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企業がEAPを活用するコツ [2011.08.02]

第2回 EAPはうまく使えないのが普通 ~よくある落とし穴~

亀田 高志 かめだ たかし

株式会社産業医大ソリューションズ 代表取締役社長・医師

EAPのサービスはこうして始まる

第1回ではEAPへの期待が大きいものの、企業のイメージと本来果たすことのできる機能があいまいであること、日本ではその定義が固まっていないことを紹介した。

そして、そのような事情があるため、職場のメンタルヘルスの問題は深刻であるにもかかわらず、EAPの活用はあまり進んではいないのが実態なのである。

今回はEAPの活用がうまくいかない様子を紹介し、その理由を明らかにしたいと思う。

企業の人事担当者は、メンタルヘルス不調者への対応やその数が増え、何とかしなくてはと思ったとき、あるいは担当役員や人事部門の責任者から何とかするように指示されたとき、一般的には、まずインターネットでメンタルヘルスを検索して、EAP業者を探すようである。そして、有名講師やEAP業者に勤める花形カウンセラーによる無料セミナーに参加をして、サービス商品のチラシをお土産としてもらって帰ることが多い。

いくつかの業者の中から選んで照会すると、EAP業者の営業担当者がやってきて、提供できるサービスを説明する。多くは電話相談とカウンセラーが訪問する個室での対面相談、あるいはホームページを使ったストレス調査やストレスマネジメントに関する研修を提案する。人事担当者は、その中からよさそうなものを選び、予算確保や社内手続きを経て、発注することになる。

EAPの活用はなかなかうまくいかない

その後、晴れて電話相談や対面相談のサービスが開始される。延べ人数を知らされて、あぁそんなものかと思ったりする。対面相談の場合にはカウンセラーはおおむね熱心なもので、時に時間をオーバーしたりもする。

そして、電話相談や対面相談の件数が時々、報告される。延べ人数か実人数かの理解もあいまいなまま、その数があまり多くないこともわかる。しかし、他社の利用率を説明され、そんなものかと思ったりする。

けれどもメンタルヘルス不調者は減らない。あるいは人事担当者としての対応の手間も変わらない状況が続く。

また、ストレス調査が始まった場合には、ネットを用いるのでいかにも新しい対策ということで、最初の印象はよい。多くの人がアクセスしてくれると窓口である人事担当者は期待する。しかし、すべての社員がアクセスしてくれるわけでない。50%ならよいほうで、ひどいと1割とか2割しかアクセスしていないということもある。

気の利いた業者だと匿名の調査ながら、集計結果を性別、年齢階層別や職場別に返してくれたりする。だから、成果が上がっている気になる。しかし、それを継続していても、ストレスの状態が悪いという結果の職場はもともと想像できているところだ。その結果をフィードバックすることについては、難しいだろうなと思ったりする。なぜなら、“やり手”の幹部がいる部署のストレスが強いという結果が出たりするからだ。

毎年、続けていくと、それなりの結果の変化はあるが、対策を具体的に打てるわけでもない状態を続けることになる。

あるいは、研修が行われる。一般従業員向けならリラクセーションや自律訓練法、管理職向けだと積極的傾聴法のようなテーマ設定が多い。年に一度の全国労働衛生週間の最中や社内で催される健康に関するイベントは絶好の機会となる。

そして、関心のある参加者がまずまず集まり、講師の話術が優れていれば、まあまあの反響がある。それなりに効果があるかと期待するが、不調者の数が減るわけでもない。少し時間がたてば、みんな、忘れていってしまう。

もしも、講師の話術が優れない時は評価以前の問題だ。評判が悪いと人事担当者は発注元として嫌な思いをすることになる。この場合には次から期待はできないと考える。

なぜ、活用がうまくいかないのか

このような結果を見て、最後には人事担当者はEAPが役に立たないと結論付けてしまう。不調者への対応の手間が大変だという現実的な理由から発注した場合は、なおさら強くそう思うのだ。不調者が減らないのを目の当たりにすれば、EAP業者の営業担当者のよさそうな説明はなんだったのかと多少、頭にくるかもしれない。

一方、EAP業者としては、できることを精いっぱいやっていると思っている。電話相談を受けているカウンセラーは一生懸命やっているのが普通だ。ストレス調査で、特にウェブを用いる場合には、それなりに投資もしているだろう。カラーできれいな報告書を用意し、考察まで加えるのは手間がかかるが、研修だって講師はプレゼンテーションファイルを作って、事前の打ち合わせを行い、その話題の勉強をしなおして対応しようとしている。営業は営業らしく一生懸命、売ろうとしているし、カウンセラーは専門的な勉強を欠かさない。

けれども顧客企業の人事担当者は満足してくれない。それどころか、値引きばかりを言われるという事態に立ちすくむこともある。

実は大きな枠で見れば、これは双方のコミュニケーションの問題であるし、もう少し突き詰めてみると、発注する側(企業)の人事担当者が自社のニーズとEAPについて、よく理解していないことが問題のように見える。また、EAPの側がそのような状況を理解して、人事担当者を導いてくれるとよいのだが、EAPの側はそれほど成熟していないという問題もあるのである。

企業の側で不調者を問題とするなら、その具体的なスキームを構築し、それを動かせる業者を選ばなくてはならないのだ。

不調者の問題を解消しようと思ったら、不調者の管理の強化、早期発見の仕組みの導入が即効性のある対策だ。不調になりにくい従業員を作るとか、職場のストレスを減らすとかというのは見栄えはいいが、とても困難なことなのだ。

電話や対面での相談はきちんとデザインしないと早期発見には結びつかない。ストレス調査や研修で意図する、いわゆる不調の予防は理論的に非常に難しい。

取りあえず何か対策をすれば効果が出るのではと思う気持ちはよく理解できる。しかし、発注する側の理解が足りないまま、発注したのでは、効果が出ないのである。したがって、まず自社のニーズを明らかにしなくてはならないのである。

次回は、この自社のニーズを明らかにする作業を取り上げる予定である。

写真:亀田 高志さん

Profile

亀田 高志 かめだ たかし

株式会社産業医大ソリューションズ 代表取締役社長・医師
1991年産業医科大学医学部卒業後、NKK(現JFEスチール)や日本アイ・ビー・エム(株)で計11年間、専属産業医の実務に従事。2005年に産業医科大学産業医実務研修センター講師となり、2006年10月に産業医科大学による(株)産業医大ソリューションズ設立に伴い現職。
職場の健康管理対策、特にメンタルヘルス対策を専門とし、現在は、企業に対するコンサルティングサービスと研修講師を手がけている。メンタルヘルス相談機関であるEAP(従業員支援プログラム)の活用やゆとり世代等の若手問題の防止やその育成にも詳しい。


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