jin-jour(ジンジュール) |人材育成、リーダーシップ、モチベーション、メンタルヘルス対策など 人事の視点から、働く人と会社の関係を元気にする情報を発信

ログイン
MENU

メニュー

×

解剖!“外資”に学ぶ人材マネジメント
File:2 住友スリーエム
[2010.11.12]

解剖! “外資”に学ぶ人材マネジメント ~今さら聞けない成果主義の本当のトコロ【住友スリーエム編③】

 

File:2 住友スリーエム(3/3)
和田東子(わだ とうこ)HRDジャーナリスト

どんな企業にとっても、「個人の成果を組織の業績に結びつける」ことが重要ですが、それを実現するのは簡単なことではありません。社員の自発的な行動を尊重する一方で、目標達成にしっかり向かわせる仕組みをもつ住友スリーエム(3M)。住友スリーエム編の最後に、同社がどのようにしてこの課題をクリアしているのかに迫ります。 

■個人の成果を組織の業績に結びつける極意

――行動評価等に相当するリーダーシップアトリビュート」は絶対評価ですが、貢献度考課は絶対評価ですか、それとも相対評価ですか?

渋谷 貢献度評価は絶対評価で行っています。無理な相対評価は必要ないと考えているからです。各部門全体の業績は、部員全員の総和になるはずです。この考え方に基づけば、貢献度考課を絶対評価で行っても、部門の目標達成度と個人の貢献度に応じて相対化され、実感に沿ったものになるはず、というのが我々のスタンスなのです。

――考え方としては魅力的ですが、その実践は簡単なことではありませんよね。

渋谷 目標は会社全体の事業の目標があり、それが事業部門ごとにブレイクダウンされ、そこからさらに部にブレイクダウンされ、最終的には個人の目標に落とし込まれていきます。事業部門ごとに事業目標が決定され、それを部に割り振った段階で、部長が自部門内の仕事の割り振りをロジックツリーを作って考えるようにしています。

※ロジックツリー:重点課題を挙げ、原因、解決策、それを達成するための個別具体的な施策へ落とし込んでいく思考方法。

――例えば渋谷さんの人事部門であれば、どのようなブレイクダウンの仕方になるのでしょうか?

渋谷 例えば「ハイポテンシャル人材の育成を各ビジネスユニットで促進するために、育成用のオプションを人事としてもっと用意する」というプロジェクトを行うとします。プロジェクトを完成するために、データベース構築が必要、各部門のニーズ把握が必要、会社の承認が必要といったように、工程を明らかにします。次にだれにどの仕事を割り振るのか、いつまでにどの程度のレベルで完成させる必要があるのかを、工程ごとに考えるのです。最終的には、部下全員の目標を総和するとプロジェクトが完成するはずです。

渋谷和久さん(ビジネスパートナー人事部 部長)

――そのようなロジックツリーを作るには、その事業達成に必要な工程を洗い出し、進行等も含めて、かなり具体的に考えていくことが求められますよね。それができないと、ロジックツリーで仕事を割り振ることができません。これはプロジェクトマネジメントと同じようなことを、目標設定時に考えていくということですね。

■極めて重要な部長の役割

渋谷 どこまで実現できているかはわかりませんが、基本的にはそういうことです。目標はなるべく数値化しますが、定性的な目標では、数値化が難しいことも多々あります。そのため仕事の「できばえ」のレベル感とタイムラインを、評価の時に話し合うのではなく、目標設定時に部下と共有してください、と強調しています。

いわば部長は、一次評価者であるマネジャーが部下の目標をスムーズに設定できるようにするために、ロジックツリーで道筋を考えているわけです。

――部長の役割が極めて重要ですね。この部分が、個人の成果を組織の業績に結びつけるキモといえます。

渋谷 だから我々は、評価について無理矢理、相対評価する必要はないと考えているのです。期初に個人の目標を部門の目標に結びつくように調整を行うことで、目標が低くなることも防いでいます。

――そうなると、個人にとって高い目標設定をすることとは、上司が提示したものに対して、「私は(それ以上に)ここまでやります」とどれだけ言えるかという意味になります。だからこそ、「15%ルール」等によって、社員自身がワクワクできるような環境をつくるルールや文化が重要だということですね。ところで、評価の妥当性はどのように維持していますか? 上司に対する考課者訓練のようなものを行っているのでしょうか?

