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人事コンサルティング業界の現状と活用のポイント [2012.03.02]

コンサルティング・ファームの業界地図


【1】人事コンサルティング業界は成熟期に

 日本における人事コンサルティング業界は、いつごろ生まれ、どのように発展してきたのだろう[図表1]。
 例えば、外資系の大手人事コンサルティング・ファームが日本で営業を開始したのは、おおむね25年から35年くらい前、すなわち1970年代から1980年代にかけてである。当初、彼らの仕事はほとんどが外資系企業の日本法人に対するサービスであった。つまり外国企業が日本に進出し業務を拡大する際に、人事制度を作るとか就業規則を整えるとかいったことが主な仕事だったわけで、日本企業の顧客はまだまだ珍しい存在だった。そもそも当時の日本は外国から「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などと言われ、終身雇用・年功序列・企業別労働組合という「三種の神器」を持つ日本型経営こそが国際競争力の秘訣だ――などと言われていたから、外資系の人事コンサルタントの出る幕は少なかったのではないだろうか。
 しかし、1990年代に入ると、日本の競争力が低下し、いわゆる成果主義の人事制度改革が隆盛を極めるようになる。多くの日本企業が相次いで終身雇用を否定し、脱・年功序列を志向し、いわゆる欧米流の人事マネジメントを採り入れようとしたのである。この成果主義ブームによって人事コンサルティングの市場は一気に広がった。そして、外資系の人事コンサルタント会社が急拡大したばかりでなく、日系および他業種からの参入も相次いだ。
 例えば、それまで研修や労務管理のアウトソーシングをサービスしてきた日本の中小・中堅コンサルタントが、人事制度のコンサルティングなどにも積極的に進出するようになった。日系の○○総研

図表1 人事コンサルティング業界の変遷

と言われるようなリサーチ機関も、本格的に人事コンサルティングも手掛けるようになった。また内外のIT・システムコンサルタントが、組織マネジメントのコンサルティングも行うようになった。
 しかし、ブームというのは、いつかは終わる。成果主義の人事制度改革はひととおり普及した。コンピテンシーや目標管理も、もう新奇なものではなくなった。そのため、一時は雨後のタケノコのように増殖した人事コンサルタントも、いまでは選別と淘汰の時期を迎えている。コンサルティング業界は成熟期に達したのである。

【2】サービスラインによる分類

 今日の人事コンサルティング・ファームは、サービスラインの観点から見ると、以下の三つに大別できる[図表2]。

①ブティック型
 研修、コーチング、労務管理、報酬調査など、あるサービスを業務の中心に据えているファーム。アパレル業界におけるブティック(専門店)に例えられるところから、「ブティック型」とよく呼ばれる。

図表2 今日の人事コンサルティング業界

 規模としては小規模(数人〜十数人)から中規模(数十人)が一般的である。この領域は、大手ファームのコンサルタントや人事実務のベテランが独立して始めたファームも多い。そのため、創業メンバーの得意分野を業務の中心に据え、強みを活かして勝負するというスタイルを採っている。また、国際的な専門ファームの日本法人というものも、あまり多くはないが存在する。
 ブティック型は「知る人ぞ知る」存在だ。そこに所属するコンサルタントは優秀かつ有名であっても、会社自体の知名度は低いということが往々にしてある。したがって、顧客開拓の要は主要メンバーの人脈や、既存顧客などからの紹介である。いわゆる「一見さん」の顧客(事前に何の関係性もなく顧客になること)は稀である。
 ブティック型のファームは、当然ながら何でもできるわけではない。強い分野には強いが、弱い分野には弱いという傾向が顕著である。したがって、多岐にわたるサービスが要求されるようなケースを、ブティック型に一任するのは難しいかもしれない。
 しかし、ブティック型は一般的に経営形態がシンプルであるため、運営コストが低い。そのためサービスも比較的に安価であることが多い。しかもサービスを提供するのが経験豊富なコンサルタントであれば、サービスの費用対効果も高いことが期待できる。また、サービスを絞り込んでいるだけに、非常に質の高いものを提供している会社もある。

