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発達障害と就労支援の現実(滝田誠一郎) [2011.12.13]

第2回 世の中の変化が発達障害を顕在化させる-発達障害と就労支援の現実


発達障害と就労支援の現実

第2回 世の中の変化が発達障害を顕在化させる
滝田誠一郎 たきたせいいちろう
ノンフィクション作家/ジャーナリスト

■発達障害は増えている!?

「発達障害の人が増えている」という話をよく聞く。取材で訪れた厚生労働省でも、ハローワークでも、障害者職業センターでも、発達障害者支援センターでも「発達障害の人が増えている」という話を異口同音に聞かされた。

例えば、東京都発達障害者支援センターには、当事者や家族などから年間2000件を超える相談が寄せられ、4名の専属スタッフがフル稼働して対応しているものの、調査書を受理してから初回の相談までに1カ月から1カ月半ほども待ってもらっている状態が続いている。大学でも発達障害を抱える学生の増加が問題になっており、そのような学生をサポートするための専門部署を設ける動きが広がっている。東京大学の学生相談ネットワーク本部に設置されているコミュニケーション・サポートルーム、富山大学の学生支援センターに設置されているアクセシビリティ・コミュニケーション支援室などがよく知られている。

各機関・各窓口、そして各担当者レベルでは実数的にも実感的にもはっきりとした増加傾向を示している発達障害だが、発達障害者人口がどのくらいの数に達するのか、どのくらいの割合を占めるのかといった確たる数字は厚生労働省でさえきちんと把握できていない。
文部科学省が平成14年2月から3月にかけて『通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する全国実態調査』を実施し、発達障害とみなされる児童生徒が6.3%いたという結果を発表したことがある。しかし、これは医師や専門家が診断した調査ではなく、あくまで担任の先生が“発達障害の特徴がある”とみなした児童生徒の割合であり、その意味では正確さを欠くといわざるを得ない。もっとも、「それくらいいてもおかしくはない」という医師や専門家が多いのもまた事実であるが。

■発達障害の特性を持っていても気づかず、社会に適応できない人も

発達障害に関する疫学的調査研究で、現在最も信頼できるものといえば独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部の神尾陽子部長が平成20年度から22年度にかけて実施した『1歳からの広汎性発達障害(PDD)の出現とその発達的変化:地域ベースの横断的研究』だろう。
※広汎性発達障害とは、自閉症などの発達障害の総称。Pervasive Developmental Disorder、略してPDDという。

3年を費やして全国の通常学級在籍小・中学生に質問紙を用いた調査を行い、同時に地域に住む子供を対象に精神医学的面接と質問紙を用いた疫学研究を実施したものだ。この調査結果を踏まえ、顕著なPDDの特性を示す層(有病率)は人口の0.9~1.6%が該当する可能性があり、顕著ではないがPDDの特性を示す者まで含めると人口の10%超が該当する可能性があると神尾先生は結論づけている。

「医学的に発達障害と診断される人が2%弱ということは、残り8%の人たちは発達障害の特性は持っていても発達障害と診断されることもなければ、専門的な支援を受けることなく大人になるわけです。でもそれは問題を先送りしているだけで、結局は社会に出てから破綻するんです」(神尾先生)発達障害の特性があるためにコミュニケーションがうまく取れなくても、学校へ行っている間は気の合う友達とだけ遊んでいればいいし、家にこもってゲームに没頭していてもいい。成績さえよければ、発達障害の特性は家庭でも学校でもさほど大きな問題にはならない。しかし、社会に出るとそうはいかない。

「高学歴で頭はいいのに、でも仕事は何ひとつ一人前にできない。周りの人が手助けしようとすると、プライドが高いものだから逆に反抗的な態度を取ったり、怒り出したりする。上司や先輩が我慢して親切にしているのに、自分は偉くて周りが駄目なんだというような態度を取る。学歴が高くて成績もよくて、発達障害の特性のある人に顕著なパターンです。あげく“使えないヤツ”とレッテルを貼られてクビになったり、本人が会社に行けなくなったり。もちろん発達障害の特性があっても幸せな社会生活を送っている人はたくさんいますが」(神尾先生)

■昔に比べて発達障害の人が不適応を起こしやすい背景がある

山梨県立こころの発達総合支援センターの所長で、余暇活動などを通して発達障害を持つ人たちとその家族の仲間づくり、活動拠点づくりを支援しているNPOネスト・ジャパンの代表でもある発達精神科医の本田秀夫先生は「発達障害の特性を持っている人が増えているかどうかはわからないが、学校や会社で不適応を起こす人は確実に増えていると思う」と言う。

山梨県立こころの発達総合支援センター 本田秀夫所長

「昔のほうが発達障害の特性を持っている人が不適応にならずに済んだ確率が高かったような気がします。発達障害は遺伝因子があると思われていて、実際、子供さんが発達障害の場合には親御さんや兄弟、親戚にその特性を持った人がいることが往々にしてあるのですが、子供は発達障害が原因で不登校になったり、会社で不適応を起こしたりしているのに、同じ特性を持つ父親は普通に学校を出てサラリーマンとして働いていたりするわけです。そういう例を見ていると、昔に比べて今の学校や会社には発達障害の人が不適応を起こしやすい背景があるのかもしれないと思えてきます」(本田先生)
本田先生の指摘は示唆に富んでいる。会社を例に取るならば、終身雇用や年功序列の崩壊、成果主義の台頭、少数精鋭化と過密労働、さらにいえば製造業の海外移転と産業のサービス化などのもろもろの変化が、発達主義の特性を持つ人の働きにくさにつながっていることは容易に想像できるというものだ。

そのような環境の下で、発達障害の特性を持ちながらも何とか職場と折り合いをつけてきた人が、人間関係のもつれや仕事上のミスやトラブルをきっかけに不適合を起こす。そういう人が増えているのである。もしかしたら、それは人ごとではないかもしれないのである。

profile 滝田誠一郎 ノンフィクション作家/ジャーナリスト
1955年東京生まれ。青山学院大学卒。著書に『ビッグコミック創刊物語』『長靴を履いた開高健』『孫正義インターネット財閥経営』『電網創世記/インターネットにかけた男達の軌跡』他がある。またジャーナリストとして雇用問題、人事問題をテーマにした取材・執筆活動もしており、『65歳定年時代に伸びる会社』『人事制度イノベーション 脱・成果主義への修正回答』などの著書がある。
twitter : http://twitter.com/takitaro
Facebook : http://www.facebook.com/TakitaSeiichiro


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