jin-jour(ジンジュール) |人材育成、リーダーシップ、モチベーション、メンタルヘルス対策など 人事の視点から、働く人と会社の関係を元気にする情報を発信

ログイン
MENU

メニュー

×

マネジメントの視点からみた ワーク・ライフ・バランス時代の長時間労働削減とは [2011.05.25]

第2回 重要なのは、なぜ残業が発生するのか、その原因を上司と部下でともに考えること

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員

前回は、ワーク・ライフ・バランスを、若いうちには多少の残業はいとわずに"ライフワーク(生涯を捧げるだけの価値のある仕事)"を早く見つけ、それを育児や介護で中断・断念することのないよう、必要に応じて短時間勤務を選択できるような、ライフステージに応じた労働時間の調整を可能にすることであると定義づけた。だからこそ、最近よく言われているような、老若男女一律に毎日定時に帰らせることには意味がないと思うのである。

一方で、ワーク・ライフ・バランス施策の導入とその前提となる長時間労働の削減をこれ以上推し進めることは、我が国の美徳とされる勤勉さを自ら失わせていることであり、企業競争力を弱めてしまい、韓国や中国、インドに置いてきぼりを食らい、結果として亡国の道を歩んでしまうといった意見が聞かれるようになっている。

1.評判が悪い残業時間の上限設定

先日、あるメーカーの管理職の方と話をする機会があった。その方の勤務する会社では、労働基準監督署の立ち入り検査で指導を受けたことを受け、36協定の上限時間である1カ月45時間を超える残業が認められなくなったそうである。合わせてご丁寧なことに、残業が45時間に達すると、本人とその上司あてに「45時間に達したので残業は控えるように」といった警告メールが届くのだそうだ。彼が言うには、それからが管理職の地獄の始まりで、それでなくとも月末の忙しいときに、「職場内で45時間まで余裕のある部下を探し出し、45時間に達した社員の仕事を割り振らなければならない。こうした余裕のある部下が常にいるわけもなく、最終的には時間管理の対象外である管理職の自分が仕事をかぶったことも少なくない。これでは仕事の品質に自信が持てないし、私のワーク・ライフ・バランスはどうなるのか。そもそも長時間労働は資源のない我が国が生き残っていくには必要不可欠であり、私の若いころは・・・」、と延々と愚痴を聞かされる羽目になってしまった。

2.なぜ、月末にバタバタするのか

ただし、この話を聞いて1つ疑問に思ったことがある。「なぜ、あなたは月末にバタバタするのか。月初と月中にあなたは管理職として何をしているのか、部下にどのように接しているのか」と。

「なぜ、残業が発生するのか」、私なりの答えを出そう。それは、仕事が当初立てた計画どおりに進んでいないからである。仕事が計画どおりに進んでいないからこそ、それをカバーするために残業せざるを得ないのである。これを月末まで放置しておくから、同僚に迷惑をかけ、上司が尻ぬぐいをし、最悪の場合、お客様にも迷惑をかけてしまうのである。

重要なのは、なぜ残業が発生するのか、その原因を上司と部下でともに考え、早めに対策を講じることである。それによりトラブルの芽を事前に摘むのである。相手が若い部下であれば、こうしたプロセスを経ることで正しい仕事の仕方、進め方を覚えさせるのである。

3.上司がやらなければならないこととは

それでは、日々のマネジメントとして上司がやらなければならないことは何なのだろうか。

1つは、仕事に取り掛かる前に、仕事のゴール、アウトプットのイメージや方向性、押さえるべきポイントを上司と部下とで念入りに話し合って共有することである。

2つは、部下は上司に、適宜、進ちょく状況を報告し、上司は必要に応じて具体的なアドバイスを行い、方向性にズレがあれば早めに修正することである。

具体的には、以下の5つのサイクルを意識的に回すことである。

①上司が部下に対して仕事の目標と仕様、期限を提示し、

②部下にアウトプットイメージを考えさせ、それを上司が修正し上司と部下とで共有したうえで、

③部下は自己の裁量の範囲内で仕事を行い、

④上司に対して報告と相談(現状はこうなっている、ここまでできたのでこうしたいと思う)を行いながら、

⑤上司が具体的な指示や指導、アドバイスを行うことでゴールに近づいていく

こうした仕組みを作ったうえで、部下に仕事を「任せる」のである。どんなに頑張っても方角が定まっていなければムダな努力に過ぎないことを教え、仕事を進めるということは、目標に向かって何をすべきか逆算してロードマップを描き、そのとおりに段取りよく進めていくことであることを、こうした経験を積ませながら理解させるのである。

なお、こうしたサイクルを回すうえで重要になるのが、④と⑤に当たる進ちょく管理である。進ちょく管理を円滑に行うには、いくつかの方法がある。1つは、「残業時間管理表」や「稼動表」といったツールを使う場合である[図表1、2参照]。

「残業時間管理表」は、どのような仕事をいつまで残業で行うのかを、部下が上司に申請し、上司はこれをみて、部下の仕事の進ちょく状況を確認するとともに、「こうしたらもっと早く終わるのでは」などとアドバイスをする際に用いるものである。

図表1 残業時間管理表

図1:残業時間管理表

一方、「稼動表」は仕事ベースで管理するもので、退社時にどの仕事に何時間かかったのかを、部下が記入し、上司はこれをみて、「この仕事にこんなに時間がかかっているのはおかしい」とか「この仕事は締め切りが○日だから、そろそろ手掛けるようにいわなくては」などといった判断を下し、部下に対処するためのものである。

図表2 稼動表

図2:稼動表

もちろん、こういったツールを使うまでもなく、毎日朝礼を行い、部下1人ずつに、昨日した仕事と、今日行う予定の仕事を発表してもらい、上司が気になる点を問い掛けるといった方法もある。

いずれにしても、始めにやらなければならないのは、進ちょく管理を通じて、上司は、部下が残業で何をしているのかを知ることである。そのうえで、仕事が遅れているのか、仕事の進め方がまずいのか、その原因に応じた対策を講じることである。仕事を任せることと、部下を放置することとは根本的に異なる。

次回は、残業を美化する上司と部下に対する対処法を押さえたうえで、長時間労働削減対策の考え方について述べてみたい。

※次回は2011年6月13日に掲載します。

写真:広田 薫さん

Profile

広田 薫 ひろたかおる

日本能率協会総合研究所 組織・人材戦略研究部 主幹研究員
1962年神奈川県横須賀市生まれ。1985年中央大学法学部卒業。2003年法政大学大学院政策科学専攻修士課程修了(政策科学修士)。
厚生労働省などから労働時間管理に関するプロジェクトを20年以上にわたって多数受託・研究。民間企業に対する残業削減、ワーク・ライフ・バランス推進といったテーマの研修・コンサルティング・ソリューション提案などにも豊富な実績を持つ。
主な著書:『経営環境の変化に応じた労働時間管理の進め方(厚生労働省「労働時間制度改善セミナー」テキスト)』(全国労働基準関係団体連合会)、『義務化!65歳までの雇用延長制度導入と実務』(2004年7月発行:日本法令)。なお、本テーマでは『労政時報』第3735号(08.10.10)に『マネジメントの視点から見た残業削減の進め方-生産性向上とワーク・ライフ・バランス実現に向けた長時間労働削減の視点と対応策』を執筆。


管理職のeラーニング講座、お試しできます

無料トライアル受付中

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

シリーズ記事

キーワード

ログイン

×

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品