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Dr.カワシタの誌上健康診断・心得帳【河下太志】 [2011.10.25]

血糖値と糖尿病―Dr.カワシタの誌上健康診断・心得帳(3)


Dr.カワシタの誌上健康診断・心得帳(3)
河下太志 かわしたふとし
リクルートグループ 統括産業医

人類が誕生して500万年の歴史の中で、肥満が問題になったのは、せいぜいこの30年くらいです。それまでの間は、食うに困り、低くなりがちな血糖値を維持するのが、精一杯でした。そのため、我々の体の中には、血糖値を上げるホルモンは何種類もあるのですが、血糖値を下げるホルモンは唯一インスリンしかありません。

しかし、飽食の時代に入り、上がり続ける血糖値に、人間の体は対処できず、糖尿病が増えるようになったのです(遺伝的要素の強い糖尿病は除きます)。

さて、今回は血糖値、特に生活習慣病としての糖尿病をピックアップします(遺伝的・体質的糖尿病については、今回は取り上げません)。

『糖尿病とは』
~何も起こらなくても、放置すると恐ろしいことに・・・~

飽食の現代で、生活習慣が乱れ、インスリンの働きがうまく機能しなくなり、血糖値のコントロール不安定になった状態を糖尿病といいます。この血糖値が高くなると、どんな症状があるかといいますと、長い間、何も起こりません。ものすごく高い場合は、意識不明の状態に陥ることもありますが、そんな事態はめったにはないでしょう。

何も起こらないから、平気というのは大きな誤解。糖尿病の怖さは、その状態を数年以上放置した後に訪れます。

『糖尿病の怖さ』
~失明、腎不全、神経障害が3大合併症~

糖尿病の怖さは、その合併症にあります。失明の原因となる糖尿病性網膜症。透析となることもしばしばである腎不全。手足がしびれ、歩けなくなることもある神経障害。この3大合併症をはじめとして、そのほかにも免疫力が弱り、容易に肺炎にかかり重症化するようなこともあります。本当に合併症は恐ろしいものです。

以前、私が勤務医をしていた時のこと、ある日、両足がくるぶしの上あたりまで、すっかり変色し、足の指は、腐って形がなくなり、感染を起こしている患者さんが救急外来に運ばれてきました。実は、この方は、血糖値が高い状態を20年ほど放置しており、糖尿病性の壊疽(えそ)を起こしていたのです。そのことは私に「糖尿病は怖い!」という強烈な印象を与えたのです。

『糖尿病の医療費』
~重症化するごとに、医療費もどんどん高額に~

糖尿病になると、体の心配もそうですが、お金の心配もしなければなりません。日本にいる限りは、医療費の自己負担3割であることや高額療養費制度があるので、諸外国に比べると医療費の心配は低いのかもしれません。しかし、実際の医療費総額は、どれくらいかかるのでしょうか。

糖尿病になると、大体1カ月に1回の診察料と内服薬を合わせて、年間15万円くらい(うち3割が自己負担)かかります。これが、インスリンを投与するとなると、年間50万円くらいになります。腎不全を引き起こし、人工透析が必要となると、年間数百万円かかります。

血糖値が高いと民間の保険に入りにくいことや、行政が医療費を減らそうと躍起になって、メタボ対策を行い、糖尿病を減らそうとするかが分かります。

『ずばり、血糖値はこれくらいになると危ない』
~自分の血糖値、分かりますか?~

健康診断結果、血糖値の判定(要医療か、否か)は、多くの医療機関で110 mg/dLか126 mg/dLを判断基準の境にしています。その理由は、糖尿病の診断基準により126 mg/dL以上が「糖尿病」、100~110 mg/dLが、「正常高値」と国際的に決められているからです。(表1参照)

表1 糖尿病基準値(mg/dL)

この糖尿病かそうでないかを切り分ける空腹時血糖126 mg/dLという値ですが、十数年前は140 mg/dLでした。しかし、もう少し厳しくしようと診断基準を見直し、10%downさせて140mg/dL×90%=126 mg/dLとしたのです。あろうことか、割とどんぶり勘定的に決まったわけです。

そして、「正常高値」これは、文字通り「正常値であるけれども、高めなので注意が必要」ということです。これは、110 mg/dL未満なら、大丈夫かというと、決してそんなことはなく、実際に精密検査をしてみると、糖尿病という診断に至るケースも少なくないことや、放っておくと、多くの人が数年後には糖尿病になるというデータが得られているため、注意喚起を促すという意味で、設けられた新たな枠組みです。

よって、血糖値の結果は、次のように考えるのがよいでしょう。

『100 mg/dL以上ならダイエット開始!

126 mg/dL以上なら精密検査!』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

血糖値は、血圧と同じく年齢とともに徐々に上昇していきます(表2参照)。

表2 年代別にみた糖尿病平均値(mg/dL)

これは、20代を境に体を動かす機会がなくなる一方で、うまいものを食べ続ける、そんな現代人の生活習慣がそのまま表れています。

年をとるごとに、食べるもの・体を動かすことの意識を高め、生活しましょう。

『よくあるケース』
~「まだ大丈夫」と勝手に勘違いして重症化~

糖尿病でよくあるケースは、血糖値が年々上昇し、もう治療が必要だろうと思われるレベルに達しても、病院の初診で医師から「まず、食生活と運動習慣を変えて様子を見ましょう」と言われ、「よし、まだ大丈夫!」と勝手に勘違いすることです。そうして、糖尿病に至るまで放置される事態が起きます。

これは、重症でない限り、糖尿病の治療は『生活習慣の改善が前提となって、そのうえで内服薬やインスリンの注射という薬剤療法がある』という事情があります。まずは、その人がどの程度生活習慣を改善することができるか数カ月見極めてから、薬物療法開始となるということです。

しかし、医師に「まず様子を見ましょう」と言われ、「まだ大丈夫だ!」と勝手に勘違いする人を多く見ていると、血糖値が下がるほど生活習慣を改善できる人が、どのくらい存在するのだろうかといつも思います。

確実に生活習慣を改善すること、「大丈夫」と勘違いせず、通院し続けることが大切です。

<次回予告 ~肝機能~>
男性の方は、健康診断結果で気になる項目としては、肝機能を上げる方が多いのではないでしょうか?私も、自分の健康診断で、最も気になる検査は、肝機能です。さて、この肝機能検査の実際のところは、どうなの?ということをテーマに、紹介します。

■河下太志Profile
リクルートグループ 統括産業医
平成13年産業医科大学 医学部医学科 卒業。現在、産業医科大学産業医実務研修センター非常勤助教、株式会社産業医大ソリューションズ チーフコンサルタントとしても活躍中。著書に、「メンタルヘルス対策の実務と法律【職場管理者編】」(SMBCコンサルティング 実務シリーズ)、「メンタルヘルス対策の実務と法律知識」(日本実業出版社 共著)がある。


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