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マネジメントの視点からみた ワーク・ライフ・バランス時代の長時間労働削減とは [2011.08.08]

第7回 残業削減に向けた傾向と対策(3)-一見問題のない、いやむしろ一生懸命頑張っているように見えてしまう残業1「自己満足残業」「独りよがり残業」-

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員

前回までは、2回にわたって、「一見してムダだと分かる残業」という比較的イメージしやすい残業の形態について、その傾向と削減に向けた対策を見てきた。ただし、残業はこういった分かりやすいもの、だれもが削減しなければならないと納得できるものばかりではない。

今回からは、「一見問題のない、いやむしろ一生懸命頑張っているように見えてしまう残業」について取り上げ、それぞれ削減しなければならない理由と削減のための対策について見ていこう。まずは、「自己満足残業」と「独りよがり残業」である。

図:1.自己満足残業、2.独りよがり残業、3.がむしゃら残業、4.抱え込み残業 注)今回は1と2を取り上げる。

1.自己満足残業

毎晩遅くまでまじめに仕事をしており、それなりの評価を得てはいるものの、いま一歩伸び悩んでしまっている。時間をかけ、一見立派なレポートを作って本人は満足しているが、上司やクライアントは必ずしもその内容に満足していない。仕事ができないわけではないのに、残業や休日出勤ばかりが多くなってしまう。こうした人は"自己満足残業"を疑ってみるとよい。

仕事には、重要な部分と必ずしもそうではない部分がある。必ずしも重要ではない部分にいくら時間をかけたとしても、それにより重要な部分の質が向上しなければ意味がない。評価されるのは仕事のアウトプットの質であり、それを高めるためには重要な部分にどのくらいの時間をかけられるかによって決まってくる。アウトプットに関係のない作業に何時間かけでも無意味である。

例えば、ある課題の解決策の提案というアウトプットを求められた人の場合を考えてみよう。仕事の流れとしては、まずは現状を把握して問題・課題を抽出し、そのうえで解決策を提案、最後に実現化に向けてスケジュールと予算を提示する、といったプロセスになるだろう。このプロセスの中で重要なのはどの部分であろうか。もちろん、解決策の提案である。解決策を提案するために、現状を分析し、問題・課題を抽出するのである。

ある人は、現状の把握や分析にやたらに時間をかけてしまい、肝心の提案部分を考える時間が取れなくなってしまったと嘆いている。別の人は、情報収集に力を入れすぎるのが癖になってしまい、常に提案書が事例集のようになってしまっている。こうした人があなたの周りにもいないだろうか。このように仕事の配分や時間配分に問題があるのでアウトプットの質が上がらないのであれば、早急に仕事の仕方を正していかなければならない。

ただし、アウトプット自体の質はそれほど問題がないとしても、ありとあらゆる情報を収集しなければ気が済まず、情報の山に埋もれながら、残業や休日出勤を繰り返してやっと解決策まで持っていくような仕事をしている人も少なくない。こうした人のほうが、毎回、それなりのアウトプットを出している分、問題が表に出てこない。だからこそ逆にたちが悪いのである。

こういう人は、仕事の重要な部分とそうでない部分の見極めがつかず、すべての工程を120%の力でこなさないと気が済まないのだ。すべての仕事にかかわる部分を完璧に仕上げようとするあまり、やたらと時間がかかってしまうのである。そういう働き方をしている限り、いつまでたっても残業と休日出勤のわなから抜け出すことはできない。そもそも発注者の求めている成果と本人の達成感とは別物である1。120%の力を出して仕事をこなしたという達成感に満足して、そこでとどまってしまうのではなく、アウトプットの質の向上のために必要なことは何か、例えば、この情報は本当に集める必要があるのか、この作業は本当に必要なのか――を常に考えながら仕事を進めていかなければならないのである。要は、枝葉は気にせず、まずは幹を太くすることに全力を挙げるような仕事のスタイルを身に付けなければならないのである。重要なポイントを見抜き、重要な部分のみ120%の力を発揮してアウトプットを導き出すことが質の高い成果につながることを理解させなければならない。

