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BOOK REVIEW 【編集部】 [2012.03.02]

BOOK REVIEW(73)グローバル化の最大の関門は、日本本社を変えること


『日本企業のグローバル人事戦略』
山西 均 日本経済新聞出版社
四六判・247ページ 2415円(税込)

日本企業のグローバル人事戦略 日本企業のグローバル人事戦略

 

多国籍人材が活躍できる先進企業を目指して、本社改革をいかに進めるか。特殊な雇用制度を見直し、国内と海外支社・外国人を対等に扱う「グローバル・モデル」へ転換するための実現可能な方策と戦略課題を解き明かす。 

■「グローバル人事」の現在

ここ数年、「グローバル人事」という言葉が非常に目立つようになってきています。

例えば、ファーストリテイリング、三菱重工、パナソニックなどのように、外国人新卒採用の拡大に踏み切るケース。そして、トヨタ自動車やNTT コミュニケーションズなどのように若手社員の間から積極的に海外に出して経験を積ませるケースなど、さまざまな企業で「グローバル人材」の獲得・育成に向けた取り組みが行われています。

一方で、社内のカルチャーを、グローバルなものに変えていこうとする企業も現れています。一昨年頃から話題になった、「英語を社内公用語化する」動きなどは、その典型的な例でしょう。

さらに一歩進んで、海外-国内という枠をなくして、グローバルに広がっている企業グループ全体で人事制度を同一のものとし、人材を社内で還流させ、機動的な配置を図ろうとする企業もあります。こうなってくると、もはや海外部門だけでなく、国内の本社自体も、従来の“ドメスティックな日本企業”像から大きく変化することとなります。

■日本本社だけが、海外支社と違った人事制度・報酬制度で活動している

こうした先進的な企業の取り組みを横目に見つつ、「これからは日本市場だけではなく、グローバルな市場で戦えるようにならなければならない」と考える企業は、今後も増えていくのでしょう。実際、製造拠点や販売拠点を海外に持つ企業は、今や決して大手に限られません。

海外で重要な拠点が増えていけば、それに精通した現地人材を、これまで以上に重用しようという動きは当然出てくるでしょう。一方で、これまで日本国内での仕事の進め方だけを知悉(ちしつ)していればよかった国内の社員についても、海外でのビジネスを行うための知識、スキルを身に付けていかなければなりません。――こうした一連の帰結として、「グローバル人事」の必要性を感じ始める企業もまた、増えていくことと思われます。

しかし、本書では、「グローバルに企業活動を行うにあたって、一番障害になっているのは、日本本社の特異性である。日本本社だけが、海外の支社と違った人事制度・報酬制度で活動しているケースが実に多い」と、題目だけの「グローバル人事」へ警鐘を鳴らします。

いったい、どういうことでしょうか?

■「インターナショナル」と「グローバル」はどう違うのか

「インターナショナル」と「グローバル」という二つの言葉があります。どちらもざっくりと言えば「国際化」という似た意味合いで使われますが、どのように違うのでしょうか。

一般的には、グローバルという言葉を使った場合、自国も一要素として含んだ全世界、といった意味が強くなるようです。一方でインターナショナルという言葉であれば、特権的な自国を軸とした諸外国、という意味が強くなるようです。

本書において、経営や人材活用のモデルとして、「インターナショナル・モデル」「グローバル・モデル」が対置されます。
前者は、「日本本社がすべての事業の中心として位置づけられ、重要な判断はすべて日本で行われる。人事制度も日本だけは当然のように他の地域と異なっていて、『日本』と『それ以外』という区分けで運営されている」という在り方です。

対して後者は、「日本は他の地域と並列であり、インターナショナル・モデルのようにすべての地域の中心に位置づけられることはない。またこのモデルでは、組織も人事制度も日本を含めグローバルに統一化される」ことになります。

つまり、日本本社の特権性を維持し、経営上の意思決定は日本人社員だけでやっていこうと考えているのに、「これからはグローバル人事だ」というのは大きな語義矛盾になるわけです。一方で、「インターナショナル・モデル」を墨守するだけでは、当然ながら優秀な海外人材を惹き付けるにも限界があります。果てには「日本人対外国人」といった社内対立の図式ができてしまうかもしれません。

■グローバル化の最大の関門は、日本本社を変えること

「グローバル人事」の実現のために、最も重要なのは日本本社のありようを変革することだ――本書の主張は、結局のところこのように集約されると思います。とはいえ、これは決して簡単な問題ではありません。

こうした中、本書で一貫しているのは、財務の観点から人材価値や人事制度を見るという発想です。本書の付論として、この観点をさらに掘り下げた「人的資産・負債を管理会計上どのように位置づけるか」という論考も併載されています。


――ここまでのご紹介でも分かるように、本書は単にグローバル人事の必要性を押し付ける書籍ではありません(むしろ、気分だけの「グローバル化」を思いとどめる本です)。また、グローバル人事を実現するための「手法」を紹介するだけの書籍でもありません(本書で語られる、雇用をめぐるさまざまな議論には、企業内で人事制度改定をするだけでは実現の難しいものも含まれています)。

とはいえ、ビジネスのグローバル化が急務となっている企業であれば、本書で示される視点の数々に、多くのヒントを見いだせるのではないでしょうか。

目次
第1章 人事制度のグローバル化
第2章 日本本社を変える
第3章 グローバルな適材適所
第4章 外国語とダイバーシティ
第5章 グローバル化を生かす思想と実践
付論 人的資産・負債の管理会計上の取り扱いとその影響について
要約(英語版)English Summary

著者 Profile
山西 均
野村ホールディングス(株)グループHR企画室長。和歌山県出身。1983年、大阪市立大学法学部卒業。野村證券株式会社入社。以後、Nomura Bank(Switzerland)Ltd,Zurich、梅田支店営業課長、Nomura International plc.London,Head of Japanese Equities Sales、Nomura International Ltd.,Hong Kong,Head of Asia Investment Advisory等を経て現職


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