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マネジメントの視点からみた ワーク・ライフ・バランス時代の長時間労働削減とは [2011.09.05]

第9回 残業削減に向けた傾向と対策(5)-管理職のなにげない行動が部下の残業を引き起こす1-

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員

ここまで4回にわたって残業をしている人の意識、行動に焦点を当て、実際に残業をしている人の九つのタイプとそれぞれの残業削減対策について述べてきた。

そこで、今回からは視点を変えて、2回にわたり、管理職の意識や行動に焦点を当て、管理職が発生させてしまう残業について見ていこう。

1.なぜ、残業の削減に管理職のマネジメントが重要なのか

はじめに、なぜ残業の削減に管理職のマネジメントが重要なのかをおさらいしておこう。そのためには、残業が発生するプロセスにまでさかのぼって検討することが必要である。

本来、仕事は、管理職が部下に指示・配分することから始まる。それを受けて部下は、自らの能力を投入して指示・配分された仕事を終わらせよう(成果を上げよう)とし、この間、管理職は必要に応じて部下の仕事の進捗を管理する。ただし、結果として仕事をこなすのに長時間かかってしまい、所定労働時間内では終わらないことがある。この場合、所定労働時間を超えてしまった分が残業となるのである[図表1]。

こうした残業の発生プロセスを見ると、以下の点を明らかにしたうえで対策を講じなければ、残業は削減できない。

  • どういった社員(部下)が
  • どういった管理職(上司)の下で
  • どういった仕事をどういったやり方でしているか

中でも特に重要なのは、「どういった管理職(上司)の下で」といった視点であることが理解できる 。いくら社員がテキパキとムダのない仕方で仕事を片付けていっても、上司の仕事の指示や配分の仕方に問題があれば、残業というものは決してなくならない。だからこそ、管理職の部下に対する仕事の配分と進捗管理、いわゆる日々のマネジメントがうまく機能しているかどうか、またそれ以前に残業に対してどのような意識を持っているのかを、常に検証していかなければならないのである。 1「どういった社員が」については、本連載第5~8回の「残業削減に向けた傾向と対策(1)~(4)」を参照のこと。「どういった労働時間管理下で」については、第11回で触れる予定である。

図:1.残業の発生メカニズム

2.日ごろから仕事それ自体の必要性を検証し、進め方を見直す

そのために、初めに行わなければならないのは、「業務量が多いので残業が発生するのは仕方がない」といった意識を管理職自らが否定、払拭(ふっしょく)することである。確かに、仕事の量そのものが多いので残業でこなさないと終わらない、といったことは少なくない。ただし、これは目の前にある仕事を何の疑いもなく、何の工夫もなくこなしていくといった行動様式を是認した場合についていえることである。今やっている仕事が、果たしてかけただけの時間に見合う価値があるのか、そもそもムダな会議や前例踏襲のルーティン作業に時間を取られ、本来やらなければならない付加価値の高い仕事がないがしろにされているのではないか――こうした視点で仕事を洗い出し、見直してみれば、やめてもかまわない仕事が相当見つかるものだし、やめはしなくてもかける時間をかなり減らすことのできる仕事が見えてくるものである。

勤勉の神様である松下幸之助翁は次のように言っている。「人より1時間、余計に働くことは尊い。努力である。勤勉である。だが、今までよりも1時間少なく働いて、今まで以上の成果を上げることも、また、尊い。そこに人間の働き方の進歩があるのではなかろうか。それは、創意がなくてはできない。工夫がなくてはできない。働くことは尊いが、その働きに工夫がほしいのである。創意がほしいのである。(中略)怠けろというのではない。楽をする工夫をしろというのである。楽々と働いて、なおすばらしい成果が上げられる働き方を、お互いにもっと工夫したいというのである。そこから社会の繁栄も生まれてくるであろう。」(『道をひらく』松下幸之助 PHP研究所)。

要は、管理職の責務は、部下のムダな働き方の結果生じた残業をやめさせることだけではなく、管理職自身がムダな仕事を排除し、創意工夫を施し、単位時間生産性を向上させる――こうした視点から、日ごろから仕事それ自体の必要性を検証し、仕事の進め方を見直すのである。

3.管理職のなにげない行動が部下の残業を引き起こす

併せて、管理職自身が行う仕事の指示の中に部下にムダな仕事をさせてしまうものはないか、といった視点で自身の行動を常にチェックすることが求められている。

[図表2]は、2004年12月に日本能率協会総合研究所の調査モニター(一般職)1884名を対象に実施したアンケート調査結果である。それによれば、残業時間の長い者の直属の上司は、「残業することを前提に仕事の指示をする」が突出して高く、以下、「付き合い残業をさせる」「必要以上に資料の作成を指示する」「社員間の仕事量の平準化を図っていない」と続いている。残業時間の長い者の直属上司の特徴が如実に表われていると思わないだろうか。こうした管理職の日々のなにげない行動の積み重ねが、部下の残業を引き起こしているのだということを自戒しなければならないのである。

図:2.残業時間の長い者の直属の上司の特徴

次回は、この調査結果を踏まえて、[図表3]のような管理職が陥りやすいパターンを取りまとめ、それぞれの具体的な改善策を見ていく。

図:3.管理職が陥りやすい七つのパターン

※次回は2011年9月20日に掲載します。

写真:広田 薫さん

Profile

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員
1962年神奈川県横須賀市生まれ。1985年中央大学法学部卒業。2003年法政大学大学院政策科学専攻修士課程修了(政策科学修士)。
厚生労働省などから労働時間管理に関するプロジェクトを20年以上にわたって多数受託・研究。民間企業に対する残業削減、ワーク・ライフ・バランス推進といったテーマの研修・コンサルティング・ソリューション提案などにも豊富な実績を持つ。
主な著書:『経営環境の変化に応じた労働時間管理の進め方(厚生労働省「労働時間制度改善セミナー」テキスト)』(全国労働基準関係団体連合会)、『義務化!65歳までの雇用延長制度導入と実務』(2004年7月発行:日本法令)。なお、本テーマでは『労政時報』第3735号(08.10.10)に『マネジメントの視点から見た残業削減の進め方-生産性向上とワーク・ライフ・バランス実現に向けた長時間労働削減の視点と対応策』を執筆。


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