会社の制度をトコトン活用する 賢いマネープラン術 【深田晶恵】 [2011.03.28]

知らないとソン! 会社員はこんな制度で守られている(1)―あなたが持っている「健康保険証」の底力


会社の制度をトコトン活用する 賢いマネープラン術(4)
深田晶恵 ふかたあきえ
ファイナンシャルプランナー、(株)生活設計塾クルー取締役

前回の「給与明細の読み解き方」で、みなさんが給料の総支給額からだいたい13%弱の社会保険料を支払っていることを説明しました。これだけの保険料をずっと払い続けているのですから、その保障を十分に活用しないともったいないですよね。実際、公的保障の中身をよく知らないために、民間の保険に“入り過ぎ”になっている方は少なくありません。そこで、この連載では数回にわけて会社員のみなさんを守る公的保障についてご説明していきます。今回は、みなさんが持っている「健康保険証」でどんな保障が受けられるかを見ていきましょう。

■覚えてほしい健康保険の保障(1)―高額療養費制度

健康保険の保障として、みなさんがよく知っているのは「ケガや病気の際に医療費負担が3割で済む」ということでしょう。では、ほかにどんな保障があるのか、ご存じですか? 実はとても頼りになる保障なのに、あまり知られていないのが「高額療養費制度」。

これは、簡単にいうと「医療費の自己負担が重くなりすぎないように上限を設けますよ」という制度です。高額療養費制度のおかげで、たとえ医療費が100万円かかったとしても、1カ月当たりの自己負担額が10万円を超えることはまずありません(所得区分が「一般」の方の場合。下表を参照)。このことを知らないと「3割で済むとはいっても、治療費や薬代が高額になったら払いきれなくなるかもしれない」という不安を抱き、必要以上の民間企業の医療保険に加入することになりかねませんから、注意が必要です。

高額療養費制度

さらに、もう1つ押さえておきたいのが、加入している健康保険によっては、月々の医療費の自己負担上限額が上記よりももっと少ない場合があること。大手企業や同業企業が設立する健康保険組合、公務員の共済組合の場合、独自の給付によって、自己負担の上限が1カ月当たり2万~3万円というケースが少なくないのです。付加給付が充実していれば、それだけ民間の医療保険の必要性は小さくなります。みなさんも、一度ご自身が加入している健康保険の種類を確認しましょう。

健保組合に加入されている方は、ウェブサイトなどで保障内容を調べてみてください。「医療費が高額になったら」という項目か、「一部負担金払戻金」の欄を参照するといいでしょう。

このようにとても頼りになる高額療養費制度なのですが、私が制度について説明すると、「そんなはずはない。以前、入院して月に30万円近くも医療費を払った」などと首をかしげる方がいます。もしかすると、読者のみなさんの中にも同じように思った方がいらっしゃるかもしれませんね。

理由は、主に2つ考えられます。1つは、「自分で払い戻しの手続きをする必要があるのに、しなかったから」。もう1つは、「健保組合が自動的に払い戻し手続きをしてくれたことに気づかなかったから」です。

日本の社会保障制度は「原則申請主義」。いうなれば、自分で申請・手続きをしなければ給付は受けられないというわけです。大変残念なことですが、社会保障制度について知らず、必要な申請をしないままでいると、保障を受けられないことも少なくないのが現状です。
中小企業の方などが加入している「協会けんぽ(全国健康保険協会)」と、退職者の方などが加入する「国民健康保険」の場合、高額療養費制度に該当した人は、上限額を超えた分について自分で払い戻しの申請をする必要があります。いま会社にお勤めで「協会けんぽ」に加入している方は、「都道府県にある協会けんぽの支部か、またはねんきん事務所(旧社会保険事務所にあることが多い)で協会けんぽに関する事務を代行しているコーナーで手続きを行う」ということを覚えておきましょう。国民健康保険の場合は、市区町村の窓口で手続きができます。

一方、健保組合や共済組合の場合、原則として上限を超過した医療費は自動的に払い戻しされます。これは忙しいビジネスパーソンにとって大変便利なシステムで、健保組合加入の方のメリットの1つと言っていいでしょう。ただし、健康保険について何も知らなくても済んでしまうため、制度について無関心になってしまいがちなことに注意が必要です。高額療養費制度や健保組合の付加給付で定められた医療費を超えた分については、窓口で支払った数カ月後に、給料と一緒に精算されるのが一般的。給与明細をきちんと見ていないと、「お金が戻ってきていたのに気づかなかった」ということが起こり得るわけです。

■覚えてほしい健康保険の保障(2)―限度額適用認定証

もう一つ、健康保険について知っておきたいのが「限度額適用認定証(自分の所得区分が記号で表されている書類)」のことです。高額療養費制度は、原則として窓口で3割負担分を支払い、上限を超えた分を後で払い戻す仕組みになっています。手持ちのお金が少ないと、一時的な立て替え払いとはいえ、支払いが負担になることもあるでしょう。そこで役立つのが「限度額適用認定証」です。入院する場合、健康保険組合や協会けんぽなどにこの認定証を申請して取得し、病院の窓口に提出すると、窓口での支払いが自己負担限度額までで済みます。

限度額適用認定証で立て替え払いが不要になる制度は、2011年4月以降、外来治療でも同様の手続きが行えるようになります。当初は一部の薬局や医療機関での対応となりますが、2012年4月からは全医療機関で導入される見込みです。

深田晶恵(ふかたあきえ)Profile
ファイナンシャルプランナー、(株)生活設計塾クルー取締役
CFP認定者 1級FP技能士
1967年北海道生まれ。外資系電機メーカー、日本フィリップス(株)で8年間勤務後、1996年にファイナンシャルプランナーに転身。FP資格取得後、 実務経験を積んだ後、1998年にFPとして独り立ちする。その後、同じオフィスの仲間と特定の金融商品や保険商品の販売を行わない独立系FP会社「生活 設計塾クルー」を設立し、個人向けに住宅ローンや保障設計などマネープランのコンサルティングを行う。一般個人向けのマネーセミナーのほか、企業の従業員 や自治体職員向けのライフプランセミナー講師としても活躍。メディアを通じたマネー情報の発信にも注力しており、『住宅ローンはこうして借りなさい改訂3 版』(ダイヤモンド社)、『幸せになるお金のバイブル』(日本経済新聞出版社)など多数の著書があるほか、日本経済新聞夕刊、『日経ビジネス Associe』『日経WOMAN』などの連載も持つ。
ブログ「お金のおけいこ。」 http://www.akie-fukata.com/
Twitter  http://twitter.com/akiefukata

禁無断転載
▲ ページの先頭に戻る

シリーズ記事

キーワード

ログイン

  • ログイン

人事・労務に役立つ商品・サービス検索

  • カテゴリとジャンルから検索

検索

注目商品ランキング 新着商品