1仕事を発注した上司やクライアントとしても、あまり重要でもない箇所にやたらに力が入っているレポートを読むと、「この人、この仕事のことを本当に理解しているのだろうか」と不安に思ってしまうものである。そうではなく、わかりやすいアウトプットとそのアウトプットを導くために必要となる説明が簡潔にまとめられたレポートの場合は、読みやすいだけでなく、読み手に対してこの仕事の重要な部分をしっかりと理解したうえで書いているという安心感を与えるものである。

2.独りよがり残業

最近の若手社員は優秀であるという。景気があまりよくない中で就職活動をしてきたせいか、自己主張がうまく、実際に仕事もできる人が多いようだ。ただし、その分、自信過剰な人も多く、それが仕事にマイナスに働いてしまっているという人事担当者からの嘆きの声がよく聞こえてくる。

要は、自分1人の思い込みで仕事をしてしまうのだ。仕事の目的や内容を上司やクライアントといった発注者とよく確認し、すり合わせるという工程を経ないまま、自分なりの解釈で最後まで進めていってしまう。結果、締め切り間際に出てきたものが、発注者の意向に沿ったものではないので、残業や休日出勤でやり直しをせざるを得ない。本人は、よいものができたと意気揚々なのに、発注者からダメ出しされて、不満顔でやり直しをしている。中には、クライアントに対してこちらのほうがよいと意見する者もおり、上司がおわびにうかがわなければならないケースに発展することもある。

こうした独りよがり残業を繰り返す社員に対しては、第一に仕事は趣味とは違う、仕事は発注者の意向に沿わなければならないという当たり前のことをかみ砕いて説明することが必要である。そのうえで、仕事を請けた段階で、仕事のゴール、アウトプットのイメージや方向性、押さえるべきポイントを発注者とすり合わせたうえで仕事に取り掛からせるのである。その際、ゴールやアウトプットに至るまでの道筋、中間報告の日程を組み込んだ「段取り」も併せて描き、この道筋に沿って仕事を進めていく習慣を身に付けさせるのである。

独りよがり残業を繰り返す社員というのは、元々は優秀な社員が多い。だからこそ、「優秀な社員は発注者を不安にさせない」「さまざまな段階で発注者の狙いどおりの報告をすることでイニシアティブを握ることが自身の価値を高めることにつながる」という意識を持たせることで、こうした社員の誇りをくすぐるのである。そうすれでは、独りよがり残業はおのずとなくなっていくものである。

次回は、一見問題のない、いやむしろ一生懸命頑張っているように見えてしまう残業のうち、「がむしゃら残業」と「抱え込み残業」を取り上げ、それぞれの残業のタイプの傾向と削減に向けた対策を見ていこう。

※次回は2011年8月22日に掲載します。

写真:広田 薫さん

Profile

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員
1962年神奈川県横須賀市生まれ。1985年中央大学法学部卒業。2003年法政大学大学院政策科学専攻修士課程修了(政策科学修士)。
厚生労働省などから労働時間管理に関するプロジェクトを20年以上にわたって多数受託・研究。民間企業に対する残業削減、ワーク・ライフ・バランス推進といったテーマの研修・コンサルティング・ソリューション提案などにも豊富な実績を持つ。
主な著書:『経営環境の変化に応じた労働時間管理の進め方(厚生労働省「労働時間制度改善セミナー」テキスト)』(全国労働基準関係団体連合会)、『義務化!65歳までの雇用延長制度導入と実務』(2004年7月発行:日本法令)。なお、本テーマでは『労政時報』第3735号(08.10.10)に『マネジメントの視点から見た残業削減の進め方-生産性向上とワーク・ライフ・バランス実現に向けた長時間労働削減の視点と対応策』を執筆。


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