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解剖!“外資”に学ぶ人材マネジメント
File:1 ジョンソン・エンド・ジョンソン
[2010.09.30]

解剖!"外資"に学ぶ人材マネジメント ~今さら聞けない成果主義の本当のトコロ【ジョンソン・エンド・ジョンソン編③】


File:1 ジョンソン・エンド・ジョンソン(3/3)
和田東子(わだ とうこ)HRDジャーナリスト

成果主義のよくある批判として「チームワークや育成が疎かになる」「地道な仕事をする人がいなくなる」といったものがあります。J&Jではこれらのものはコンピテンシー評価に組み込むことで“成果主義の弊害”をコントロールしています。

さらに見逃せないのは、降格が普通に行われていることです。降格は“困った社員”の影響力を減じる組織の自浄作用として機能していますが、納得性のある降格を行い、周囲の人々のモチベーションを減じないためにはどのような工夫があるのでしょうか。

 

■「業績が悪いから」という理由で降格されることはない

――前回(2/3 参照)、コンピテンシー評価の話が出ましたが、通常業務をきちんとやるといった部分は、コンピテンシー評価でカバーされるということですね。チームワークや育成といったものもコンピテンシー評価でカバーしているのですか。

大島 そうです。チームワークや育成は、J&J社員が備えているべきコンピテンシーである「グローバル・リーダーシップ・プロファイル」(GLP)を実践するに当たって必ず入ってきます。GLPの項目の1つに「コラボレーション(協働)の奨励」があり、これはよりよい相互の信頼関係や関係性を構築しているかを見るものです。部下をもつ立場になれば、当然ここに育成が入ってきますし、チームワークへの配慮はだれもが求められます。

左から安藤彩さん(人事総務本部人事部企画グループ)、大島恵美さん(人事総務本部人事部企画グループシニアマネジャー)

――コンピテンシー評価は、GLPに基づいて設計されているのですね。GLPは御社の企業理念である「クレド」を具現化するための行動や価値観を示したものですよね。

大島 そうです。それだけにコンピテンシーで悪い評価を取るというのは、結構厳しいことなのです。ありていに言えば、昇格はもちろん、降格もコンピテンシー評価で決定するからです。

コンピテンシーが悪いということは、そもそもその人はその等級にマッチしていないのではないかと判断されます。そのため自分がやるべき通常業務を疎かにしたり、チームワークや育成に貢献しない人は、マネージャーからは外されていきます。

――降格は100%コンピテンシー評価なのですか?

大島 もちろん、ある程度のポジションになれば、あまりに業績が悪いと問題になりますが、基本的にはコンピテンシー評価です。
人間だれでも好不調があるため業績は上下します。しかし、コンピテンシーはそれほど上下するものではありません。業績が悪いからという理由で降格される例はまずありません。

――降格はどの程度あるのですか。
KKK非常に珍しいのでしょうか。

大島 それほど多いとは思いませんが、日本企業の常識から考えれば比較的多いでしょうね。毎年、数十人は降格されています。

――降格された人のモチベーションはどうですか。
KKK心理的な受け入れ度合いは?

大島 降格といった場合に2種類あります。明らかにマネージャーとして問題があるという人と、プレーヤーとして非常に優秀であったがマネージャーには向かなかった人です。例えば、営業部門で、営業的なセンスや能力は高く、ガンガン売れる。でもマネージャーには向かないという人はやはりいます。こういった場合は、むしろ降格して営業に戻ったほうが年収が高くなる可能性もあります。一度マネージャーにトライアルはしたのですから、割と気持ちを切り換えていっていると思います。

――コンピテンシー評価導入はいつからですか?
KKK導入の背景は何かあったのでしょうか。

大島 実は2000年に成果主義を加速して、大変成功したのです。賞与は業績で決定しますが、年収に占める賞与の割合を大きくし、さらには評価間格差を0%から200%までと幅を大きくしました。その結果、劇的な効果があったのです。ある成熟市場を担当している部門がありました。この市場は弊社のシェアが大変高く、かつ長年のお客様も固定していました。何年も減少することもないかわりに、大きく成長することもないと思われていたのです。ところが2000年の改革で、賞与の幅を大きくしたところ前年比160%くらいの割合で伸びたのです。これには驚きました。

しかしその反面、数年経過の後、やはりチームワークが希薄になったのではないかという反省が社内でも上がりました。そこで、2005年にコンピテンシー評価を導入したのです。それまでは13の事業部が、それぞれ異なる評価制度を採用していました。行動評価、コンピテンシー評価、年功的な評価、業績評価のみなどバラバラで。それをコンピテンシー評価で一本化したのです。

