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マネジメントの視点からみた ワーク・ライフ・バランス時代の長時間労働削減とは [2011.08.22]

第8回 残業削減に向けた傾向と対策(4)-一見問題のない、いやむしろ一生懸命頑張っているように見えてしまう残業2「がむしゃら残業」「抱え込み残業」-

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員

前回は、「一見問題のない、いやむしろ一生懸命頑張っているように見えてしまう残業」のうち、「自己満足残業」と「独りよがり残業」の二つを取り上げ、それぞれ残業がなぜ発生するのか、削減するにはどうしたらよいのか、について述べた。

今回は、「一見問題のない、いやむしろ一生懸命頑張っているように見えてしまう残業」の残りの二つ、「がむしゃら残業」と「独りよがり残業」を取り上げ、それぞれの残業の傾向と削減に向けた対策を見ていこう。

図:1.自己満足残業、2.独りよがり残業、3.がむしゃら残業、4.抱え込み残業 注)今回は3と4を取り上げる。

1.がむしゃら残業

初っぱなから恐縮であるが、若手社員が早く一人前になりたいといった理由から、また、仕事熱心であるが故に毎日残業を繰り返す――私はこういった残業までもすべて否定し、老若男女一律に定時に帰れというべきではないと思う。とりわけ新入社員や転職した若手社員などについては、新しい仕事に就いて数年間、それこそ寝食を忘れて仕事にのめりこむべきだと思っている。第1回連載1でも述べたように、仕事というものは、実際に現場でこなしていかないと覚えていかないものだからである。仕事をしていくうえで起こった試練を乗り越え、「一皮むけた経験」を積み重ねていくことが、大きな自信となり、仕事を続けていく高いモチベーションにつながる。若い時期にとことん仕事にのめり込むことで知識や経験の"貯金"ができるのである。

[1]仕事にムダはないか?

ただし、こう言い切るためには条件が二つある。一つは、仕事の仕方にムダがないことである。"ダラダラ残業"や"なりゆきまかせ残業"2を繰り返していたり、会社に長くいることが目的になってしまっていたり、長時間残業に自ら酔ってしまっているようであれば、そんな残業はやめさせなければならない。そうではなく、成果に向かって、悩みながらもまずは自らの力で考え、行動し、上司やチームメンバーの力を借りながら前進しているかどうか、また、上司がしっかりと仕事の進捗を管理し、アドバイスを行うというサイクルが回っているかどうか――この二つができていることが一つ目の条件である3。もちろん、度を過ぎた長時間残業は上司がやめさせる勇気を持たなければならないことは言うまでもない。度を過ぎているかどうかは、上司が部下を見守り、進捗管理を徹底していればおのずと見えてくるものである。

[2]仕事を狭くとらえていないか?

二つ目は、仕事というものをあまりにも狭くとらえないことである。仕事というのは1日中パソコンとにらめっこすること、朝早くから夜遅くまで多くの客と会うことだけが仕事だという固定観念から脱却できているかどうか。要はワーカホリックになるのではなく、感性を研ぎ澄ませて、世の中を眺める時間を持つということである。

例えば、私の知人のあるファストファッションの店員は、毎週1回は必ず定時に帰り、ライバル店を見て回り、気になる商品は買ってみたりするのだそうだ。また、毎週2日の休日のうちの1日は渋谷や表参道といった若者の街を散策して、どんな服がはやっているのかを実際に見たり、若者同士で何が話されているのか耳を澄ますのだという。会社の机に座って見聞きできることは、世の中のほんの一部にすぎない。こうした一見余裕とも思えるような時間を意識して取ることにより、世の中の流れを読む洞察力を身につけること、これがビジネスにおける深みを増すのだということを、ぜひとも若いうちから知ってもらいたい。こうした時間をあえて持つことができているかどうかが二つ目の条件である。

この二つの条件を満たしているのであれば、若手社員の残業というものは一概に否定すべきものではないと思うが、みなさんはいかがお考えであろうか。

1詳しくは、第1回連載
「ワーク・ライフ・バランスとはライフステージに応じた労働時間の多様性を担保すること」を参照のこと。

2"ダラダラ残業"や"なりゆきまかせ残業"については、第6回連載
「要残業削減に向けた傾向と対策(2)一見してムダだと分かる残業2」を参照のこと。

3詳しくは、第2回連載
「必要なのは、なぜ残業が発生するのか、その原因を上司と部下でともに考えること」を参照のこと。

2.抱え込み残業

"抱え込み残業"とは、まさしく仕事を抱え込んでしまい、残業をしないと仕事が片付かないことが常態化していることをいう。これには、以下の2つの類型がある。

  • 自分しかできない仕事と思い込み、仕事を抱え込んでしまうケース
  • 一部分でもほかの社員に仕事を渡すと自分のポジションを奪われてしまうのではないかという強迫観念から、なかなか同僚や後輩に渡さないケース

