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使える!統計講座 【深瀬勝範】 [2011.06.30]

第18回 物価の動きを調べる ~消費者物価指数~


使える!統計講座(18)
深瀬勝範
ふかせかつのり

賃金が増えたとしても、それ以上に物価が上昇すると、実質的な生活水準は下がってしまいます。物価の上昇・下降の動きをとらえる指標が「消費者物価指数」です。ここでは、消費者物価指数を使った賃金分析について説明します。

1.消費者物価指数とは

「消費者物価指数(Consumer Price Index:CPI)」とは、物価の変動を時系列的に測定した指標で、総務省統計局が毎月作成しています。

この指標は、家計で一般的に消費される品目(2005年基準では584品目)を選び、それらの品目の価格の増減率を加重平均(各品目の増減率にその品目が消費支出全体に占める割合を乗じて算出した平均)することによって算出します。現在の指数は2005年を基準時としており、100より大きければ2005年よりも物価が上昇したことを、小さければ下降したことを示します。

私たちは、生活実感の中から「物価が上がった(下がった)」ということがありますが、消費者物価指数は、そのような物価の変動を客観的に示した指標であり、経済施策の検討や経済調査等で幅広く活用されています。具体的なデータは、総務省統計局のウェブサイト(http://www.stat.go.jp/data/cpi/index.htm)から入手できます。

2.名目賃金と実質賃金

ここでは、消費者物価指数を使った賃金分析について説明しましょう。

昨年よりも賃金が増加しても、それ以上に物価が上昇すると、賃金で購入できる物品が減るため、生活水準は下がってしまいます。このように考えると、生活水準の維持向上という観点から賃金をとらえるときには、額面上の金額よりも、その金額で購入できる物品(購買力)に着目したほうがよいことになります。

賃金の額面上の金額を「名目賃金」、購買力を示す指標を「実質賃金」といいます。実質賃金は、名目賃金を消費者物価指数で割ることによって算出します。物価が異なる状況下の賃金を比較する場合(例えば、昔と今の賃金を比較するときや国際間の賃金比較を行うとき)には、実質賃金を使います。

[図表1]は、1976年以降の大卒初任給(男性)と消費者物価指数の推移を示したグラフです。名目賃金で見ると、1976年には9万4300円だった初任給は、2010年には20万300円になりました。2010年の新入社員は34年前の2.1倍の額の初任給をもらっているわけですから、以前と比べるとかなり裕福な生活をしているはずです。ところが、実感からすると、新入社員の生活にそれほど大きな差はついていません。

この数値と実感とのギャップは、1976年と2010年との物価の違いから生じるものです。物価の違いに惑わされないようにするため、実質賃金を使って初任給を比較してみます。消費者物価指数(2005年を100とする)は、1976年が62.4、2010年が99.6です。名目賃金を消費者物価指数で割って100倍した実質賃金ベースの初任給を算出すると、1976年は151,122円、2010年は201,104円となりました[図表2]

名目賃金ベースで見たときよりも増加の割合が小さくなり、生活実感に近い数値になっています。

ここでは、1976年の初任給「94,300円」を消費者物価指数で割って「151,122円」という数値を算出しました。これは「1976年の94,300円は現在の151,122円に相当する」ということを示しています。このように消費者物価指数を使えば、賃金を調査時・場所における購買力を示す数字に置き換えることができます。

3.物価と昇給率(賃金引上げ率)との関係

このように賃金と物価の関係を見てくると、「昇給において生活水準の向上に寄与するものは、物価上昇(消費者物価指数の増加)分を上回る部分だけ」ということが分かるでしょう。

したがって、会社は、従業員の生活水準を維持向上しようとするのであれば、消費者物価指数の上昇分以上の昇給を行うはずです。

このことを検証するために、1980年以降の消費者物価指数の上昇率と昇給率(賃金引上げ率)の推移をグラフ化してみました。[図表3]これを見れば、消費者物価指数と昇給率の動きが連動していること、そして、昇給率は消費者物価指数上昇率を1~2%ポイント上回ったものとなっていることがわかります。

物価と賃金との関係性を見るために、1980~2010年における各年の消費者物価指数と賃金の昇給率を比べてみました。[図表4]では、横軸に消費者物価指数上昇率を、縦軸に昇給率をとった散布図です。散布図では、消費者物価指数上昇率と昇給率とが直線に沿って変化している様子がとらえられ、そこから両者の間に強い相関関係があることが分かります(相関関係については、「第10回 統計的手法を使う③ ~相関と回帰分析~」を参照)。

なお、この分析では、物価と賃金との間に相関関係があることは確認できますが、両者の因果関係(物価が上昇したから昇給率が高くなったのか、あるいは昇給率が高かったから個人消費が活発になり物価が上昇したのか)までは分かりません。

また、昇給率は、企業業績等も考慮して決定されるため、消費者物価指数との関係性に着目しただけでは、すべてを言い表すことはできません。しかし、昇給率と消費者物価指数との間には強い相関関係が認められ、どちらかが上昇すれば、他方も増加する傾向があるとはいえます。

2000年代に入り、昇給率は以前と比べると低くなっていますが、消費者物価指数も上昇していないことを考えれば、それは当然のことともいえます。このような状況では、昇給率を高めることよりも、物価上昇が抑えられている恩恵を受けられるように日常生活の工夫することのほうに知恵を絞ったほうが得策かもしれません。


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