渋谷 評価時にはビジネスユニットごとに「マネジメントチームレビュー(MTR)」という、管理職層の横串レビューを行っています。所管する役員がオーナーシップを取り、事業部長の方々が役員に対して部門内の各人の評価についてレビューを行うのです。人事部はファシリテーターとして、この会議の進行・サポートをします。MTRは二段階で実施されており、事業部長に対して部長が行うものと、部長に対してその下の一次考課者が行うものがあります。

MTRの目的は、部門の評価分布および個人の評価の検証です。貢献度考課もリーダーシップアトリビュートも行います。特にリーダーシップアトリビュートは、考課者になったばかりの人だと、レベル感がつかめず平均を大きく超える評価をつけることがあるので、そういった評価には“ダメ出し”が入るのです。このプロセスを経て評価を確定していくため、評価は全社的にみてバランスの取れたものになっていきます。

■戦略的ローテーションでハイポテンシャル人材を育成

渋谷 またMTRでは、ハイポテンシャル人材や管理職候補者のスクリーニングも行われます。

MTRと対になるものとして、組織の健康診断(ヘルスオブオーガニゼーション/HOO)もあります。各部門の人事課題を事業部長・部長がレビューを行い、それを参加者で共有して組織全体の状況を把握するのです。また、後継者育成計画、女性活用なども検討します。例えば、ある部で後継者がいないということになれば、ハイポテンシャル人材を3年かけて育てていこうということになったり、そのためにローテーションを検討したりするのです。

――そこでローテーションも検討するのですか。

渋谷 はい。これからは5年以上同じ仕事をしている人のプールを作り、育成のために、この人たちのローテーションを積極的に行うことを検討しています。上司からすると同じ仕事をしてもらっていると安心感があるのですが、本人の成長のためには違う仕事に就かせたほうがよいといえます。このような「長期滞留している人」を特定して、ローテーションを検討しています。

――ローテーションは、ハイポテンシャル人材が優先されますか?

渋谷 基本的はそうです。ポテンシャルの低い人の場合、逆にローテーションをしてしまうと生産性が低くなったり、メンタル的な問題が出てきてしまったりといったことも考えられます。このような人は理由を明らかにして、ローテーションはしません。また、我々スタッフ部門では、ローテーションは難しいというケースもあります。法務や知的財産の担当者となると極めて専門性が高いので動かせません。こういった場合も理由を明らかにして、この人は動かさない、と決めるわけです。

――管理職に対しては、育成やチームワークを求める仕組みはありますか? リーダーシップアトリビュートでカバーされているのでしょうか?

渋谷 リーダーシップアトリビュートもそうですし、職務基準書にも明記されています。また、チームワーク醸成の仕組みとしては、例えば販売職ではセールスインセンティブを導入していますが、それはグループインセンティブにしています。したがって、チームに一人ハイパフォーマーがいても、グループとしての数字が悪ければインセンティブの額は低くなります。

販売部長にしても、この仕組みは大事にしたいという人が多いですね。私もチームの一体感は非常に大切だと思っています。目標を達成したら月末にチームで飲みに行くといった雰囲気の中で、人は力を発揮できるのではないでしょうか。

とはいえ、これも日本的な考え方のようで、中国人からすると「なんでインセンティブが個人業績じゃなくグループ単位なんだ。そんな制度で、社員が転職してしまわないのか?」と聞かれたこともありました(笑)。でも、ここは大切にしたい部分です。

<住友スリーエム編 まとめ>

住友スリーエムの取材を通じて感じたのは、高い目標を立てることの本質的な意味です。社員個人にとって高い目標を設定することは、業績うんぬん以前に、「やりたいこと」をもてるか否かにも関係しています。より高い挑戦を自分に課せないことは、個人にとってはむしろ残念なことかもしれません。挑戦とそこで感じるワクワク感を、仕事の中で見いだせないということだからです。

●住友スリーエムの評価制度の特徴は、昇進・昇格・降格を柔軟に行えることに力点を置き、結果として年収にフレキシビリティーがあるという点にある。
●目標設定の妥当性を維持するために、部長が部門目標達成をプロジェクトマネジメント的な方法で各人にブレイクダウンし、確実に個人の日々の活動を会社業績に結びつけているのも非常にユニーク。
●「15%ルール」に代表される数々の施策によって、社員の“自主性の尊重”を会社が守る一方で、高い目標達成を求める“手綱”がきちんとあることが、「イノベーティブカンパニー」たる住友スリーエムの強さを生み出している。

–完–


労務管理、人事評価、ハラスメント対応など充実のコース!

労務行政eラーニング 詳しくはこちら

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

ログイン

×

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品