とは ―企業内のどのような施策・制度を指すのか、その目的とは

 

一般社団法人 企業福祉・共済総合研究所
主任研究員 秋谷 貴洋

1 福利厚生とは

 「広辞苑」(岩波書店)によれば、「福利」は「幸福と利益。幸福をもたらす利益。」、「厚生」は「人民の生活を豊かにすること」と記されています。この二つの言葉を組み合わせて「福利厚生」という言葉を考えれば「幸福をもたらす利益によって、生活を豊かにすること」と言えます。
 これを企業の経営目標を達成するための労務管理の視点から考えれば、一般的には、労働者にとって絶対的あるいは相対的な労働条件ではないものの、会社(事業主)が経営上の必要性に応じて、主に従業員(労働者)を対象に、経済生活や心身の安定を維持するために行う労務管理の一手段で、結果的に両者に利益をもたらす制度と言えます。
なお、労働基準法上では「恩恵的な給付は原則として賃金とみなさない」(昭22.9.13発基17)として福利厚生と賃金との住み分けをしています。
 専門家などの間では「福利厚生」という言葉以外に、「企業福祉」や「産業福祉」(社会福祉に対する言葉)、「勤労者福祉」(企業福祉と労働者福祉とを中立的に表現する言葉)、「厚生福利」(地方公務員法上の表記)などと表現する例も見られます。また、海外においては、その国の労働観や制度的役割からEmployee Benefit(従業員福祉)やFringe Benefit(賃金に付随する意味で付加的給付や賃金外諸給付)などいう名称で呼称されます。
 しかし、一般的に広く周知され、民間だけでなく公務員等を対象とした人事行政の分野においても広く用いられる言葉としては「福利厚生」ということになります。

2 わが国ではどのような施策・制度を指すのか

 わが国の福利厚生は、「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」で構成されています。
 以下、民間企業の福利厚生に絞ってみれば、「法定福利厚生」は、わが国の法律で事業主や従業員に対して法律で加入や費用負担等を義務づけている福利厚生制度で、労働者災害補償保険や雇用保険、健康保険、介護保険、厚生年金保険、などがあります。また、「法定外福利厚生」は、原則的には事業主が労務管理上の必要性などから費用負担を行い、雇用関係に基づいて、従業員(その者の一定の家族を含む場合もある)に対して法定福利厚生制度の補完や職業生活上で必要とされる事項に対して行う現物給付や現金給付による施策といえます。
 [図表]のように、過去から経年的に福利厚生費に関する調査を実施している厚生労働省や日本経済団体連合会では、[図表]のように、「法定福利費」と「法定外福利費」とをそれぞれ定義しています。これらをみると、「法定福利厚生」は社会保険などによる制度が中心的となり、「法定外福利厚生」は、労働者の職業生活を営む上で必要な衣食住(住宅関連、職場給食、被服など)や健康の保持増進、あるいは生活支援(慶弔見舞、財産形成、)に関する施設やサービスの提供、現金給付などの施策が中心となっています。
 なお、実務的には、「法定外福利厚生」を「福利厚生」と呼称する例も多く見られます。

[図表] 「法定福利厚生」ならびに「法定外福利厚生」の定義

3 福利厚生の目的とは

 企業が福利厚生を行う目的は、古くは、社会保障制度が今日のように整備されていない明治時代においては、労働者保護として病気や災害時の救済や、労働力の不足の解消、定着の促進を目的に行われました。その後、明治時代後半から大正時代にかけて、徐々に労働者を保護する法律(鉱業法や工場法)あるいは健康保険法(制定当初は業務上の傷病も給付の対象であった)をはじめとした社会保険法などが成立するにつれて、「法定福利厚生」が形成され、「法定外福利厚生」はそれを補完あるいは機能分担する役割を帯びてきました。
 また、寮や社宅、職場給食や保養所などといった固定施設は、社会的にも供給が少なかった時代の社会基盤の不足を補う役割も担っていましたが、固定施設の供給が社会的にも充実するとともに、企業が保有する固定施設も必要な範囲に集約されてきました。
 今日において、企業が福利厚生を行う主な目的は、統計上では「従業員の定着性の維持・向上」「従業員の勤務モラールの維持・向上」「職場での生産性の維持・向上」「従業員への安心感の提供」「従業員の家庭生活の安定」などが上位項目になる傾向にあります。すなわち、会社は福利厚生を通じて、従業員の定着や生活全般での心の安心、生活の安定を図ることを目的としていることが読み取れます。また、最近では、大規模になるほど、企業の社会的責任として、従業員を一利害関係者として福利厚生諸施策を展開し、福利厚生施設(保養所や運動施設など)の一般への開放や、さらには大規模災害発生時には被災者支援施設(寮や社宅、保養所など)が臨時的に開放された例が見られます。
 一方、従業員にとって、福利厚生から得られる効果は、「リフレッシュできる」「従業員同士が親しくなれる」「従業員の健康の維持、回復に役立つ」「生活費の節約に役に立つ」、「職場の雰囲気が良くなり、仕事がしやすくなる」「家族とのよい関係づくりに役立つ」などが上位項目に挙げられる傾向がみられ、従業員の心身の安定に寄与していることが推測されます。
 福利厚生は賃金のように、従業員の属性や仕事に応じた評価として給付されるよりも、その企業との雇用関係に基づいて、給付事由等が生じた際に一定基準の現物や現金が支給される点に特徴があります。したがって、賃金は個々の従業員に対する成果を定量的に評価することでその個人の士気を高める効果はありますが、それに対して、福利厚生は従業員の職業生活での不安の軽減や心身の安定に寄与することで、個々の従業員にとどまらず集団(組織)として平準的に士気を高揚させ、結果として企業経営に効果をもたらすことを期待して、会社が行う投資であると言えます。

執筆者プロフィール
[写真] 秋谷 貴洋秋谷 貴洋 あきや たかひろ

法政大学大学院 社会科学研究科修士課程修了 1989年に(社)産業労働研究所(現・企業福祉・共済総合研究所)入所。企業福祉や健康保険組合の実務に関する調査や情報収集・提供に関する業務に従事し、現在に至る。

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