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企業がEAPを活用するコツ [2011.09.29]

第6回 人事労務担当者や管理職からの相談(3) ~EAPの探し方と契約の仕方~

亀田 高志 かめだ たかし

株式会社産業医大ソリューションズ 代表取締役社長・医師

EAPカウンセラーの専門的な役割

実際にEAP機関から人事労務担当者や管理職からの相談に対応するサービスを購入する場合、EAPカウンセラーは本人の問題解決のために、次のような役割(=機能)を果たせる人材でなければならない。

  1. (1) 管理職や人事労務担当者への助言=アドバイスの機能
  2. (2) 本人の医学的評価(精神科医ではないので診断とまではならないが)=アセスメントの機能
  3. (3) 産業医や精神科医への紹介=リファーの機能
  4. (4) 管理職、人事労務担当者、家族、精神科医、産業医による連携の構築=ネットワークの維持機能
  5. (5) 対応の一連の記録や情報の適切な管理=レコードの機能

その他、本人が自殺を試みるなどの事態が想定される場合には、守秘義務より本人や関係者の生命の維持を優先し、情報を開示して、対応に動き出すような、アラームの機能もなくてはならない。例えば、人事労務担当者に緊急の連絡を入れたり、主治医である精神科医に報告する必要がある。また、家族とも連携し、精神科医のところに連れて行く手はずを整えたりするのも重要な対応なのだ。

以上、「アドバイスの機能」「アセスメントの機能」「リファーの機能」「ネットワークの維持機能」「レコードの機能」「アラームの機能」とカタカナで表現した、これら六つの機能は本質的なEAPの付加価値を作る原動力になるのだが、現実にこのような機能を持つ腕のよいEAPカウンセラーはそれほど多くない。その理由としては、次のような点が挙げられる。

  •  EAPカウンセラーは臨床心理士や産業カウンセラーのような資格を持っていることが多い。これらの仕事は、むしろ個人に寄り添い治療に当たったり、問題解決を行うことを目指している。そのため、事例性の解消という企業の立場や職場側の視点には立ちにくい。
  •  事例性の解消は、労務的なセンスと経験を必要とするが、それらは心理学やカウンセラー資格の教育の中では行われない。そのため、対応できるかどうかは、属人的な要素が強い。
  •  EAP機関の側でも事例性の解消を可能にするサービスには人的な投資を行ったり、新しいサービスを作る手間を必要とする。既存の従業員向けサービスである程度の収益が上がっていたり、それが主力の場合には、なかなか踏み出すことができない。

※事例性とは、職場で起きている問題のこと。詳しくは第4回記事をご覧ください。

このような理由で腕のよいEAPカウンセラーを見つけるのは実際には簡単ではない。

できるEAPカウンセラーを探す

人事労務担当者や管理職からの相談のサービスを考える際には、上に示した六つの機能を提供できることを、サービスを購入する時の要件とすることが大切である。それには、それが担えるEAP機関やEAPカウンセラーを見つける必要がある。

では、どのように我々の欲する人事労務担当者や管理職からの相談のサービスを受け付けられる機関やカウンセラーを探せばよいのだろうか。

先に説明したように、人事労務担当者や管理職からの相談のサービスをこなせる専門家は少ないが、筆者の経験上、確実にいるということは言える。興味深いのは、ある程度の歴史と知名度のあるEAP機関には、これらの六つを立派に果たすことのできる、“スター”が1人はいるものなのである。そういった人は国際EAP協会認定のCEAP(認定EAP専門家)の資格を持っていることが多い(ように思う)。また、各機関の指導的な立場で他のカウンセラーや人材の育成にも尽力しているケースも少なくない。

当然、そういったカウンセラーは、EAPの主催する講演会などで講演しているし、インターネットで調べれば本を書いていたり、EAP協会等で活躍しているので探し出すことができる。

また、正攻法で探すなら、EAP機関の営業担当者に、「人事労務担当者や管理職からの相談のサービスを希望するが購入可能か」「それを果たせる人材はいるのか」などと尋ねてもよい。

なお、現実的な対応として、スターは月1回程度の来所とし、そのほかはそのスターをスーパーバイザーとする部下たちに来所してもらい、彼らの連携を密にしてもらうことで、相談対応のレベルを維持してもらうというやり方も打診できるだろう。

実際の契約から利用開始まで

地方ではまだまだ難しいかもしれないが、東京や大阪、一部の地方都市では、ここまでに述べた要求に対応できるEAP機関があるはずだ。

そこで、契約を考える際に、検討するとよいのが予算である。初めに結論を申し上げれば、これを安く済ませるのは難しいと考えたほうがよい。売れっ子のEAPカウンセラーを来所の形で拘束するなら、それなりの時間単価を払わなくては契約は成立しないからだ。

実際にEAPサービスに支払う金額を、もし通常の給与ベースで考えれば、高いと感じる方も多いだろう。しかし、職場のリスクが顕在化した時、あるいは個人と職場の生産性への影響を可視化した場合の金額を考えれば、決して高いとはいえないと考える。具体的には、企業の顧問弁護士や社労士の費用とまではいかなくとも、それに準じるレベルで考えてもよいのかもしれない。

むしろ、人事労務担当者や管理者が相談できる環境が整うことや、問題のある社員が出てきても何とかできるという安心感、そのことで多大な時間とエネルギーを費やさずに本来の人事労務の業務に専念できること、医療の専門家でない者が深くかかわらないで済むなど、メリットは計り知れない。

さて、金額面がクリアできたら、次に実際の契約の場面である。情報の取り扱いや報告のタイミング等について、詳細を詰めていくのがよい。EAPカウンセラーが来所するケースでは、部屋の確保が必要になるだろうし、来所の時間帯以外に相談することが想定されるなら、その場合の費用等の取り扱いも決めておく必要がある。また、EAPカウンセラーが残す記録の内容や取り扱いもあらかじめ相談しておくことも大事な点だ。

サービスが始まった後もすべきことがある。相談の際の対応や事例性の解消が納得のいくレベルか検証することだ。例えば四半期ごとにEAPカウンセラーと営業担当者とともに評価するとよい。その際、産業医や保健師や看護師に一緒に見てもらってもよいだろう。

また、相談した管理職から評判を尋ねたり、アンケートを行ったりして数値化し、時間の経過とともに変化するか否かを見てみるのも一法だ。

さて、EAPの新しい活用の在り方を連続して3回にわたって紹介した。人事労務担当者・職場の管理職が相談をするという点でEAPを活用するためには、彼らが問題認識を正しく持ち、事例性を看過せず、EAPカウンセラーへの相談へとつなげることが大切であると言える。では、職場の管理職が“問題認識”を正しく持ち、“事例性”を見過ごさないために企業ができることは何だろうか。私は、ポイントとなるのは管理職層への研修だと考えている。

そこで、次回はEAP(カウンセラー)による管理職層への研修の方法を紹介しよう。

写真:亀田 高志さん

Profile

亀田 高志 かめだ たかし

株式会社産業医大ソリューションズ 代表取締役社長・医師
1991年産業医科大学医学部卒業後、NKK(現JFEスチール)や日本アイ・ビー・エム(株)で計11年間、専属産業医の実務に従事。2005年に産業医科大学産業医実務研修センター講師となり、2006年10月に産業医科大学による(株)産業医大ソリューションズ設立に伴い現職。
職場の健康管理対策、特にメンタルヘルス対策を専門とし、現在は、企業に対するコンサルティングサービスと研修講師を手がけている。メンタルヘルス相談機関であるEAP(従業員支援プログラム)の活用やゆとり世代等の若手問題の防止やその育成にも詳しい。


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