②総合人事サービス型
 人事・人材マネジメントにかかわる広範なサービスを提供しているファーム。具体的には、人事制度、人材開発(教育研修・アセスメント)、組織開発(意識改革・風土変革)、情報調査(報酬データ・各国生計費)、退職金・年金制度、年金資産の運用、人事業務アウトソーシング、人材紹介――などのうちから、複数をカバーしているのがこのタイプのファームの特徴である。もっとも、これだけ多岐にわたるサービスをすべてプロフェッショナルな水準で提供できるというファームは、筆者の知る限り日本にはまだない。
 総合人事サービス型では、複数のサービスをそれぞれ部門として抱えているので、人数的には中規模(数十人)からやや大規模(百人超)になるのが一般的である。会社としてこれだけの規模になるためには、資本や知的資本がある程度しっかりしていなくてはならない。そのため、このタイプのファームは組織としての総合力で勝負するというところが多い。
 この型の会社の多くは、市場に対してある程度のブランド力を持っている。したがって、その営業も、既存顧客からの紹介といったベーシックなものだけでなく、ブランド力を活かした方法が採られている。例えば自社でセミナーを開催し、集まった聴衆に対して後で営業フォローをかける。あるいは本の出版や雑誌への寄稿を行い、それを読み関心を持った会社から問い合わせを受ける。ブティック型と異なり、「一見さん」の顧客が比較的多いのが特徴といえるだろう。
 総合人事サービス型の場合、組織はほとんどが多階層から成るピラミッド構造となっており、フラットなブティック型に比べると、そもそも組織運営のコストが高い。特に外資系のコンサルティング会社の場合には、日本の社長や会長の上に、さらにアジア地域のヘッドとかグローバルの役員などが何人もいる。無論、それが国際的な総合サービスを可能にしているわけだから、それは必要なコストであるのだが、日本国内で完結する単体のサービスの価格だけを見たときには、例えば日系のブティック型と比べて高い感じがするかもしれない。
 しかし、組織としての安定感やサービス範囲の広さから、依頼して間違いはない(少ない)という安心感は得られるだろう。

③ビジネスコンサルタント型
 人事サービスだけでなく、IT、戦略、会計など、総合的なビジネスコンサルティングを提供しているファーム。成り立ちとして、人事サービスについては他の業務よりも後にスタートしたところが多い。そのため、世の中的には人事コンサルティングというよりも総合ビジネスコンサルティング・ファームとして認識されているようだ。
 この型のファームには、数百人から千人を超す大規模なところも珍しくない。ただし、人事・人材関係のサービスについては数十人規模ということもよくある。また、サービスラインも総合人事サービス型に比べると狭いことがある。例えば、人事制度、人材開発、組織開発などはカバーしているが、情報調査、年金制度、資産運用などはやっていないというところもよく見受けられる。
 ビジネスコンサルタント型では、人事・人材コンサルティング部門に他の部門から仕事が紹介されることが多いのが営業上の大きな特色だ。例えば、会計部門の顧客が人事・人材がらみの問題を抱えているとか、IT部門のプロジェクトで人事・人材がらみの課題も解決しないといけないとか、戦略部門で請け負ったM&A支援の実行段階で人事・人材マネジメントの専門知識が必要だ――といった具合にニーズが出てくるのである。もちろん人事コンサルティング部門でも自身の顧客開拓は行う。
 人事コンサルティングに限ってみた場合には、このタイプが最も新しい。そのため初期においては、ノウハウやスキル水準はどうしても専門の人事コンサルティング・ファームのほうに一日の長があったように思われる。しかし近年では、組織としての蓄積も人材の充実も進み、業界において存在感を増している。

舞田竜宣
まいた たつのぶ  
組織コンサルタント/多摩大学大学院 客員教授

 東京大学経済学部卒業。組織行動変革の専門コンサルタント会社を経て、マーサーおよびヒューイット・アソシエイツ(現・エーオンヒューイットジャパン)でグローバルな人事・組織コンサルティングを行う。ヒューイット・アソシエイツ日本法人社長などを経て現職。日本人材マネジメント協会(JSHRM)幹事。著書に『社員が惚れる会社のつくり方』(日本実業出版社)、『行動分析学マネジメント』(日本経済新聞出版社)、『10年後の人事』(日本経団連出版)、『18歳から読む就「勝」本』(C&R研究所、共著)など、監修書籍として『人事労務用語辞典[第7版]』(日本経団連出版)がある。


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