会社の制度をトコトン活用する 賢いマネープラン術 【深田晶恵】 [2011.09.28]

会社員としての特典を活かしたマネープランの立て方③―「いい給与天引き」と「悪い給与天引き」


会社の制度をトコトン活用する 賢いマネープラン術(10)

深田晶恵 ふかたあきえ
ファイナンシャルプランナー、(株)生活設計塾クルー取締役

給与明細を見てみると、支給額からさまざまな項目が控除されたうえで給与が支払われていることがわかります。今回のテーマは、「いい給与天引き」と「悪い給与天引き」です。

給与明細を見てみると、支給額からさまざまな項目が控除されたうえで給与が支払われていることがわかります。このうち、所得税、住民税、年金保険料や健康保険料などの社会保険料に関しては、控除額を自分でコントロールすることは原則としてできません。労働組合の組合費も引かれているケースもあるでしょう。これらは、「強制的な天引き」です。

一方、それ以外のもののほとんどは、みなさんが任意で給与天引きの手続きをとっていることになります。

こう言われてもう一度じっくり給与明細を見ると、「記憶にないけれど、自分で手続きしたんだっけ?」と思う項目がある方も多いのではないでしょうか。給与天引きは、一度始めるとその存在を忘れてしまいがちです。ここで注意が必要なのは、家計管理の視点からみると、給与天引きにも「いい給与天引き」と「悪い給与天引き」があるということです。「いい給与天引き」をしっかり活用し、「悪い給与天引き」を見直すことが大切です。

●“いい給与天引き”の財形貯蓄で、お金を貯めよう

「いい給与天引き」の代表は、財形貯蓄や社内預金です。最近は、社内預金を廃止する企業が多いので、ここでは財形貯蓄を例に説明します。

財形貯蓄は、給与天引きでお金を貯めることを国が後押しするために始まった制度。「財形」とは「財産形成」の略語です。利用者にとっては、金融機関に足を運んだり、口座振替で貯めるのと違って普通預金残高に気を遣ったりする必要がなく、知らず知らずのうちにお金を貯められるのが大きなメリット。

お金が貯まる仕組みを作るには、積立貯蓄をするのが効果的です。中でも財形は、給与天引きで自動的に貯められるので、「貯めた後に残った分で生活する」という習慣が身につきやすいのがポイントといえます。毎月の給与やボーナスからどれくらい積み立てるかも柔軟に変更できるので、貯蓄方法としては最もお勧めしたいものの一つです。

最近は、新入社員が研修を受ける際に、財形貯蓄に関してはあまり詳しい説明がされなかったり、転職して中途入社したために勤務先の制度をよく知らない人がいたりして、「財形貯蓄が利用できるかどうかわからない」という人が増えています。いま一度、自分の会社で財形が使えるかどうかを確認してみましょう。

●財形貯蓄の種類と選び方

財形貯蓄には、「一般財形」「財形住宅」「財形年金」の3種類があります。「財形住宅」は住宅の取得や増改築などの資金を貯めるため、「財形年金」は老後資金を貯めるためのものです[図表]。

よく「どれを選べばいいですか?」と聞かれるのですが、財形住宅と財形年金には利子が非課税になるという特典があるので、できればこの特典を有効活用したいところ。現在のような超低金利では残念ながら利子非課税のメリットはあまりないのも確かですが、長期的には金利が上昇することも十分に考えられます。20~30代の人はこれからのライフイベントのことを考えると、財形住宅を利用するのがお勧めです。財形年金を利用するかどうかは、40~50代から検討すればいいでしょう。

ちなみに、給与天引きを利用する仕組みとして自社株の積み立てができる会社もありますが、私はあまりお勧めしていません。

●リスクを認識したうえで行うべき自社株投資

1997年、国内四大証券会社(野村、大和、日興、山一)の一つだった山一證券が自主廃業しました。この時、山一證券に勤めながら給与天引きで自社株を積み立てていた人たちは、職場を失った上に持っていた株が紙くずになり、社宅に入っていた人は住まいも失うというトリプルパンチに見舞われました。

山一證券の例は最悪のケースと言えますが、会社が破綻しないまでも、業績が悪化すれば株価は下落します。給与やボーナスがカットされるといった痛手を被り、なおかつ保有資産である株の価値まで下がるというダブルパンチを受ける可能性が高いわけです。リスクを分散するという観点からは、自社株投資は避けたほうがよいといえます。

●民間の普通の保険に、給与天引きで保険料を支払っている場合は要注意

次に、注意が必要な「悪い給与天引き」を見てみましょう。

まずは第9回でもご紹介した「グループ保険」です。民間の保険会社の商品と比較して、同等の保障内容であれば保険料が割安になっているのが一般的。保障内容を確認し、必要なものであれば継続してOKです。もちろん、任意で加入しているものですから、保障が不要であれば止めても構いません。

気をつけなくてはならないのは、民間の普通の保険に、給与天引きで保険料を支払って加入しているケースです。数千万円の大型の死亡保障に入院保障などがセットされていることが多く、月々の保険料が1万5000円~2万円程度と高額になっている人も少なくありません。職場に訪ねてくる営業職員に加入を勧められ、「給与天引きにすると保険料が安くなりますよ」と言われて加入したという方が多いのですが、保険料が安くなるといってもせいぜい月に100~200円程度で、グループ保険のように保険料が格段に安いわけではありません。

グループ保険でしっかりと保障を確保しているのに、給与天引きされているために加入していること自体忘れて、民間の生命保険を契約している人も少なくありません。加入の重複を避けるためにも、あらためて給与明細を見て、現状を確認することをお勧めします。

生命保険料は、家計の中で真っ先に見直しの候補になる支出項目です。「チリも積もれば山となる」で、毎月の固定費は気付かないうちに大きな出費になってしまうもの。1万5000円を1年間払い続ければ18万円、10年間なら180万円にもなります。

ところが、給与天引きにしてしまうと保険料を支払っている感覚が薄くなり、家計の見直し対象から外れてしまうことが多いのです。このような「カットすべきなのに見逃されている給与天引き」は「悪い給与天引き」といえます。ムダな支出の原因となっている給与天引きがないか、この機会にしっかり確認しましょう。

深田晶恵(ふかたあきえ)Profile
ファイナンシャルプランナー、(株)生活設計塾クルー取締役
CFP認定者 1級FP技能士
1967年北海道生まれ。外資系電機メーカー、日本フィリップス(株)で8年間勤務後、1996年にファイナンシャルプランナーに転身。FP資格取得後、 実務経験を積んだ後、1998年にFPとして独り立ちする。その後、同じオフィスの仲間と特定の金融商品や保険商品の販売を行わない独立系FP会社「生活 設計塾クルー」を設立し、個人向けに住宅ローンや保障設計などマネープランのコンサルティングを行う。一般個人向けのマネーセミナーのほか、企業の従業員 や自治体職員向けのライフプランセミナー講師としても活躍。メディアを通じたマネー情報の発信にも注力しており、『住宅ローンはこうして借りなさい改訂3 版』(ダイヤモンド社)、『幸せになるお金のバイブル』(日本経済新聞出版社)など多数の著書があるほか、日本経済新聞夕刊、『日経ビジネス Associe』『日経WOMAN』などの連載も持つ。
ブログ「お金のおけいこ。」 http://www.akie-fukata.com/
Twitter  http://twitter.com/akiefukata

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