※J&Jでは社員に求めるコンピテンシーを「グローバル・リーダーシップ・プロファイル(GLP)」として整理している。(詳しくはこちら)

大島 J&Jの業績評価は厳しい反面、育成的です。各人にチャレンジングな目標を設定させることで、成長を促すからです。制度の名前である「チャレンジ&レビュー」にも、その意図が表れています。また「能力開発計画シート」を使った育成システムがあります。これはコンピテンシー項目のなかで、自分が今期強化しようと思うものを書き、その強化を図るというものです。

安藤 コンピテンシーは日々の行動指針です。私は机の前に、自分のバンドのコンピテンシーと1つ上のバンドのコンピテンシーをコピーして貼ってあります。自分がどのように行動すればよいのかを考えるときに、自分のバンドに求められていることを確認するだけではなく、上のバンドも見るのです。

――すごいですね。確かにそれは成長につながる使い方といえますね。
KKK御社のコンピテンシーはかなり具体的に設定されていますよね。

大島 これはGLPに基づいて各部門、各バンド(等級)に落とし込まれたもので、個人はこれをさらに具体的な行動に落とし込んで各期の取り組み目標とします。毎年、各部門で見直しを行っています。コンピテンシー評価は、結構、厳しいですよ(笑)。

 

■J&Jの「タダ乗り社員」への対処法

今回の取材で感じたのは、降格されれば、当然ながら、だれでもモチベーションは下がるのだ、ということです。大島さんの言うように「気持ちを切り換えられる」のは、一部の人だけなのかもしれません。しかし大事なポイントがあります。それは同社が降格を行うことで、「タダ乗り社員」や「腐ったリンゴ社員」の組織内での影響力を減じている点です。

ここ最近「フリーライダー」「タダ乗り社員」という言葉を見かけます。「仕事をしていないのに高いポジションにいるタダ乗り社員」「地位をカサにきて、周囲のモチベーションを下げるなどの悪影響を及ぼす腐ったリンゴ社員」などが、やり玉にあがっています。

外資系企業では降格があることで、このようなタダ乗り社員や腐ったリンゴ社員が高いポジションに居座ることなく、他の社員への悪影響が最小限に抑えられています。そのためJ&Jの組織内の雰囲気は、この問題をそのまま抱えている組織よりも、ずっと風通しがよく、明るくて朗らかです。

<J&Jのまとめ>

●J&Jで注目したいのは、ルールと運用の組み合わせの“妙”です。
業績評価とコンピテンシー評価という二本立ての制度や、「目標は4つまで」というルールがある一方で、目標や評価のレベル合わせは現場のマネジャーの議論によってなされていたり、仕事の割り振りに対する柔軟性があります。つまり制度やルールの落とし穴を回避する対策を考え、ルール化しているのです。そのことで現場の実情に合った運用が可能になっています。

●コンピテンシー評価について、入社3年目の安藤さんは非常に意欲的に、一種楽しんで活用しているのに対し、役職者である大島さんが「厳しい」と笑いながら評したのも印象的でした。
「上位役職者ほど、組織へのより大きな貢献とコミットメント(役割に対する責任と義務)が求められる」という部分を、日々の行動レベルでも求められているからだと思います。しかし、それは“上司”として正しい姿ではないでしょうか。貢献に対する強い責任と義務を担うからこそ、それに見合った報酬を手にするのです。

 –完–

※J&Jのコンピテンシー評価と業績評価

 

J&Jのコンピテンシーは、「グローバル・リーダーシップ・プロファイル」(GLP)に整理されている。GLPはクレドの価値観を具体化したもので、各部門、各等級ごとに求められるコンピテンシーにまでブレイクダウンされる。

コンピテンシー評価は「コンピテンシー評価シート」で管理され、「顧客・市場へのフォーカス」「イノベーションの推進」「コラボレーション(協働)の奨励」「複雑な状況の掌握・変革の実現」「組織・人材の開発」の5分野10項目について評価を行う。評価は「Bandを大幅に上回る」「上回る」「Band相当」「下回る」の4段階。

期初にコンピテンシー評価シートで示される「Band相当のコンピテンシーレベル」を参考に、自分としてどのような行動を取ればコンピテンシーを発揮できるか目標を設定する。

J&Jの評価は、業績評価(成果主義)とコンピテンシー評価の二本立て。ただし、シニアリーダー(日本企業でいえば部長クラス以上)になると、評価が一本化される。シニアマネジャークラスまでは、業績があまりよくなくてもコンピテンシーが高ければ評価されるが、シニアリーダークラスには、「業績だけでもダメ。コンピテンシーだけでもダメ。両方できるのが当たり前」という、より厳しいレベルを求められるからだ。


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