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解剖!“外資”に学ぶ人材マネジメント
File:4 イケア
[2011.03.03]

解剖!“外資”に学ぶ人材マネジメント ~今さら聞けない成果主義の本当のトコロ【イケア編①】


File:4 イケア(1/2)
和田東子(わだ とうこ HRDジャーナリスト)

スウェーデンを代表するグローバル企業として躍進を続けているイケア。北欧スタイルを体感できるインテリアの総合ブランドとして人気を集めていますが、オフィスもそのイメージどおり、何から何まで北欧スタイルのオシャレ空間です。
ここで、”ノルディック・マネジメントスタイル”とでもいうべき、徹底的に「対話」を重視する評価制度について、ヒューマンリソース・マネジャーの下風亜子さんに聞きました。

<企業データ>
創業
:1943年(スウェーデン)
総売上高:約2兆4000億円
従業員数:12万3000人(39カ国)
事業内容:家具等の製造・小売り

<評価制度概要>
●各人の役割と責任はジョブディスクリプションで定義(“バリュー”要素を含む)
●業務目標とコミュニケーションについての評価は50%/50%
●社員全員年俸制。異動の85%は社内公募制で決定

■そこまで「対話」する?――社員全員でアクションプラン

下風 イケアでは目標設定に特徴があり、ユニットや部署のアクションプランを立てる過程に、全社員を巻き込んでいきます。全員で「私たちのアクションプラン」を作成するのです。

――それはどのように進めるのですか?

下風 まず会社から、来期の方向性やゴールについて発表があり、その目的や目指すところについて説明があります。これをしっかり理解したうえで、会社の戦略を実現するために、ユニットや部署として、どのような行動を取ればよいのかを、各人からできる限りアイデアを集めて、アクションプランに集約していきます。このときワークショップを開くのです。ワークショップにはパートタイマーも含めた全社員が参加します。

ヒューマンリソース・マネジャー 下風亜子さん

――それは非常にユニークですね。ワークショップは各組織のマネジャーやリーダーが進めるのですか? それとも人事部門が進めるのですか?

下風 ワークショップの進め方は、ユニットに任せています。例えば新しく出店したばかりのストアであれば、まだ組織が落ち着いていないので、「今年は部門ごとにワークショップを開こう」と考えるかもしれません。また別の組織では、「うちは部門間のコミュニケーションが課題なので、今年は部門横断的なチームをつくって考えてみよう」と考えるかもしれません。

組織によって状況が異なるので、やり方は自由にしているのです。ワークショップの進め方についても、アイデアを募りながら考えていきます。

――進め方も話し合って決めるのですね。このような形で目標を落とし込んでいく方法は初めて聞きました。決め方に何かガイドラインはあるのですか?

下風 特にありませんよ。これは人事から、「いついつまでに何時間でやってください」などと通知するような性質のものではないからです。そのため、時間はかかります。例えばストアは交替制ですので、全員にワークショップを行うと最低でも1カ月は必要です。それでもこのプロセスに時間をかけることは、イケアにとって重要だと考えています。その意味で、このワークショップは“投資”なのです。

■部下に目標を提示しない上司

――個人目標はどのように設定するのですか? 複数人数で行うワークショップで、そこまで話し合うのですか?

下風 最終的に個人に落とし込む際には、マネジャーとの1対1の面談になります。

――個人目標の場合、各人のポジションや役割に応じて、適切な目標の大きさ、難易度を設定することが重要です。御社ではそこはどのように保っているのですか?

下風 まずだれにとっても、ジョブディスクリプション(職務定義書)で定められたことを果たすことが求められます。そのうえでプロジェクトを活用するのです。イケアでは時々のビジネス課題について、いろいろなプロジェクトが走っています。

例えば、同じ人事マネジャーといっても、1年目の人と5年目の人とではできることに差があります。1年目の人事マネジャーなら基本業務に専念してもらい、5年目の人事マネジャーであればプロジェクトを任せていきます。プロジェクトは戦略的な重要性とともに、社員に成長機会を提供するという点でも重視しています。

――その場合は上司が「あなたには今年、これを任せます」と言って仕事を渡すのですか?

