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マネジメントの視点からみた ワーク・ライフ・バランス時代の長時間労働削減とは [2011.06.13]

第3回 生産性の向上とは最小限のエネルギーで最大のアウトプットを上げること

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員

前回は、ムダな残業を削減するには、仕事が遅れているのか、ないしは仕事の進め方がまずいのか、といった残業が発生する原因を上司と部下でともに考え、対策を講じることが重要であると述べた。早めに対策を講じることによりトラブルの芽を事前に摘んだり、正しい仕事の仕方を覚えさせたりするのである。ただし、なかなかそうはうまくいかないのも事実である。

1.いまだに存在する残業を美化する管理職

先日、韓国のテレビ局から日本人の働き方について取材を受けた。その中で「なぜ、日本企業はワーク・ライフ・バランスを推進するのか」といった質問を受けた1

日本では、1986年に施行された男女雇用機会均等法により採用された女性が子育て時期を迎える1990年代前半に、仕事と育児の両立といった「ファミリーフレンドリー(両立支援)施策」の重要性が認識され、その後、男性の育児への参加機運の醸成、また、高齢社会を迎えるに当たって性別にかかわらず親の介護と仕事との両立の必要性が強調されるようになって今に至る――といったワーク・ライフ・バランス施策の歴史から話し始めた。

すると、すかさず「日本には長時間労働を美化する上司が多いので、ワーク・ライフ・バランスといってもなかなか難しいのではないか」という耳の痛い指摘があった。確かに、「現場作業と違い、ホワイトカラーの仕事は時間では計れない」といって毎日遅くまで仕事をしている者は年齢にかかわらず少なくない。評価や査定を行う際に、同じ成果であっても労働時間が長い部下を「よく頑張った」と高く評価する上司が、いまだに少なからずいるのも事実である。自分より早く帰る部下を協調性のないと影でののしる上司もまだまだ存在しているようだ。自分が「7-11(セブンイレブン)」(朝の7時から夜の11時まで働いていること)だからといって、部下にまでこうした働き方を強要する上司がいるといった声も聞こえてくる。

ただし、こういった状況が変わりつつあることもまた事実である。以前、日本を代表する製造業の経営者の方の話を聞いたことがある。その方は、社長就任に当たって全社員に向かって次のように訴えた。
「私は社員時代めったに残業しなかった。残業しないと仕事が終わらないのは仕事が遅い証拠であり、恥ずかしいと思っていた。今でもその気持ちは変わらない。そもそも生産性の向上とはインプットを下げることとアウトプットを上げることの二つを両立させることではじめてかなうもの。製造現場をよく見ろ。いかにリードタイムを短くしていくか、日々、血のにじむような努力をしているではないか。ホワイトカラーといえども、投入時間を短くしたうえで、成果を上げないと生産性が向上したとはいえない。私が社長になったからには、ホワイトカラーの単位時間生産性の向上が必須命題である」と。

1筆者のワーク・ライフ・バランスに対する考え方は、第1回連載「ワーク・ライフ・バランスとはライフステージに応じた労働時間の多様性を担保すること」を参照のこと。

2.生産性の向上とは成果に向けて最短距離で進むこと

このように、ホワイトカラーの生産性の向上とは、最大の成果を上げるために最短の距離で進むことの重要性を認識し、実際にこうした仕事のやり方を身に付け、実行に移すことから始まるのである。

そのためには、前回も述べたように、次のように対応していくことが重要となってくる。

  • ①上司は、部下に対して適材適所か育成かを明確にして仕事を配分する
  • ②あらかじめ、仕事のゴール、アウトプットのイメージや方向性、押さえるべきポイントを上司と部下とで共有したうえで仕事に取り掛かる
  • ③部下は上司に、適宜、進ちょく状況を報告し、必要に応じて上司は具体的なアドバイスを行い、方向性にズレがあれば早めに修正する

こうした①~③の流れを繰り返すことにより、ミスを事前に防止し、ムダな作業を行わずに成果に向かって一直線に進んでいくように部下を導くことが求められるのである。

合わせて、管理職は職場にあふれているムダな会議やルーティン作業を廃し、付加価値の高い仕事に傾注できる環境を作ることも重要である。管理職が管理するのは結果や数字だけではない。それだけではなく、部下を見守り、仕事の仕方にアドバイスを与え、意識を変えるよう仕向け、仕事のしやすい環境を整備する、これが管理職の本来担わなければならない役割なのである。

3.節電時代を生き抜くために働き方の抜本的な見直しを

こうした考え方が徐々に日本企業にも根付いてきている――といった話をしていく中で、最後に、「この流れはこのたびの東日本大震災により変化するのかどうか」と尋ねられた。

この質問に対して、私は次のように答えた。
「長期的な電力不足などに対処するためには、最小限のエネルギーで最大のアウトプットを上げることがますます重要になる。そのためには、今までのようなエンドレスな働き方を容認するのではなく、仕事の効率化を図り、限られた時間の中で最大の成果を上げるように、個人、組織、会社それぞれが意識を持ち、できるところから着実に実行していかなければならない」と。

要は、前半後半45分ずつ、合計90分という限られた時間内で決着をつけるサッカー型の仕事の仕方を身に付けなければならないのである。あの、決着がつくまで何時間かかるかわからないプロ野球であっても、電力事情を考慮して、3時間30分を超えたら延長に入らないと決めたではないか。私たちの働き方、意識そのものを抜本的に見直さなければならない時期に来ているのである。

次回は、私たちの働き方や意識を見直す契機として重要となる「ノー残業デー」の定着方法について述べるとともに、成果に向かって一直線に進んでいく際に障害となっているムダな働き方、すなわち残業の発生原因を明らかにしていきたい。

図 生産性の向上とは

図:生産性の向上とは 成果に向かって最短距離で進むことが求められている

※次回は2011年6月27日に掲載します。

写真:広田 薫さん

Profile

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員
1962年神奈川県横須賀市生まれ。1985年中央大学法学部卒業。2003年法政大学大学院政策科学専攻修士課程修了(政策科学修士)。
厚生労働省などから労働時間管理に関するプロジェクトを20年以上にわたって多数受託・研究。民間企業に対する残業削減、ワーク・ライフ・バランス推進といったテーマの研修・コンサルティング・ソリューション提案などにも豊富な実績を持つ。
主な著書:『経営環境の変化に応じた労働時間管理の進め方(厚生労働省「労働時間制度改善セミナー」テキスト)』(全国労働基準関係団体連合会)、『義務化!65歳までの雇用延長制度導入と実務』(2004年7月発行:日本法令)。なお、本テーマでは『労政時報』第3735号(08.10.10)に『マネジメントの視点から見た残業削減の進め方-生産性向上とワーク・ライフ・バランス実現に向けた長時間労働削減の視点と対応策』を執筆。


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