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企業がEAPを活用するコツ [2011.08.16]

第3回 EAPを選ぶ第一の理由 ~不調者への対応にどのように活用するか~

亀田 高志 かめだ たかし

株式会社産業医大ソリューションズ 代表取締役社長・医師

EAPサービスをなぜ、購入したいのか?

前回はEAPを活用しようとしても企業側の検討が不十分であったり、目的意識があいまいだったりするために、なかなかうまくいかない状況を説明した。そのような状況に対して、解決の糸口を提供するために、今回はEAPサービスを活用する前に自社でニーズをよく検討すべきことをテーマに説明を加えたい。

まず、よく考えていただきたいのは、EAPを利用したいのはなぜなのか? ということである。その点をあいまいにしていると、サービスを購入しても、まず失敗に終わる。

EAPは、本来は業者だから、顧客企業の問題を一目で理解し、解決の提案をすぐにしてくれることを期待したい。しかし、実際には問題がなんだろうと、業者は電話カウンセリングのような、提供できるサービスを売り込むことに集中してしまう。だから、せっかく、EAPと契約しても、本当の問題解決から遠ざかってしまうことになってしまう。

過去にEAPによるサービスを購入したいと思った動機は何だろうか? あるいは現在、サービスを利用しているのはなぜだろうか。今まで実施してきた対策の内容を一度、忘れて、よく見直してほしい。多くの場合には、次のような問題意識からではないだろうか

うつ病等の診断書を出して休んだり、職場での配慮を希望する従業員が増加して、そのことによって

  •  自身が忙しくなった。
  •  人件費のロスが大きくなった。
  •  職場の運営に支障が出る状況が目立つようになった。

本連載の話題とはそれるが、こういった状況に活躍が期待されるのが法的に選任義務のある産業医だ。しかし、産業医そのものが専門だったり、メンタルヘルス対策に詳しい医師はなかなかいない。そのためEAPを活用することにしている企業が多いのである。

EAPサービスに何を期待するか?

さて、不調者の問題だったと思い当たった読者は多いのではないだろうか?だからこそ、それを何とかしたいと思っていないだろうか。

自社でEAPを購入する理由を考えるときに参考になるのが、次の3段階の予防医学の考え方である。この3段階の対策の考え方とともにおのおのに該当するメンタルヘルス対策を以下に列挙してみる。

<予防医学の考え方とメンタルヘルス対策>

  •  三次予防:病気になった人のリハビリや再発の防止すること
    メンタルヘルス不調になった従業員の休業や休職からの職場復帰や再適応のための対策。(いわゆる職場復帰支援プログラムの構築)
  •  二次予防:病気になりそうな人、あるいはなった人を早めに見つけて、早めに治療に結びつけること
    管理職が部下の不調に気付くための研修(いわゆるラインケア研修)や従業員向けのスクリーニング検査の実施、あるいは従業員からの相談窓口の設置。
  •  一次予防:従業員が不調にならないように予防するための対策
    ストレス対処を学ぶセルフケアの研修や職場のストレス軽減のための職場環境改善活動の実施。

さて、予防対策の順番が一から三ではなく、三から一になっていることに気が付かれただろうか。

字面だけ見ていると、一次予防の不調者が発生しないのが理想的に見えるのではないだろうか。ところがこれは極めて困難なのである。

その理由としては、職場のストレスも職場の外のストレス(つまりプライベートの問題)も、コントロールするのは、現代は極めて難しい。個人のストレスへの耐性を強化することも生易しいことではない。いくら自律訓練法の研修を行っても、組織が合併や統合となれば、もともとストレス耐性の弱い人たちはひとたまりもない。あからさまなリストラが始まれば、管理職でも不調を訴えるご時世なのである。

次に早期発見の二次予防がよさそうに見えないだろうか。早めに見つければ、重症にならずに済むし、それだけ職場の問題も防止できそうな気がするわけだ。

ところが、三次予防にあたる職場復帰支援プログラムができてないと、二次予防で早期発見された従業員の世話が、人事担当者のところにまとまって回ってくることになる。それは読者である人事担当者にとって好ましい状況とは思われない。

先の問題意識から考えると、この中で三次予防の強化が、まず優先事項なのである。そこには、産業医の関与を最初に考えたいのだが、それがもしも満たされず、代わりの産業医を用意できない、あるいは追加しないと判断が下ったときにEAPの活用を考えるのが、本来の順序であるといえる。

職場復帰支援プログラムをどのようにEAPと構築するか?

まず、自社にプログラムがなかったら、構築しなければならない。構築といっても社内の不調者の取り扱いルールを決めるだけのことである。ただし、就業規則や社内規程でこれらのルールを決めておかないと、不公平な取り扱いをしていると受け取られたり、対応に労力がかかったりすることになる。厚生労働省も指針等で、このルールの策定を勧めている。

契約を考えているEAPが優れているなら、ルールの策定を一緒に行うことができるはずだ。この点をよく確認するのがよい。

そして、すでに職場復帰支援プログラムがある場合、ないし策定ができたなら、その中でEAPカウンセラーがどのように機能してもらえるのかを見極める必要がある。実際には次のような機能を果たしてもらえるのがよい。

<EAPカウンセラーの職場復帰支援プログラムで果たす機能の例>

  •  人事担当者の依頼や自発的な相談から把握された不調者をある程度、評価すること。
  •  必要だと判断した場合には、専門的な医療機関に紹介すること。
  •  不調と分かった後に、療養中の経過観察やその支援を行うこと。
  •  職場復帰の際の可否判断や社内で就業上の配慮内容の決定に関与できること。
  •  職場復帰後の経過観察(フォローアップ)ができること。
  •  一連の対応で産業医やEAPの内部の医師と連携がとれること。

EAP業者側の人材育成は徐々に進んでいるが、これらは多くのEAPカウンセラーにとって、簡単なことではない。EAP業者としては、自社でできないことが分かっているから、企業からの依頼も手伝って、メンタルヘルスのできる産業医を探すことに四苦八苦していることもあるくらいなのだ。

自社と読者自身の本当のニーズが不調者の対応にあるのなら、勧められるままにストレス調査や研修を行ってもよい結果が生まれないのは明らかなのである。

これを機会にEAPを活用する前に、自社のニーズを見直し、もしも今回触れたような不調者の取り扱いについて、最も優先事項が高いようなら、上述した内容をEAP業者に求めるなり、それができる業者を探されてはいかがだろうか。

次回は、これから注目すべき、EAPカウンセラーによる人事労務担当者や管理職からの従業員からの相談を受け付けるサービスを解説する。

写真:亀田 高志さん

Profile

亀田 高志 かめだ たかし

株式会社産業医大ソリューションズ 代表取締役社長・医師
1991年産業医科大学医学部卒業後、NKK(現JFEスチール)や日本アイ・ビー・エム(株)で計11年間、専属産業医の実務に従事。2005年に産業医科大学産業医実務研修センター講師となり、2006年10月に産業医科大学による(株)産業医大ソリューションズ設立に伴い現職。
職場の健康管理対策、特にメンタルヘルス対策を専門とし、現在は、企業に対するコンサルティングサービスと研修講師を手がけている。メンタルヘルス相談機関であるEAP(従業員支援プログラム)の活用やゆとり世代等の若手問題の防止やその育成にも詳しい。


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