jin-jour(ジンジュール) |人材育成、リーダーシップ、モチベーション、メンタルヘルス対策など 人事の視点から、働く人と会社の関係を元気にする情報を発信

ログイン
MENU

メニュー

×

マネジメントの視点からみた ワーク・ライフ・バランス時代の長時間労働削減とは [2011.10.03]

第11回 残業削減に向けた傾向と対策(7)-管理職のなにげない行動が部下の残業を引き起こす3-

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員

前回は、仕事の配分、割り振りという、マネジメントの根幹に関わる部分について、残業の発生要因という視点から述べてみた。なかなか難しい課題ではあるが、難しいからといって放置したままでは前には進まない。こういうときは基本に返って、チームメンバーの能力の洗い出しと仕事の入り具合の把握を踏まえた仕事の配分の見直し、また、進捗管理の徹底から手を付けていくことが肝要である。

今回は、管理職が陥りやすいパターンの中で、管理職の日ごろのなにげない指示の仕方が残業を引き起こすこと、また、管理職自身の行動に潜む残業の発生要因について見ていこう。

図:1.管理職が陥りやすい七つのパターン 1.頼みやすい部下に仕事を頼む 2.ローパフォーマーには仕事を与えない 3.残業前提の仕事の指示 4.意味のない会議の開催 5.必要以上の資料の作成 6.自分がやったほうが早いのでつい自分でやってしまう 7.管理職自身の長時間残業 注)今回は3~7を取り上げる。

1.自分の求めているものを具体的に指示すること

管理職の日々のなにげない行動が部下の残業を引き起こしている例は少なくない。例えば、以下のような光景を見かけたことはないだろうか。

上司から資料の作成を指示されたA君、念には念を入れ、情報を調べに調べ、パワーポイントを駆使して見栄えもよくし、何十枚も資料を作り込んだ。そのためには当然残業もした。ところが、いざ上司に提出したところ「遅い!今まで何をやっていたんだ。そもそもこんなに詳しい資料はいらないのに」と言われてしまった。

管理職が部下に対して仕事を指示する際に忘れてはならないのは、「自分の求めているもの」、すなわち自分のニーズを具体的に指示することである。「何に使うので」「いつまでに」「どの程度詳細な内容で」「何ページくらいで」など、目的、期限、品質、体裁を明確にした上で、仕事を指示しなければならない。さもないとA君のような悲劇を延々と生み出してしまうことになる。

やらなくてもよいことに時間を掛けるほどムダなことはない。部下にしてみれば「上司のニーズを知る」ことは「自分がやらなくていいことを知る」ことの裏返しなのである。

とりわけ、仕事の指示を出す際に特に注意しなければならないのは、安易に「今日中」とか「できるだけ早く」とかいったあいまいな納期を示さないことである。仕事を出す側が、優先順位を付け、そもそもその仕事は本当に必要なのか、いつまでに手元に届けば大丈夫なのかをしっかりと見据えた上で仕事を指示しなければならない。部下の残業を減らすには、仕事をお願いする側の管理職の判断が重要であることを再認識する必要がある。

2.内職できる会議には参加しなくてもよい

そもそも必要以上に資料の作成に時間が掛かるのは、それだけ会議が多いからでもある。しかしながら、会議で配布されはするものの、残念ながら意思決定にはかかわらずに捨てられてしまう資料が数多く作成されているのも現実である。

本来、「会議とは、複数の参加者が自らの保有する情報を提供し、それを材料にしてさまざまな観点から議論を行い、その場で意思決定をし、決まったことには従い、責任を持って行動する」という、企業が短時間で結論を導き出すために非常に効果的な仕組みである。ということは、議論に加わらず、決まったことに対して責任を取らなくてもよい者は参加する必要がない、ということだ。それ以前に、単に情報伝達だけで意思決定をしないようなムダな会議は、思い切ってやめてしまってもかまわないということである。

会議の見直し方法に関しては、書店にさまざまな本が並んでいるので細かいノウハウはそちらに譲るが、最低限意識すべき効率化の視点は[図表2]のとおりである。

これを機会に、現在、社内で開催されているあまたの会議が本来の目的に沿ったものであるかどうか、一度ゼロベースで見直してみたらいかがだろうか。

図:2.会議の効率化の五つのポイント 1.主催者は参加者にテーマや内容を事前に知らせ、目的を明確化する。 2.参加者は何を決めるかを常に意識しながら議論し、最後に決定内容を確認してから終了する。 3.「打ち合わせ」と称して何となく始めたり、時間だけ費やして何も決まらないような会議はやめる。 4.就業時間内に行う。終了時間を決め、次の会議に遅刻しないように遅くても5分前には終了する。 5.会議中に資料を読み上げる時間はなくす。それ以前に「念のため」の資料は作成しない。

3.管理職が率先して長時間労働を抑制する

ムダな会議を減らすだけでも、管理職がマネジメントに費やす時間は増えるが、そもそも管理職だから長時間働いて当たり前、という発想から抜け出せているのであろうか。長時間労働ができないと管理職になれないのであれば、いくら優秀で適性があっても、子育てや介護といった勤務時間に制約がある者は管理職になれないではないか。

管理職の役割は文字どおりマネジメントにある。前回も書いたように、「マネジメントとは、与えられた任務を達成するために、どの部下に何をやらせるかを決定し、具体的に指示を出し、進捗を管理し、その結果に責任を持つ活動」である。自らが朝早くから夜遅くまで現場の第一線で働き続け、自身が特筆した成果を出すのがマネジャーの役割ではない。部下を束ね、チームとして最大の成果を生み出すのがマネジャーの役割なのである。そのために、本来の役割であるマネジメントに費やす時間を生み出すために、効率よく仕事をしたり、部下に権限を委譲して仕事を任せることを、常に意識しなければならないのである。

合わせて、管理職自らが早く帰る。また、休暇を積極的に取ることが定着すれば、早く帰ることや休むことは悪いことではないという意識が職場に広がることにもなる。管理職自らが長時間労働を抑制するために、働き方や仕事の仕方を見直すことが求められる。

さて、次回はいよいよ本連載の最終回である。日本人は「空気」に弱いといわれる。帰りづらい空気が職場にまん延していると、いくら仕事を効率化したり、働き方のムダを省いてもなかなか早く帰ることができない。帰りづらい職場風土はなぜ発生するのか、どうすればよいのかを、労働時間制度と絡めて検討してみたい。

※次回は2011年10月17日に掲載します。

写真:広田 薫さん

Profile

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員
1962年神奈川県横須賀市生まれ。1985年中央大学法学部卒業。2003年法政大学大学院政策科学専攻修士課程修了(政策科学修士)。
厚生労働省などから労働時間管理に関するプロジェクトを20年以上にわたって多数受託・研究。民間企業に対する残業削減、ワーク・ライフ・バランス推進といったテーマの研修・コンサルティング・ソリューション提案などにも豊富な実績を持つ。
主な著書:『経営環境の変化に応じた労働時間管理の進め方(厚生労働省「労働時間制度改善セミナー」テキスト)』(全国労働基準関係団体連合会)、『義務化!65歳までの雇用延長制度導入と実務』(2004年7月発行:日本法令)。なお、本テーマでは『労政時報』第3735号(08.10.10)に『マネジメントの視点から見た残業削減の進め方-生産性向上とワーク・ライフ・バランス実現に向けた長時間労働削減の視点と対応策』を執筆。


労務管理、人事評価、ハラスメント対応など充実のコース!

労務行政eラーニング 詳しくはこちら

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

シリーズ記事

キーワード

ログイン

×

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品