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[2011.06.27]

賞与の支給日が遅れた場合や支給日までに定年退職した者に対して、支給日在籍要件を適用してよいですか?


A 支給日在籍要件を設けること自体に問題はありませんが、ケースによっては注意すべきことがあります。

1.賞与の請求権

賞与は、一般的に、賞与を算定する一定の期間の勤務に対して、一定期日に支給されるものです。賞与の計算期間内に勤務した人は、たとえ賞与支給期日までに退職しても、特段の定めのない限りは、賞与を請求する権利があり(賞与請求権を有する)、また賞与計算期間の一部だけ勤務して、途中で退職した人にも、特段の定めのない限りは、計算期間中の勤務期間の割合に応じた請求権があるとされています。
これらは、あくまでも「特段の定めのない限り」ということが前提となっています。つまり、もし就業規則などで定めれば、そちらのルールに従うことになります。具体的に、「賞与は、支給日現在在籍する者についてのみ支給する」というようないわゆる賞与支給日在籍要件を定めた場合には、その規定が有効となります。つまり、支給日に在籍している従業員には使用者に対しての賞与請求権があり、支給日に在籍していない従業員には賞与請求権はないと考えられます。実際に判例も、賞与支給日在籍要件を有効と判断しています(参考資料①~②)。

2.賞与支給日が大幅に遅れた場合や退職者に対する支給日在籍要件

ただし、賞与の支給日が大幅に遅れた場合で、支給日在籍要件を理由として支給を行わなかったケースについては、本来の支給日に在籍していた従業員に、賞与受給権を認めた例があります(参考資料③)。
また、整理解雇のように使用者が一方的に解雇の効力発生日を設定できるような場合には、支給日在籍要件を根拠に賞与を支給しないというのは、公序良俗に反し無効と判断されます。一方で、定年退職者も退職日を選択できないものですが、定年退職者に対する支給日在籍要件を有効とした裁判例(参考資料④)もあります。

<参考資料>
①大和銀行事件(最高裁一小 昭57.10.7判決)
被上告人銀行においては、年2回の決算期の中間時点を支給日と定めて当該支給日に在籍している者に対してのみ、支給されるという慣行が存在し、就業規則の賞与支給日在籍条項は、従業員組合の要請によってこの慣行を就業規則の中に明文化したにとどまるものであって、その内容は合理性を有するものである。

②京都新聞社事件(最高裁一小 昭60.11.28判決・・・明文化された規定がなくても、支給日在籍要件が労使慣行として成立しており、有効とされた例)
「賞与はその支給日に在籍している従業員及び嘱託のみに支給する。但し、賞与の計算期間中に在籍し、支給日に在籍しない定年退職または死亡退職の従業員、 嘱託に対しては例外的に支給する」といった労働慣行が成立している場合、その内容において不合理なものということはできない。

③須賀工業事件(東京地裁 平12.2.14判決)
支給日在籍要件を就業規則に定めることは不合理であるとは一概にはいえないが、賞与の支給日在籍支給要件の「支給日」とは、支給が予定されていた日である と解するべきであるとし、賞与の支給が予定より遅れた場合であって、本来の支給日に在籍していた労働者は、その後に退職したとしても賞与受給権があるとし て賞与の請求を容認した例。

④カツデン事件(東京地裁 平8.10.29判決)
支給対象期間勤務しているにもかかわらず支給されないのは不合理である旨主張するが、賞与の前記性質及び支給日在籍要件も給与規程に明記されていることか らすれば、支給対象期間経過後支給日の前日までに退職した者に不測の損害を与えるものとはいえないし、支給日在籍者と不在籍者との間に不当な差別を設ける ものということもできない。したがって、支給日在籍要件を定める就業規則等の規定は労働基準法一条の趣旨等に反して無効であるとする原告の主張は採用し難い。

⑤コープこうべ事件(神戸地裁 平15.2.12判決)
定年退職した者等退職日を任意に選択することができない職員に対し,継続勤務要件を満たさないことを理由に労働の対償としての性格を有する賞与を支給しないのは公序良俗に違反するとの議論もあり得るところであるが,原告らは,自らの意思に基づいて本件制度の適用を申請し,被告を退職したものであり,本件制度の適用を申請せずに継続勤務要件を満たして夏季賞与の支給を受けることもできたのであるから,退職日を任意に選択することができなかったとはいえない。

回答者 益田浩一郎 社会保険労務士(益田社会保険労務士事務所 代表)


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