会社の制度をトコトン活用する 賢いマネープラン術 【深田晶恵】 [2011.08.01]

会社員としての特典を活かしたマネープランの立て方① 医療保険は「必ず入っておくべきもの」ではない!


会社の制度をトコトン活用する 賢いマネープラン術(8)

深田晶恵 ふかたあきえ
ファイナンシャルプランナー、(株)生活設計塾クルー取締役

保険や住宅ローンなどのマネープランは、会社員としての特典を活かすと上手に設計することができます。今回は、医療保険の設計のコツを見ていきましょう。

◆医療保険には必ず入っておくべき?

医療保険は、多くの人が「一つくらいは入っておくべきもの」と考えている人気の保険。かつて、保険は「保険会社の営業職員から勧められて加入するもの」でしたが、医療保険については自分から加入しようとする人が多いのが特徴といえます。

しかし、医療保険は「必ず入っておくべきもの」ではありません。本来、保険とは「コストを払って目的に合った保障を買う」ものであり、その必要性は人によって異なります。特に会社員の場合、健康保険でまかなえる部分もあるので、医療保険については必要性が低いケースが少なくありません。

保障の必要性を検討しないまま医療保険に加入し、安くない保険料を払い続けていると、気付かないうちにかなり大きな支出になってしまう可能性があるので注意が必要。例えば、医療保険に毎月5000円の保険料を払っていれば、年間では6万円。今40歳の人が80歳まで払うと、40年間で240万円の支出です。夫婦2人分なら480万円にもなります。本当にこれだけのお金を払う必要があるのか、加入の際は冷静に考えたいところです。

では、医療保険の必要性はどのように判断すれば良いのでしょうか? まずは、病気やケガをした場合の経済的リスクを正しく把握することが大切です。

◆会社員の場合、「病気やケガの際にかかる医療費」には上限がある

本連載第4回でも解説したように、みなさんが加入している健康保険には「高額療養費」という制度があり、医療費の自己負担には上限が設けられています。上限額は加入している健康保険によって異なり、自営業者など「国民健康保険」に加入している人は、1カ月当たりの医療費の上限は、所得区分が「一般」なら「8万100円+α」、「上位所得者」なら「15万円+α」(なお、この+αは所得区分『一般』のケースを想定したものです。上位所得者、低所得者のケースは第4回の記事を参照してください)。「協会けんぽ(旧政府管掌保険)」に加入している会社員とその家族も同様です。また、「過去1年以内に高額療養費が適用される月が3回以上」という条件を満たせば、4回目からは自己負担限度額が下がり、所得区分「一般」の場合で1カ月当たり4万4400円となります。

また、大企業や同業企業が設立する「健康保険組合」に加入している会社員とその家族の場合は、健保組合によって上乗せ給付が受けられることも少なくありません。そのため1カ月当たりの医療費が2万〜4万円程度で済む人もいます。健保組合に加入している方は、一度、自分の組合のウェブサイトなどで高額療養費の上乗せ給付を調べてみましょう。

つまり、会社員の場合、「病気やケガの際にかかる医療費」は、1カ月当たり「8万100円+α」が上限で、健保組合加入の人ならこの上限額がもっと少ないケースもある、ということです。

また、会社員の場合、病気やケガで休んだ場合は健康保険による「傷病手当金」という保障もあります。会社を休んだ日が連続して3日間あると、4日目以降、休んだ日に対して「標準報酬日額(残業代を含めた税引き前の1日当たりの報酬とほぼ同額)」の3分の2に相当する額が受け取れます。長期で会社を休んでも、無収入になるわけではありません。さらに、入院すれば、レジャー費や病院外での食費など「かからなくなるお金」があることにも目を向けましょう。

このように考えると、「貯蓄や収入で十分にまかなえそうだな」という方もいるはずです。

◆民間の医療保険に加入した場合に得られる保障

次に、民間の医療保険に加入した場合に得られる保障を見てみましょう。基本となる保障は「入院給付金」と「手術給付金」です。入院給付金とは、入院日数に応じて「1日当たり5000円」といったお金が受け取れるもの。手術給付金は、保険会社が決めた所定の手術を受けた時に一定額の給付金を受け取れるというものです。原則として外来治療は民間の医療保険では保障されませんから、医療保険に加入したとしても、通院などにかかる医療費として現金の備えは必須です。

入院給付金は1回の入院で給付金が支払われる日数に「60日まで」「120日まで」などの上限があり、保障期間全体を通した支払い日数も「700日まで」などと決められています。この「支払い日数」の考え方には、注意が必要。例えば「120日型」の場合、「60日入院して一度退院し、1カ月自宅療養した後、同じ病気で再度70日入院した」という場合、2回の入院は「1入院」とみなされ、受け取れる給付金は120日分のみとなります[図表1]

120日型で入院日額5000円の医療保険に加入した場合を考えると、1入院で受け取れる入院給付金は最大60万円。基本的に、民間の医療保険に入りっぱなしで「もと」がとれることはまずありません[図表2]。医療保険は、医療費に充てられるまとまったお金が貯まるまでの“つなぎ”と考えたほうがいいでしょう。

医療費の備えとなる貯蓄が心もとない人や、これから住宅取得や子どもの教育などのライフイベントが控えていて入院などで貯蓄計画を崩したくないという人は、医療保険に加入しておいてもいいと思います。その際は「加入するとどんな保障が得られるのか」を正しく把握したうえで「最低限、必要な保障を必要な時期だけ買う」と考えるとムダがありません。

深田晶恵(ふかたあきえ)Profile
ファイナンシャルプランナー、(株)生活設計塾クルー取締役
CFP認定者 1級FP技能士
1967年北海道生まれ。外資系電機メーカー、日本フィリップス(株)で8年間勤務後、1996年にファイナンシャルプランナーに転身。FP資格取得後、 実務経験を積んだ後、1998年にFPとして独り立ちする。その後、同じオフィスの仲間と特定の金融商品や保険商品の販売を行わない独立系FP会社「生活 設計塾クルー」を設立し、個人向けに住宅ローンや保障設計などマネープランのコンサルティングを行う。一般個人向けのマネーセミナーのほか、企業の従業員 や自治体職員向けのライフプランセミナー講師としても活躍。メディアを通じたマネー情報の発信にも注力しており、『住宅ローンはこうして借りなさい改訂3 版』(ダイヤモンド社)、『幸せになるお金のバイブル』(日本経済新聞出版社)など多数の著書があるほか、日本経済新聞夕刊、『日経ビジネス Associe』『日経WOMAN』などの連載も持つ。
ブログ「お金のおけいこ。」 http://www.akie-fukata.com/
Twitter  http://twitter.com/akiefukata

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