[1]自分しかできない仕事と思い込み、仕事を抱え込んでしまうケース

その人しかできない仕事を持っている方については、素直に称賛すべきであろう。そこに至るまでの努力はよほどのものであることが想像できるからだ。ただし、こうした個人の存在を認めたからといって、会社としてこういう事態を放置してよいということにはならない。会社、職場としてのリスクが大きすぎる。

例えば、こうした方があと5年で定年退職を迎えるなど、期間が決まっている場合であれば対応は可能であろう。その間に、その仕事のやり方を若手社員に時間を掛けて伝えていけばよいからだ。ただし、こういった時間的余裕がない場合はどうだろうか。例えば、事故に遭って突然会社に来られなくなった、親が倒れて介護をしなければならなくなった4、といった突発的な事態が起こったときに、「その人がいませんから仕事ができません、滞っています」では済まないのである。だからこそ、日ごろからチームの中で仕事の「見える化」「共有化」を図り、万が一のときのフォロー体制を構築していくのである。最初からすべてを引き継ぐことは無理とはいえ、仕事を切り分け、やさしいところから徐々に教えていけばよい。

要は、今回の東日本大震災の際のサプライチェーンの寸断とその復旧と同じである。特定の会社しか製造できない部品をできるだけ減らし、万が一のときの代替生産を可能とする――人という側面からもこうしたリスクヘッジをしておくべきである。

[2]一部分でもほかの社員に仕事を渡すと自分のポジションを奪われてしまうのではないかという強迫観念から、なかなか同僚や後輩に渡さないケース

ただし、"抱え込み残業"とは、こうしたある意味で社員の努力の結果として、"抱え込み残業"をせざるを得なくなってしまった場合だけに起こるのではない。残念なことに、一つでも仕事をほかの社員に仕事を渡すと自分のポジションを奪われてしまうのではないかという強迫観念から、なかなか手放さない、その必要もないのにあえて仕事を抱え込んである社員も中には存在するのである。こうした社員には、仕事をしていくうえでの本当のリスクを早めに突きつけたほうがよい。それは、「個人のできる仕事には限界がある。今ある仕事を抱え込んでいると、それだけで精いっぱいで新しい仕事にチャレンジする時間が取れない。結果として視野を広げるチャンスを失ってしまう」ということである。若いころには会社のエースとして第一線で働いていたにもかかわらず、それに甘んじて新しいことを取り入れなかったが故に、いまや窓際社員に成り下がっている、こうした社員になってもよいのか――といったことを語りかけ、こうした行動を取り続けることが長い職業経験の中でどのくらい大きなリスクなのかを認識させるのである。そのうえで、仕事の抱え込みという行動を今後どのように改めていけばよいのか、一度、じっくり時間を取って考えてもらえばよい。

4ある日本を代表するメーカーでは、10年後に2割を超える社員が介護の問題を抱えると試算している。

次回からは視点を変え、残業削減の阻害要因となっている上司の日々のマネジメントに焦点を当てて、幾つかの改善策を提案していきたい。

※次回は2011年9月5日に掲載します。

写真:広田 薫さん

Profile

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員
1962年神奈川県横須賀市生まれ。1985年中央大学法学部卒業。2003年法政大学大学院政策科学専攻修士課程修了(政策科学修士)。
厚生労働省などから労働時間管理に関するプロジェクトを20年以上にわたって多数受託・研究。民間企業に対する残業削減、ワーク・ライフ・バランス推進といったテーマの研修・コンサルティング・ソリューション提案などにも豊富な実績を持つ。
主な著書:『経営環境の変化に応じた労働時間管理の進め方(厚生労働省「労働時間制度改善セミナー」テキスト)』(全国労働基準関係団体連合会)、『義務化!65歳までの雇用延長制度導入と実務』(2004年7月発行:日本法令)。なお、本テーマでは『労政時報』第3735号(08.10.10)に『マネジメントの視点から見た残業削減の進め方-生産性向上とワーク・ライフ・バランス実現に向けた長時間労働削減の視点と対応策』を執筆。


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