下風 ですからそれが、対話を通じて、ということなのです。年間のサイクルですので前年の評価の際にも面談をします。その対話の中で、自分を振り返り、デベロップメントポイントは分かっていますので、当然「ここをやります」といった話が出てきますよね。マネジャーが目標を切り分け、「あなたにはこれをやってもらいます」と、上から与えるようなものでは決してありません。

■“普通の会社”とは、まったく違うのです

――コラボレーションやチームワークといった要素は、どのように目標に反映されるのですか。通常はコンピテンシーやバリュー評価で扱う企業が多いのですが。

下風 イケアのバリュー(価値観)をまとめた「バリューブック」があります。コラボレーションやチームワークといった要素は、その中で触れられています。これらの内容はジョブディスクリプションにすでに反映されています。

――なるほど、業務の目標の中に、バリュー要素として含まれているということですね。では、目標はどのように示すのでしょうか。目標設定は、通常はできるだけ客観的な数値で示そうとするものですが。

下風 ゴールはすごくクリアです。リージョン(販売店のある地域)やストアのゴールが明確にあり、それを分割してブレイクダウンしたユニットや部門のゴールもあります。どんな部門でもさまざまなKPI(重要経営指標)で状況を見ます。セールス部門のマネジャーは対前年比何%といった数字を担います。それは企業ですから、当然です。

ただ、その数字が達成できたとかできないとか、白黒つけることではないのです……何て言うんでしょう、多分、すごく違うのだと思います。私自身、前の会社とは大きく違うと感じますから。

――でも目標は明確にしなければなりませんよね。

下風 もちろんです。一番大切なことは目標設定の段階で、お互いの期待を明確にして共有化することです。そのためにこそ、対話をしています。例えば、年度末には「パフォーマンスエバリュエーション(評価)」という業務の評価面談を行います。これには部下1人につき2時間かけています。評価が終わると、すぐに次の期の目標設定です。これはデベロップメントトークといって、目標設定と育成強化ポイントを考えます。やはり2時間かけます。期の途中には中間レビューを行います。これも2時間です。

つまり1人につき年間6時間、じっくり1対1で話す時間を確保しているのです。全員に対してこの時間を確保するために、きちんとスケジューリングすることはマネジャーの仕事です。私たちはその6時間は人材育成に必要な、大切な投資だと位置づけています。そのため何かチェックリストをつけるような、機械的な評価を行ったり、目標を上司が部下に与えるといったことはしません。

目標設定から評価までの流れ(クリックして拡大)

■取材の感想(1)

――実のところ取材中、ずっと疑問が消えませんでした。ジョブディスクリプションに基づいた目標設定、評価の適正化を図るタレントレビューやレポートラインチェック、各部門の業績を見るためのKPIの導入……要するに、他の企業と同じように「やることはやっている」のです。それにもかかわらず、イケアでは対話が大事なのだといい、実際、対話に非常に労力を割いています。

対話は社員の納得性を高めるためともいえますが、イケアの手法は、自部門のアクションプランに対する非常に高いコミットメントを引き出すことができています。一見きれいな言葉を連ねるイケアの仕組みの裏には、「それだけではないだろう、もっと本質的な何かがある……」と思っていました。
それはオープンでオシャレなミーティングルームや、そこを行き交う社内の人たち、その場で見聞きするすべてのものから“何か違うもの”を感じたからかもしれません。

次回はこの疑問に答え、イケアのいう「対話」とは何なのか、その本質を解き明かしたいと思います。

IKEA Point①

●1カ月以上かけて部門のアクションプランを全員で作る
●ジョブディスクリプションに、もともとバリューが落とし込まれている
●ジョブディスクリプションとプロジェクトの組み合わせで、各人に合わせた目標設定を可能にしている
●目標は上司が“与える”ものではない


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